新NISAシミュレーション|1800万円の運用結果と始め方

米国の金利動向に注目が集まる中、TMF ETFへの投資を検討している方も多いのではないでしょうか。
TMFは20年超の米国債に3倍のレバレッジをかけたETFで、利下げ局面では大きなリターンが期待できる一方、減価リスクや高ボラティリティといった特有のリスクも存在します。
この記事では、TMFの基本的な仕組みから、投資判断に必要なリスク情報、具体的な買い時・売り時の判断基準、ポートフォリオ内での適正比率まで、実践的な情報を網羅的に解説します。
TMFへの投資を検討している方、レバレッジETFのリスクを正確に理解したい方は、ぜひ最後までお読みください。
適切な知識を身につけることで、TMFを活用した資産形成の可能性が広がります。
目次
TMF ETFとは?
TMFは、Direxion社が運用する「Direxion Daily 20+ Year Treasury Bull 3X Shares」の略称で、米国の超長期国債に3倍のレバレッジをかけた上場投資信託です。正式には20年超の米国債指数の日次パフォーマンスの3倍を目指す設計になっています。
2009年に設定されたこのETFは、金利低下局面で大きなリターンを狙う投資家に人気があります。経費率は年率1.02%で、レバレッジETFとしては標準的な水準です。
TMFの基本スペックを見ていきましょう。ティッカーシンボルは「TMF」で、ニューヨーク証券取引所アーカに上場しています。運用会社はレバレッジETFに強みを持つDirexion社です。
このETFが連動を目指すのは、ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Indexという指数です。この指数は残存期間が20年を超える米国債で構成されており、超長期の金利動向を反映します。
純資産総額は市場環境により変動しますが、2024年時点で約20億ドル規模となっており、流動性も十分に確保されています。1日あたりの出来高も数百万株に達することが多く、売買しやすい環境が整っています。
TMFの運用手法は、先物契約やスワップ契約を活用したデリバティブ戦略です。現物の国債を直接保有するのではなく、金融派生商品を組み合わせて3倍のレバレッジ効果を実現しています。
3倍レバレッジとは、基準となる指数が1%上昇した日にTMFが約3%上昇し、逆に指数が1%下落した日にTMFが約3%下落することを意味します。ただし、これはあくまで日次ベースの目標値です。
重要なのは、このレバレッジが「日次」で調整される点です。毎日の取引終了時にポジションがリバランスされるため、複数日にわたる期間で見ると、単純に3倍にはならないケースが多くなります。
例えば、基準指数が2日連続で上昇した場合、1日目の利益に対しても2日目のレバレッジがかかるため、複利効果が働きます。一方、上昇と下落を繰り返すレンジ相場では、日次リバランスによる減価が発生しやすくなります。
この仕組みにより、トレンドが明確な相場ではリターンが増幅される可能性がありますが、方向感のない相場では資産が目減りするリスクがあることを理解しておく必要があります。
TMFが対象とする20年超米国債は、金利変動に対する感応度(デュレーション)が非常に高い特徴があります。一般的に、債券の残存期間が長いほど、金利変動による価格変動が大きくなります。
具体的には、20年超の国債のデュレーションは約18〜20年程度となり、金利が1%低下すると債券価格が約18〜20%上昇する計算になります。TMFはこれに3倍のレバレッジをかけるため、金利1%の低下で約54〜60%の上昇を目指す設計となっています。
この超長期国債を選んでいる理由は、金利変動の影響を最大限に活用するためです。FRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利変更は、長期金利にも波及し、特に超長期ゾーンでは価格変動が顕著になります。
TMFが注目される理由
2024年から2025年にかけて、米国の金融政策は利上げサイクルから利下げへの転換が期待されています。こうした局面では、債券価格の上昇が見込まれるため、レバレッジをかけたTMFへの注目が高まっています。
特にインフレ率の低下とともにFRBが利下げに転じる可能性が高まると、長期金利の低下が予想され、超長期国債に投資するTMFには大きな上昇余地が生まれる可能性があります。
債券投資の基本として、金利と債券価格は逆相関の関係にあります。金利が上昇すると既発債券の魅力が相対的に低下するため価格が下落し、金利が低下すると既発債券の魅力が高まるため価格が上昇します。
この関係は数学的に表現でき、債券価格は将来受け取るキャッシュフロー(利払いと元本返済)を現在価値に割り引いたものです。割引率として使われる市場金利が下がれば、現在価値が上昇する仕組みです。
20年超の超長期債券では、この効果が特に顕著になります。受け取るキャッシュフローが遠い将来に集中しているため、割引率の変化が価格に大きく影響するからです。
例えば、10年国債のデュレーションが約8〜9年であるのに対し、20年超国債は約18〜20年と倍以上の感応度を持ちます。
FRBが利下げを示唆すると、市場は将来の金利低下を織り込み始め、債券価格が先行して上昇します。この動きは政策金利が実際に引き下げられる前から始まることが多く、利下げ期待の高まりがTMFの上昇要因となる可能性があります。
2024年後半からFRBのパウエル議長が利下げの可能性に言及し始めたことで、長期金利は低下傾向を示しました。こうした局面では、TLT(レバレッジなしの20年超国債ETF)が5〜10%上昇する間に、TMFは15〜30%上昇するケースが見られます。
ただし、利下げ期待が後退すると、その反動も大きくなります。インフレ指標が予想より高かったり、FRB高官がタカ派的な発言をしたりすると、金利上昇懸念から債券が売られ、TMFは急落する可能性があります。
TMFの潜在力を示す代表的な事例が、2020年のコロナショック後の動きです。2020年3月にパンデミックによる経済危機が深刻化すると、FRBは緊急利下げを実施し、政策金利をほぼゼロまで引き下げました。
この期間、TMFは約2ヶ月で株価が2倍以上に上昇しました。3月中旬の安値から5月にかけて、約120%のリターンを記録しています。同期間にTLT(レバレッジなし)が約20%上昇したのと比較すると、レバレッジ効果が如実に表れた形です。
ただし、この急騰の前には急落局面もありました。2020年2月から3月にかけての市場混乱期には、流動性危機により一時的に債券も売られ、TMFは40%以上下落しています。その後の利下げ実施と量的緩和の開始により、急速に回復・上昇に転じました。
この事例は、TMFが金融政策の大転換点で大きなリターンをもたらす可能性がある一方、短期的な変動リスクも極めて高いことを示しています。
TMFで気をつけたい5つのリスク
TMFへの投資を検討する際、最も重要なのはリスクの正確な理解です。高いリターンの可能性がある一方で、レバレッジETF特有のリスクが存在し、場合によっては大きな損失につながる可能性があります。
ここでは、TMF投資で特に注意すべき5つのリスクを詳しく解説します。
減価リスクは、レバレッジETF最大の特徴的リスクです。日次リバランスの仕組みにより、上昇と下落を繰り返すレンジ相場では、基準指数がほぼ横ばいでもTMFの価値が徐々に減少していきます。
具体例:基準指数が1日目に+3%、2日目に-3%と動いた場合、2日間での変化率は-0.09%(100→103→99.91)とわずかなマイナスです。一方、TMFは1日目に+9%、2日目に-9%となり、2日間での変化率は-0.81%(100→109→99.19)と、より大きく目減りします。
この減価は、ボラティリティが高いほど、また保有期間が長いほど顕著になります。実際、2021年から2022年にかけての金利変動が激しい時期には、長期金利がほぼ同水準に戻っても、TMFの価格は以前より低い水準にとどまるケースが見られました。
減価リスクを軽減するには、明確なトレンドがある時期に限定して投資し、レンジ相場では保有を避けることが重要です。また、長期保有ではなく、短中期での売買を前提とした戦略が適しています。
TMFのボラティリティ(価格変動率)は、通常の株式ETFと比較して極めて高い水準にあります。過去のデータを見ると、年率換算で40〜60%のボラティリティを示すことが多く、S&P500のボラティリティ(年率15〜20%程度)の2〜3倍に達します。
日次ベースでは、1日で5〜10%の変動は珍しくなく、市場が大きく動く日には15%以上変動することもあります。2022年の金利急上昇局面では、単日で10%を超える下落が複数回発生しました。
この高ボラティリティは、短期間で大きな利益を得られる可能性がある反面、精神的なストレスも大きくなります。100万円投資した場合、1日で10万円の損益が発生する可能性があり、冷静な判断を保つのが難しくなるケースもあります。
高ボラティリティに対処するには、投資金額をポートフォリオの一部に限定し、日々の値動きに一喜一憂しない心構えが必要です。また、事前に損切りラインを設定しておくことで、感情的な判断を避けられます。
TMFにとって最大のリスクシナリオは、予想に反して金利が上昇する局面です。利下げを期待して投資したものの、インフレ再燃や経済の予想外の強さからFRBが利上げを継続または再開した場合、TMFは急激に下落します。
2022年の事例が参考になります。FRBが急速な利上げを実施した2022年、TMFは年初から年末にかけて約60%下落しました。同期間にTLT(レバレッジなし)が約30%の下落だったことと比較すると、レバレッジによる損失拡大が明確です。
特に注意が必要なのは、長期金利の上昇スピードが速い局面です。金利が短期間に1%上昇すると、TMFは理論上50%以上下落する可能性があります。実際には減価効果も加わるため、損失はさらに拡大する可能性があります。
このリスクを管理するには、FRBの金融政策スタンスを常に注視し、利上げ方向への転換シグナルが出た時点で速やかに撤退する判断が求められます。
TMFは米国市場に上場するドル建てETFのため、日本の投資家にとっては為替変動リスクも考慮する必要があります。TMFの価格が上昇しても、同時に円高ドル安が進めば、円換算でのリターンは減少または損失になる可能性があります。
例えば、TMFが30%上昇しても、同期間にドル円レートが150円から130円に円高が進んだ場合(約13%の円高)、円換算でのリターンは約13%程度に減少します。逆に円安が進めば、為替差益が加わってリターンが増幅されます。
一般的に、利下げ局面では通貨安になりやすい傾向があります。FRBが利下げを実施すると、ドルの魅力が相対的に低下し、ドル安が進む可能性があります。そのため、TMF投資と為替リスクは表裏一体の関係にあると言えます。
為替リスクへの対策としては、為替ヘッジ付きの債券ETFを検討する、または為替の方向性も含めて投資判断を行うことが考えられます。ただし、TMFには為替ヘッジ版は存在しないため、為替リスクを完全に排除することはできません。
TMFの経費率は年率1.02%で、一般的なインデックスETF(経費率0.03〜0.10%程度)と比較すると約10倍以上のコストがかかります。この経費率は、保有している間、日割りで資産から差し引かれ続けます。
短期保有であれば影響は限定的ですが、1年間保有すると資産の約1%が経費として消えます。仮に100万円投資した場合、1年で約1万円、3年で約3万円のコストが発生する計算です。
レバレッジETFの経費率が高い理由は、デリバティブ取引のコスト、日次リバランスの取引コスト、複雑な運用に伴う管理コストなどが含まれるためです。これらのコストは、保有するだけで発生するため、価格が横ばいでも資産は徐々に目減りします。
TMFの株価チャートと過去の実績
TMFの投資判断には、過去の価格推移とパフォーマンスの理解が不可欠です。チャート分析を通じて、金利環境とTMFの値動きの関係性、最大リターンと最大損失の幅を把握しましょう。
2019年から2024年までの5年間、TMFは激しい値動きを繰り返してきました。この期間は、コロナショック、ゼロ金利政策、インフレ高進、急速な利上げ、そして利下げ期待へと、金融政策が大きく変動した時期に当たります。
2019年末時点でTMFは約70ドル前後で推移していました。2020年3月のコロナショックでは一時40ドル台まで急落しましたが、その後FRBの緊急利下げと量的緩和により、2020年8月には150ドル超まで急騰し、約3.5倍になりました。
しかし、2021年後半からインフレ懸念が高まり始めると、TMFは下落トレンドに転じます。2022年にFRBが急速な利上げを開始すると、TMFは大幅下落し、2022年10月には約20ドルまで下落しました。ピークから約85%の下落という、レバレッジETFのリスクを示す動きでした。
2023年以降は、利上げペースの鈍化と利下げ期待の高まりにより、30〜50ドルのレンジで推移しています。この5年間のチャートは、金融政策の転換点でTMFが爆発的に動く一方、トレンドに逆らうと壊滅的な損失を被る可能性を示しています。
TMFの価格は、米国10年債利回りや20年債利回りと強い逆相関を示します。金利が低下すればTMFは上昇し、金利が上昇すればTMFは下落する関係です。この相関係数は-0.9以上と非常に高い水準にあります。
具体的な事例を見ると、2020年3月に10年債利回りが1.9%から0.5%まで急低下した際、TMFは約3.5倍に上昇しました。逆に2022年初から2022年10月にかけて10年債利回りが1.5%から4.3%まで上昇した際、TMFは約70%下落しています。
この強い相関関係を利用して、FRBの金融政策見通しや長期金利の動向からTMFの方向性をある程度予測することが可能です。FOMC(連邦公開市場委員会)の声明やFRB高官の発言は、TMF投資の重要な判断材料となります。
TMF投資のリスクを理解する上で、最大ドローダウン(ピークからの最大下落率)は重要な指標です。過去の最高値は2020年8月の約150ドルで、そこから2022年10月の約20ドルまで下落したため、最大ドローダウンは約87%に達しました。
この数字が意味するのは、最悪のタイミングで投資した場合、資産が約8分の1になる可能性があるということです。100万円投資していれば、約13万円まで減少する計算になります。これは理論上の話ではなく、実際に起きた事象です。
他の期間でも大きなドローダウンは発生しています。2013年の「テーパータントラム」(FRBの量的緩和縮小示唆による市場混乱)では約50%の下落、2018年の利上げ局面でも約40%の下落が記録されています。
このデータから分かるのは、TMFは「元本の大半を失うリスクがある商品」だということです。レバレッジなしのTLTでも最大30〜40%程度の下落はありますが、TMFはその2倍以上の損失リスクを抱えています。損切りルールの設定と厳守が、TMF投資では生命線となります。
TMFとTLTを比較
TMFへの投資を検討する際、必ず比較対象となるのがTLT(iShares 20+ Year Treasury Bond ETF)です。TLTは同じく20年超米国債に投資しますが、レバレッジをかけていない点が大きな違いです。
両者の特徴を理解し、ご自身の投資目的やリスク許容度に合った選択をすることが重要です。
| 項目 | TMF | TLT |
| 正式名称 | Direxion Daily 20+ Year Treasury Bull 3X Shares | iShares 20+ Year Treasury Bond ETF |
| 運用会社 | Direxion | BlackRock |
| レバレッジ | 3倍(日次) | なし |
| 経費率 | 1.02% | 0.15% |
| 純資産総額 | 約20億ドル | 約400億ドル |
| 平均出来高 | 約300万株/日 | 約1,500万株/日 |
| 設定日 | 2009年4月 | 2002年7月 |
| 分配金利回り | 約2〜4% | 約3〜4% |
基本スペックを見ると、TLTの方が純資産総額が大きく、流動性も高い安定した商品であることが分かります。一方、TMFは経費率が約7倍高く、レバレッジをかけている分、コストとリスクが高い設計になっています。
過去のパフォーマンスデータから、両者のリスク・リターン特性を比較してみましょう。2020年のコロナショック後の利下げ局面(2020年3月〜8月)では、TLTが約20%上昇したのに対し、TMFは約120%上昇しました。レバレッジ効果により、リターンが約6倍に拡大しています。
一方、2022年の利上げ局面(2022年1月〜10月)では、TLTが約30%下落したのに対し、TMFは約70%下落しました。こちらも損失が約2倍以上に拡大しています。
ボラティリティ(価格変動率)を比較すると、TLTの年率ボラティリティが約15〜20%であるのに対し、TMFは約40〜60%と、約3倍の変動率です。これは理論上の3倍レバレッジとほぼ一致します。
最大ドローダウンでは、TLTが過去最大で約40%程度であるのに対し、TMFは約87%と、壊滅的な損失リスクがあります。この差は、長期保有した場合の安全性において決定的な違いとなります。
投資経験の観点からは、TMFは投資中級者以上で、レバレッジ商品の特性を理解している人に限定すべきです。投資初心者がいきなりTMFに投資するのはリスクが高すぎます。まずTLTで債券ETFの値動きを経験し、金利と債券価格の関係を実感してから、TMFを検討するのが賢明です。
TMFの買い時と売り時
TMF投資で最も重要なのは、タイミングの見極めです。レバレッジETFの特性上、買い時と売り時を誤ると大きな損失につながります。ここでは、具体的な判断基準を解説します。
第一のシグナル:FRBが利下げを示唆する発言や声明を出した時です。FOMC会合後の声明で「インフレ率が目標に近づいている」「労働市場の過熱が和らいでいる」といった表現が使われ始めたら、利下げ転換の可能性が高まっています。
特に、FRB議長の記者会見で利下げ時期について具体的な言及があった場合は、強い買いシグナルとなる可能性があります。
第二のシグナルは、インフレ率が明確に低下トレンドに入った時です。米国のCPI(消費者物価指数)やPCE(個人消費支出)価格指数が、数ヶ月連続で前月比・前年比ともに低下し、FRBの目標である2%に近づいている局面は、利下げ環境が整いつつあることを示します。
第三のシグナルは、10年債利回りが明確に低下トレンドに入り、テクニカル的にも下値支持線を上抜けた時です。例えば、10年債利回りが数ヶ月間の高値圏から反落し、移動平均線を下抜けるような動きは、債券市場が利下げを織り込み始めた証拠です。
これら3つのシグナルが揃った時、または2つ以上が同時に観察された時が、TMFへの投資を検討する最適なタイミングと言えます。
売り時の判断は、買い時以上に重要です。レバレッジETFでは、売り遅れが致命的な損失につながるためです。
第一の売りシグナルは、利下げが実際に開始され、数回実施された後です。市場は将来の政策を先読みして動くため、利下げが始まった時点ですでに債券価格の上昇は織り込まれていることが多くなります。
歴史的に見ると、利下げサイクルの初期段階で債券価格はピークをつけ、その後は利下げが続いても横ばいまたは下落に転じるケースが多いです。利下げ開始から2〜3回目のFOMC会合後あたりが、利益確定の目安となります。
第二の売りシグナルは、FRBが利下げペースの鈍化や一時停止を示唆した時です。「追加利下げの必要性を慎重に判断する」「経済データを注視する」といった表現が声明に加わったら、利下げサイクルの終盤が近づいているサインです。
第三の売りシグナルは、インフレ率が再び上昇に転じたり、経済指標が予想外に強かったりして、利上げ再開の可能性が浮上した時です。この場合は、速やかに撤退する必要があります。
TMF投資では、事前に明確な損切りルールを設定し、感情に左右されず機械的に実行することが不可欠です。推奨される損切りラインは、購入価格から15〜20%下落した時点です。
具体的な設定方法として、購入時に逆指値注文(ストップロス注文)を入れておくことをおすすめします。例えば、50ドルでTMFを購入したら、42.5ドル(15%下落)に逆指値売り注文を設定します。これにより、予想に反して金利が上昇した場合でも、自動的に損切りが実行されます。
また、時間による損切りルールも有効です。購入から1〜2ヶ月経過しても利益が出ず、むしろ含み損が拡大している場合は、相場環境の読みが外れた可能性が高いため、損失額に関わらず撤退を検討すべきです。
ポートフォリオの何%をTMFに配分すべきか
TMFのような高リスク商品は、ポートフォリオ全体の中でどの程度の比率で保有すべきかが重要な判断ポイントです。全資産を投入するのは極めて危険ですが、適切な比率であれば、ポートフォリオ全体のリターンを高める可能性があります。
重要なのは、ご自身のリスク許容度を正確に把握することです。「100万円投資して50万円失っても平静でいられるか」を自問し、答えがNoなら配分を減らすべきです。
HFEA(Hedgefundie’s Excellent Adventure)戦略は、レバレッジ株式ETFとレバレッジ債券ETF(TMF)を組み合わせた積極的なポートフォリオ戦略です。典型的な配分は、株式レバレッジETF(UPRO等)を55%、TMFを45%とする構成です。
この戦略の理論的根拠は、株式と債券の逆相関性を活用することです。株式市場が下落する局面では、安全資産である債券が上昇することが多く、TMFがポートフォリオの下落を緩和します。逆に株式市場が上昇する局面では、UPROが大きく上昇し、全体のリターンを押し上げます。
バックテストによると、この戦略は過去20年間で年率20%超のリターンを達成した期間もありますが、同時に最大ドローダウンは50%を超える局面もあります。つまり、高いリターンの代償として、非常に大きなリスクを取る戦略です。
HFEA戦略を実践する場合の注意点は、定期的なリバランスが必須であることです。株式と債券の比率が目標から大きくずれたら、月次または四半期ごとにリバランスして、55:45の比率に戻します。
TMFを含むポートフォリオでは、定期的なリバランスが重要です。TMFは値動きが激しいため、放置すると当初の配分比率から大きく乖離してしまいます。リバランスの頻度は、四半期ごと(3ヶ月に1回)が基本的な目安となります。
リバランスの具体的な方法は、まず現在のポートフォリオ全体の資産額を確認し、各資産の現在比率を計算します。次に、目標比率と現在比率を比較し、5%以上乖離している資産があればリバランスを実行します。
リバランスのメリットは、機械的に「高く売って安く買う」を実行できることです。TMFが大きく上昇した時に利益確定し、下落した時に買い増すことで、感情に左右されない規律ある投資が可能になります。
TMFの分配金と税金の扱い
TMFへの投資を検討する際、分配金収入と税務処理についても理解しておく必要があります。レバレッジETFならではの特徴があり、通常の株式投資とは異なる点もあります。
TMFは、保有する米国債の利息収入を原資として、定期的に分配金を支払います。分配金の支払い頻度は月次で、毎月末近くに支払われることが一般的です。
過去の分配金利回りを見ると、年率で2〜4%程度の範囲で推移しています。金利水準が高い時期は分配金も増加し、金利が低い時期は分配金も減少する傾向があります。
注意すべき点は、TMFの分配金利回りは、レバレッジなしのTLTと比較して必ずしも3倍にはならないことです。レバレッジは価格変動に対してかかるものであり、利息収入に対しては直接的にレバレッジがかかりません。
また、TMFは価格変動が激しいため、分配金利回りだけで投資判断をするのは適切ではありません。年率3%の分配金を受け取っても、価格が30%下落すれば、トータルリターンは大きなマイナスになります。
日本の投資家がTMFから得た利益には、日本の税制が適用されます。TMFは外国株式扱いとなるため、売却益(譲渡益)と分配金(配当金)それぞれに課税されます。税率は、譲渡益・配当金ともに20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。
証券会社で特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、売却益と分配金の税金は自動的に源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。これは最も手軽な方法で、投資初心者におすすめです。
一方、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で取引している場合は、確定申告が必要になります。年間の譲渡益と配当金を合算し、確定申告書に記載します。
また、NISA口座でTMFを購入した場合、売却益と分配金が非課税になります。ただし、TMFのような高リスク商品をNISA口座で保有するかは慎重な判断が必要です。
TMFの分配金には、米国で源泉徴収される税金(通常10%)と、日本で課される税金(20.315%)の二重課税が発生します。この二重課税を調整するのが外国税額控除の制度です。
外国税額控除を適用するには、確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)を利用していても、外国税額控除を受けるためには確定申告を行う必要があります。
控除できる金額には上限があり、その年の所得税額や住民税額によって変わります。一般的には、米国で源泉徴収された税額の全額または一部が、日本の所得税・住民税から控除されます。
TMFが買える証券会社3社
TMFは米国市場に上場するETFのため、米国株取引に対応した証券会社で購入する必要があります。ここでは、米国株取引に強みを持つ3社を紹介します。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座数 | 約15,000,000口座 ※2025年11月25日時点(SBIネオモバイル証券など含む) |
| 取引手数料 | 【スタンダードプラン(1注文ごと)】 取引金額に関係なく0円【アクティブプラン(1日定額制)】 1日100万円以下の取引:0円※現物取引・信用取引・単元未満株(S株)もすべて対象です。 |
| NISA対応 | 〇 |
| つみたて投資枠取扱銘柄数 | 〇(259銘柄)※2025年3月3日時点 |
| 成長投資枠対象商品 | 国内株 / 外国株 / 投資信託(約1,329銘柄 ※2025年3月3日時点) |
| 投資信託 | 約2,550本 ※2025年3月3日時点 |
| 外国株 | 8カ国/米国株式(5,000銘柄) |
| 取引ツール(PC) | HYPER SBI 2 / HYPER SBI / SBI CFDトレーダー |
| スマホアプリ | SBI証券 株アプリ / 米国株アプリ / かんたん積立 / HYPER FX / HYPER 先物 / HYPER CFD |
| 提携銀行口座 | SBI新生銀行 / 住信SBIネット銀行 |
| ポイント投資・付与 | Pontaポイント / dポイント / Vポイント(クレカ積立) |
| 口座開設スピード | 最短 翌営業日 |
SBI証券は、米国株の取扱銘柄数が約5,000銘柄と業界トップクラスで、TMFをはじめとする多様なETFに投資できます。口座数は約1,500万口座を超え、国内最大級のネット証券として信頼性も高い証券会社です。
米国株取引の手数料は、2023年から現物取引・信用取引ともに原則無料となり、コスト面での優位性が高まりました。為替手数料も片道4銭と比較的低コストで、頻繁に売買する投資家にとってメリットがあります。
SBI証券の特徴
複数のポイントプログラムに対応
取引ツールが充実(HYPER SBI 2、SBI証券 米国株アプリ)
NISA口座での米国株取引に対応

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座数 | 約12,000,000口座 ※2025年1月時点 |
| 取引手数料 | 【ゼロコース】 国内株式(現物・信用):0円 かぶミニ®(単元未満株):0円 投資信託:0円 ※ゼロコース選択時。 ※一部、スプレッドや信託財産留保額が発生する場合があります。 |
| NISA対応 | 〇(新NISA対応) |
| つみたて投資枠取扱銘柄数 | 263銘柄 ※2025年4月24日時点 |
| 成長投資枠対象商品 | 国内株式 / 外国株式 / 投資信託(約1,345銘柄) |
| 投資信託 | 約2,550本 ※2025年4月24日時点 |
| 外国株 | 6カ国/米国株式(約4,500銘柄) |
| 取引ツール(PC) | マーケットスピード / マーケットスピード II / 楽天MT4 |
| スマホアプリ | iSPEED / iSPEED for iPad / iSPEED FX / iSPEED 先物 |
| 提携銀行口座 | 楽天銀行(マネーブリッジ) |
| ポイント投資・付与 | 楽天ポイント(投資信託 / 国内株式 / 米国株式<円貨決済>) |
| 口座開設スピード | 最短 翌営業日 |
楽天証券は、楽天経済圏を活用した投資が魅力のネット証券です。口座数は約1,200万口座で、SBI証券に次ぐ規模を誇ります。米国株の取扱銘柄数は約4,500銘柄で、TMFを含む主要なETFはほぼカバーしています。
米国株取引の手数料は、現物取引が原則無料、信用取引は0円〜1,385円(税込)となっています。為替手数料は片道6銭とSBI証券よりやや高めですが、楽天銀行との連携で優遇を受けられる場合があります。
楽天証券の特徴
楽天ポイントを使った投資が可能
高機能取引ツール(MARKET SPEED Ⅱ、iSPEED)
投資情報・レポートが充実

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座数 | 約2,700,000口座 ※2025年2月時点 |
| 取引手数料 | 【取引毎手数料コース】
|
| NISA対応 | 〇(日本株・米国株・中国株・投資信託の売買手数料が無料) |
| つみたて投資枠取扱銘柄数 | 〇(銘柄数は公式サイトで確認) |
| 成長投資枠対象商品 | 国内株 / 米国株 / 中国株 / 投資信託(約1,750本以上) |
| 投資信託 | 約1,800本(購入時手数料すべて無料) |
| 外国株 | 2カ国/米国株:約5,000銘柄以上(2025年1月27日時点) |
| 取引ツール(PC) | マネックストレーダー / 銘柄スカウター |
| スマホアプリ | マネックス証券アプリ / 米国株アプリ / 投信アプリ |
| 提携銀行口座 | マネックス証券専用銀行口座(詳細は公式サイトで確認) |
| ポイント投資・付与 | マネックスポイント / dポイント(投資信託の積立に利用可能) |
| 口座開設スピード | オンライン申込で最短翌営業日 |
マネックス証券は、米国株取引に特に強みを持つネット証券です。口座数は約270万口座とSBI証券や楽天証券より少ないものの、米国株の取扱銘柄数は約5,000銘柄とトップクラスで、TMFをはじめとする多様な銘柄に投資できます。
米国株取引の手数料は、現物取引が55円〜1,070円(税込)、信用取引が99円〜385円(税込)となっています。為替手数料は片道0銭(買付時無料)という業界最安水準で、為替コストを抑えたい投資家に適しています。
マネックス証券の特徴
米国株に関する情報提供が充実
高機能取引ツール(マネックストレーダー)
銘柄スカウター米国株で分析可能
3社とも金融庁登録の第一種金融商品取引業者であり、投資者保護基金にも加入しているため、安心して取引できます。詳しい手数料やサービス内容は、各証券会社の公式サイトでご確認ください。
TMF ETFは、20年超米国債に3倍のレバレッジをかけた金融商品で、利下げ局面では大きなリターンが期待できる一方、減価リスクや高ボラティリティといった特有のリスクも存在します。投資判断においては、これらのリスクを正確に理解することが不可欠です。
TMFが最も力を発揮するのは、FRBが利下げに転じる明確なトレンドがある局面です。コロナショック後の2020年のように、金融政策の大転換点では短期間で100%以上のリターンを記録することもあります。しかし、金利上昇局面では壊滅的な損失を被る可能性もあり、2022年には年間で約70%下落しました。
投資戦略としては、ポートフォリオの5〜20%程度に配分を限定し、明確な買いシグナル(FRBの利下げ示唆、インフレ率の低下、長期金利の下落トレンド)が揃った時に投資することが重要です。また、購入価格から15〜20%下落した時点での損切りルールを事前に設定し、感情に左右されず機械的に実行する規律が求められます。
TLTとの比較では、短期的な高リターンを狙うならTMF、長期的な安定運用ならTLTが適しています。投資初心者はまずTLTで債券ETFの特性を理解してから、TMFに挑戦するのが賢明です。
税務面では、特定口座(源泉徴収あり)を利用すれば確定申告は原則不要ですが、外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。また、分配金収入は副次的なものと考え、主に価格上昇益を狙う投資スタンスが適しています。
TMFを購入できる証券会社としては、SBI証券、楽天証券、マネックス証券がおすすめです。それぞれ手数料体系やサービス内容に特徴があるため、ご自身の投資スタイルに合った証券会社を選んでください。
最後に、TMFは上級者向けの高リスク商品であることを再度強調します。投資には元本割れのリスクがあり、レバレッジETFでは資産の大半を失う可能性もあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。
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