積立投資枠とは?成長投資枠との違いと活用法を解説

積立投資枠とは?成長投資枠との違いと活用法を解説

新NISAが始まって、積立投資枠という言葉を耳にするけれど、具体的にどんな制度なのか分からない方も多いのではないでしょうか。

積立投資枠は、2024年から始まった新NISA制度の2つの投資枠のうちの1つで、長期的な資産形成を目的とした積立投資専用の非課税枠です。

年間120万円まで非課税で投資でき、非課税期間は無期限、生涯投資枠は1,800万円と、旧つみたてNISAから大幅に拡充されました。

この記事では、積立投資枠の基本的な仕組みから、成長投資枠との違い、メリット・デメリット、対象商品の選び方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

積立投資枠を正しく理解して、あなたに合った資産形成を始めましょう。

この記事の要約
  • 積立投資枠は年間120万円まで非課税で積立投資ができ、非課税期間は無期限
  • 成長投資枠との併用が可能で、2つの枠を使い分けることで効率的な資産形成ができる
  • 金融庁が厳選した低コストの投資信託が対象で、初心者でも安心して始められる
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

積立投資枠とは|新NISAの基本制度

積立投資枠は、2024年1月から始まった新NISA制度における2つの投資枠のうちの1つです。長期・積立・分散投資による安定的な資産形成を目的として設計されており、旧つみたてNISAの役割を引き継いでいます。

この制度では、金融庁が定めた基準を満たす投資信託のみを対象とし、毎月一定額をコツコツと積み立てることで、リスクを抑えながら資産を増やしていくことが期待できます。投資初心者の方でも始めやすい仕組みが整っているのが特徴です。

年間120万円まで非課税で積立投資

積立投資枠の年間投資枠は120万円で、旧つみたてNISAの40万円から3倍に拡大されました。毎月10万円まで積立投資が可能となり、より多くの資金を非課税で運用できるようになっています。

例えば、毎月5万円を積み立てる場合、年間60万円の投資となり、年間投資枠の半分を活用することになります。毎月の積立額は証券会社によって100円や1,000円といった少額から設定できるため、無理のない範囲で始められるのが魅力です。

年間投資枠は毎年リセットされるため、使い切れなかった分を翌年に繰り越すことはできません。ただし、非課税期間が無期限化されたことで、急いで枠を使い切る必要はなく、自分のペースで長期的に投資を続けられます。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

非課税期間は無期限|生涯投資枠は1,800万円

2024年からのNISAでは非課税保有期間が無期限となりました。旧つみたてNISAでは20年間という制限がありましたが、新制度では期間を気にすることなく、いつまでも非課税で保有し続けることができます。

生涯を通じての非課税保有限度額が新たに設けられ、1,800万円が上限となりました。この1,800万円は積立投資枠と成長投資枠を合わせた総額で、積立投資枠のみを利用する場合は全額1,800万円まで投資できます。

NISA口座で保有している商品を売却した場合、売却した商品の取得価額分の非課税枠が翌年以降に復活します。例えば、100万円で購入した投資信託を売却すると、翌年以降に100万円分の非課税枠を再利用できるようになります。

この仕組みにより、ライフイベントに合わせて柔軟に資産を活用できるのです。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

旧つみたてNISAから何が変わった?

旧つみたてNISAと新NISAの積立投資枠では、制度内容が大きく変わりました。最も大きな変更点は、年間投資枠が40万円から120万円へと3倍に拡大されたことです。これにより、より多くの資金を非課税で運用できるようになりました。

非課税保有期間も20年から無期限へと変更され、長期的な視点で資産形成に取り組めるようになっています。さらに、制度自体が恒久化されたことで、いつでも始められ、いつまでも続けられる制度となりました。

もう1つの大きな変更点は、成長投資枠との併用が可能になったことです。旧制度では、つみたてNISAと一般NISAのどちらか一方しか選べませんでしたが、新制度では両方の枠を同時に利用できます。積立投資枠で毎月コツコツ積み立てながら、成長投資枠で個別株や一括投資を行うといった柔軟な運用が可能になりました。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

積立投資枠と成長投資枠の違いを比較|どっちを選ぶ?

新NISAには積立投資枠と成長投資枠の2つの投資枠があり、それぞれ異なる特徴を持っています。どちらの枠を使うべきか迷う方も多いと思いますが、実は両方を併用することができます。

ここでは、2つの投資枠の主な違いを詳しく見ていきましょう。投資方法、対象商品、年間投資枠など、それぞれの特徴を理解することで、自分に合った使い方が見えてきます。

投資方法の違い|積立のみ vs 一括・積立両方

つみたて投資枠は、毎月決まった金額を自動的に投資する積立方式に限定されています。一度積立設定をすれば、あとは自動的に購入されるため、投資タイミングを見極める必要がありません。

一方、成長投資枠では積立投資と一括投資の両方が可能です。まとまった資金を一度に投資することもできれば、積立投資枠と同じように毎月コツコツ積み立てることもできます。投資のタイミングを自分で決めたい方や、ボーナスなどのまとまった資金を投資したい方には成長投資枠が向いています。

積立投資では時間を分けて購入することで、基準価格が高い時は口数を少なく、基準価格が安い時には口数を多く購入することができるため、結果として平均購入単価を抑える効果が期待できます。この効果は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、価格変動リスクを軽減する効果があります。

池田泉州銀行:新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の違い

対象商品の違い|厳選された投資信託 vs 幅広い選択肢

つみたて投資枠は長期の積立分散投資を目的としているため、対象商品もそれに適したと金融庁が認める一定の投資信託が対象です。一方、成長投資枠ではそれ以外の投資信託に加えて株式にも投資ができるため、つみたて投資枠よりも対象商品が圧倒的に多くなっています

積立投資枠の対象商品は、購入時手数料が無料で、信託報酬が低く設定された低コストの投資信託に限定されています。2024年1月時点で約280本の投資信託が対象となっており、長期・積立・分散投資に適した商品ばかりです。

成長投資枠では、積立投資枠の対象商品に加えて、国内株式、外国株式、ETF、REIT、幅広い投資信託など、より多様な商品から選択できます。ただし、整理・監理銘柄や信託期間20年未満の投資信託、毎月分配型の投資信託など、長期保有に適さない商品は除外されています。

アセットマネジメントOne:新NISAの成長投資枠とは

年間投資枠の違い|120万円 vs 240万円

つみたて投資枠の年間投資枠が120万円なのに対し、成長投資枠は240万円です。併用すると年間で360万円を新NISAで投資することが可能です。年間投資枠が大きい成長投資枠の方が、より多くの資金を投資できます。

非課税保有限度額については注意が必要です。積立投資枠は1,800万円まで利用できますが、成長投資枠は1,200万円までとなっています。つまり、成長投資枠のみを利用する場合は最大1,200万円まで、積立投資枠も併用すれば最大1,800万円まで非課税で投資できます。

例えば、毎月10万円を積立投資枠で積み立てると年間120万円、15年で1,800万円の非課税枠を使い切ることができます。一方、年間360万円をフルに活用すれば、最短5年で1,800万円の非課税枠を使い切ることも可能です。ただし、無理に枠を使い切る必要はなく、自分のペースで投資を続けることが大切です。

アセットマネジメントOne:新NISAの成長投資枠とは

併用もできる|2つの枠を使い分ける方法

新NISAの大きな特徴は、積立投資枠と成長投資枠を併用できることです。旧制度では、つみたてNISAと一般NISAのどちらか一方しか選べませんでしたが、新制度では両方を同時に利用できるようになりました。

例えば、積立投資枠で毎月5万円をインデックスファンドに積み立てながら、成長投資枠で気になる個別株を購入するといった使い方ができます。また、積立投資枠で基本的な資産形成を行いつつ、ボーナスなどのまとまった資金が入った時に成長投資枠で一括投資を行うという方法もあります。

2つの枠を併用することで、それぞれのメリットを活かした柔軟な資産運用が可能になります。積立投資枠で安定的な資産形成を行いながら、成長投資枠でより積極的な投資に挑戦するといった使い分けもできるのです。自分の投資目的やリスク許容度に合わせて、最適な組み合わせを見つけましょう。

積立投資枠の4つのメリット|長期投資に最適な理由

積立投資枠には、長期的な資産形成に適した様々なメリットがあります。特に投資初心者の方にとって、リスクを抑えながら着実に資産を増やしていける仕組みが整っているのが魅力です。

ここでは、積立投資枠の主な4つのメリットを詳しく解説します。これらのメリットを理解することで、積立投資枠がなぜ長期投資に最適なのかが分かるでしょう。

メリット①|ドル・コスト平均法で価格変動リスクを分散

積立投資では時間を分けて購入することで、基準価格が高い時は口数を少なく、基準価格が安い時には口数を多く購入することができるため、結果として平均購入単価を抑える効果が期待できます。この効果は一般的に「ドルコスト平均法」と言われ、一度にまとめて購入するよりもリスクを低減できます

例えば、毎月3万円ずつ投資信託を購入する場合、基準価額が1万円の時は3口、1万5千円の時は2口購入することになります。価格が高い時には少なく、安い時には多く購入できるため、平均購入価格が平準化されるのです。

一括投資では、購入タイミングが悪いと高値掴みをしてしまうリスクがありますが、積立投資ならそのリスクを軽減できます。市場の動きを予測する必要がなく、機械的に積み立てを続けることで、長期的には安定したリターンが期待できます。

池田泉州銀行:新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の違い

メリット②|初心者でも始めやすい少額自動積立

積立投資枠の大きなメリットは、少額から始められることです。多くの証券会社では、100円や1,000円といった少額から積立投資を始めることができます。まとまった資金がなくても、毎月の収入の一部を投資に回すことで、無理なく資産形成を始められます。

また、一度積立設定をすれば、あとは自動的に購入されるため、投資タイミングを見極める必要がありません。毎月決まった日に自動的に買付が行われるため、投資のことを忘れていても資産が積み上がっていきます。

投資初心者の方にとって、「いつ買えばいいのか」「今は買い時なのか」といった判断は難しいものです。積立投資なら、そうした悩みから解放され、気軽に投資を始めることができます。日々の値動きに一喜一憂することなく、長期的な視点で資産形成に取り組めるのです。

メリット③|運用の手間がかからず継続しやすい

積立投資枠では、一度設定すれば自動的に積立が継続されるため、運用の手間がほとんどかかりません。毎月の買付や銘柄選択を気にする必要がなく、忙しい方でも無理なく続けられます。

長期投資で最も重要なのは「継続すること」です。短期的な値動きに惑わされて売買を繰り返すと、かえって損失を被る可能性があります。積立投資は、市場の上げ下げに関係なく淡々と積み立てを続けることで、長期的には複利効果による資産の成長が期待できます。

また、積立投資は投資習慣を身につけるのにも最適です。毎月決まった金額を投資に回すことで、自然と貯蓄・投資の習慣が身につきます。将来の資産形成に向けて、無理なく継続できる仕組みが整っているのが積立投資枠の大きな魅力です。

メリット④|低コストで長期運用できる厳選商品

積立投資枠の対象商品は、金融庁が定めた厳しい基準を満たす投資信託のみに限定されています。購入時手数料は無料で、信託報酬も低く設定された低コスト商品ばかりです

投資信託の運用コストは、長期投資において運用成果に大きく影響します。例えば、信託報酬が年0.1%の商品と年1.0%の商品では、長期的には大きな差が生まれます。積立投資枠の対象商品は、信託報酬が低く抑えられているため、コストを気にせず長期運用に取り組めます。

また、対象商品が厳選されているため、初心者の方でも選びやすいのもメリットです。約280本の投資信託の中から、自分の投資目的やリスク許容度に合った商品を選ぶことができます。長期・積立・分散投資に適した商品ばかりなので、安心して投資を始められるのです。

金融庁:つみたて投資枠対象商品

積立投資枠の3つのデメリット|注意したいポイント

積立投資枠には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点もあります。これらを理解した上で投資を始めることが、後悔しない資産形成につながります。

ここでは、積立投資枠の主な3つのデメリットを正直に解説します。デメリットを知ることで、自分に積立投資枠が合っているかどうかを判断する材料になるでしょう。

デメリット①|短期間で大きな利益は期待しにくい

積立初期段階は投資資産額が少額なため、価格上昇の恩恵は一括投資に比べて少なくなり、短期間で大きなリターンは見込みにくいです。積立投資は、時間をかけてコツコツと資産を積み上げていく投資方法です。

例えば、市場が大きく上昇している局面では、一括投資の方が大きな利益を得られる可能性があります。毎月少しずつ購入する積立投資では、初期の投資額が少ないため、価格上昇の恩恵を十分に受けられないことがあります。

積立投資枠は、短期的な利益を狙うのではなく、10年、20年といった長期的な視点で資産を増やしていくことを目的としています。すぐに大きな利益を得たい方や、短期的な投資を好む方には向いていないかもしれません。長期的な視点で、じっくりと資産を育てていく姿勢が大切です。

池田泉州銀行:新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の違い

デメリット②|元本割れのリスクがある

積立投資枠で投資する投資信託は、株式や債券などの値動きのある資産に投資しています。そのため、市場環境によっては投資元本を下回る可能性があります。非課税制度だからといって、元本が保証されているわけではありません。

特に、投資を始めて間もない時期に市場が大きく下落すると、一時的に大きな含み損を抱えることがあります。しかし、長期的には市場は成長する傾向にあるため、短期的な値動きに一喜一憂せず、積立を継続することが重要です。

元本割れのリスクを軽減するためには、長期・積立・分散投資の3つの原則を守ることが大切です。時間を分散して投資することで価格変動リスクを抑え、複数の資産に分散投資することでリスクを分散できます。また、15年以上の長期投資を行うことで、元本割れのリスクは大幅に低減されるとされています。

金融庁:投資の基本

デメリット③|対象商品が限定される

積立投資枠の対象商品は、金融庁が定めた基準を満たす投資信託のみに限定されています。約280本の投資信託が対象となっていますが、成長投資枠と比べると選択肢は限られています。

個別株やETF、REITなど、幅広い商品に投資したい方にとっては、物足りなく感じるかもしれません。また、債券のみに投資する投資信託や、レバレッジをかけた商品など、一部の投資信託は対象外となっています。

ただし、対象商品が限定されていることは、必ずしもデメリットとは言えません。初心者の方にとっては、厳選された商品の中から選べることで、選択肢が絞られて選びやすくなります。また、長期・積立・分散投資に適した低コストの商品ばかりなので、安心して投資を始められるというメリットもあります。より幅広い商品に投資したい場合は、成長投資枠を併用することで対応できます。

積立投資枠の対象商品|どんな投資信託が選べる?

積立投資枠で投資できる商品は、金融庁が定めた厳しい基準を満たす投資信託のみです。長期・積立・分散投資に適した商品に限定されているため、初心者の方でも安心して選ぶことができます。

ここでは、積立投資枠の対象商品の特徴と、どのような種類の投資信託があるのかを詳しく解説します。自分に合った商品を選ぶための基礎知識を身につけましょう。

金融庁が厳選した長期・積立・分散投資に適した商品

つみたて投資枠の対象商品は、長期・積立・分散投資に適しているとして金融庁が定める要件を満たす公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されています。主な選定基準は、販売手数料ゼロ(ノーロード)、信託報酬が低水準、デリバティブ取引による運用を行っていない、などです

2024年1月時点で、約280本の投資信託が積立投資枠の対象となっています。全体の公募投資信託が約6,000本あることを考えると、かなり厳選されていることが分かります。金融庁が長期投資に適していると認めた商品だけが対象となっているため、安心して選ぶことができます。

対象商品の信託報酬は、国内株式のインデックスファンドで年0.5%以下、海外株式のインデックスファンドで年0.75%以下と、低コストに抑えられています。購入時手数料も無料なので、コストを気にせず長期投資に取り組めるのが大きな魅力です。

アセットマネジメントOne:新NISAのつみたて投資枠の対象商品

インデックスファンドとアクティブファンドの違い

積立投資枠の対象商品には、インデックスファンドとアクティブファンドの2種類があります。インデックスファンドは、日経平均株価やS&P500などの市場指数に連動することを目指す投資信託です。市場全体の平均的なリターンを目指すため、信託報酬が低く、初心者の方にも分かりやすいのが特徴です。

一方、アクティブファンドは、ファンドマネージャーが独自の判断で銘柄を選定し、市場平均を上回るリターンを目指す投資信託です。インデックスファンドよりも信託報酬は高めですが、優れた運用成績を残すファンドもあります。

積立投資枠の対象商品のうち、約270本がインデックスファンド、約60本がアクティブファンドとなっています。初心者の方は、まずはコストの低いインデックスファンドから始めるのがおすすめです。市場全体に分散投資できるため、リスクを抑えながら安定したリターンが期待できます。投資に慣れてきたら、アクティブファンドも検討してみるとよいでしょう。

投資対象地域で選ぶ|全世界・米国・国内株式

積立投資枠の対象商品は、投資対象地域によって大きく分けることができます。全世界株式、先進国株式、米国株式、国内株式など、様々な地域に投資する商品が用意されています。

全世界株式ファンドは、日本を含む世界中の株式に分散投資する商品です。1本で世界中の株式に投資できるため、地域分散が最も効いています。どの地域が成長するか分からない場合は、全世界株式ファンドを選ぶことで、世界経済全体の成長を取り込むことができます。

米国株式ファンドは、米国の株式市場に投資する商品です。米国は世界最大の経済大国であり、長期的に右肩上がりの成長を続けてきました。S&P500指数に連動するファンドなどが人気を集めています。国内株式ファンドは、日本の株式市場に投資する商品です。為替リスクがないため、円建てで安定した運用ができます。自分の投資目的やリスク許容度に合わせて、投資対象地域を選びましょう。

積立投資枠で商品を選ぶ3つのポイント

積立投資枠の対象商品は約280本あり、その中から自分に合った商品を選ぶのは簡単ではありません。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、商品選びがスムーズになります。

ここでは、積立投資枠で商品を選ぶ際に注目すべき3つのポイントを解説します。これらのポイントを参考に、自分に最適な商品を見つけましょう。

ポイント①|信託報酬(運用管理費用)をチェック

信託報酬は、投資信託を保有している間、継続的にかかる費用です。年率で表示され、保有額に応じて日々差し引かれます。例えば、信託報酬が年0.1%の商品と年1.0%の商品では、長期的には大きな差が生まれます

積立投資枠の対象商品は、すべて低コストに設定されていますが、それでも商品によって差があります。同じ指数に連動するインデックスファンドであれば、信託報酬が低い商品を選ぶことで、長期的なリターンを向上させることができます。

最近では、信託報酬が年0.1%を下回る超低コストのファンドも登場しています。例えば、全世界株式ファンドでは年0.05%程度、米国株式ファンドでは年0.09%程度の商品もあります。

商品を選ぶ際は、必ず信託報酬を確認し、できるだけ低コストの商品を選ぶようにしましょう。ただし、信託報酬だけで判断するのではなく、投資対象や運用実績なども総合的に考慮することが大切です。

ポイント②|投資対象地域とリスク分散を確認

投資対象地域は、リターンとリスクに大きく影響します。一般的に、先進国株式は新興国株式よりもリスクが低く、安定したリターンが期待できます。一方、新興国株式は高いリターンが期待できますが、価格変動が大きくリスクも高くなります。

リスクを抑えたい方は、全世界株式ファンドや先進国株式ファンドを選ぶとよいでしょう。1本で複数の国や地域に分散投資できるため、特定の国や地域のリスクを軽減できます。また、株式だけでなく債券も含むバランスファンドを選ぶことで、さらにリスクを抑えることができます。

若い世代(20~30代)
長期投資ができる方は、リスクを取って株式中心のファンドを選ぶこともできます
リスクを抑えたい方
投資期間が短い方は、債券の比重が高いバランスファンドを選ぶとよいでしょう

自分の年齢、投資期間、リスク許容度に合わせて、最適な投資対象地域を選びましょう。

ポイント③|運用実績と純資産総額を見る

運用実績は、その投資信託が過去にどのようなパフォーマンスを上げてきたかを示す指標です。過去の実績が将来のリターンを保証するものではありませんが、長期的な運用実績を確認することで、そのファンドの運用方針や安定性を判断する材料になります。

特に、アクティブファンドを選ぶ際は、過去3年、5年、10年といった長期的な運用実績を確認しましょう。市場平均を上回るリターンを継続的に出しているかどうかをチェックすることが大切です。インデックスファンドの場合は、連動対象の指数とどれだけ乖離しているかを確認しましょう。

純資産総額も重要なポイントです。純資産総額が大きいファンドは、多くの投資家から支持されている証拠であり、運用の安定性も高い傾向にあります。一般的に、純資産総額が100億円以上あるファンドは、安定した運用が期待できます。

逆に、純資産総額が少ないファンドは、運用効率が悪くなったり、繰上償還(運用終了)のリスクがあったりするため、注意が必要です。

積立投資枠が向いている人・向いていない人

積立投資枠は、すべての人に適しているわけではありません。投資目的やライフスタイル、リスク許容度によって、向き不向きがあります。

ここでは、積立投資枠が向いている人と向いていない人の特徴を解説します。自分がどちらに当てはまるかを確認して、最適な投資方法を選びましょう。

向いている人|長期でコツコツ資産形成したい方

積立投資枠が最も向いているのは、長期的な視点でコツコツと資産を増やしていきたい方です。10年、20年、30年といった長い時間をかけて、少しずつ資産を積み上げていくことに向いています。

特に、20代から40代の若い世代の方は、時間を味方につけることができます。複利効果により、長期投資ほど資産が大きく成長する可能性があります。また、まとまった資金がなくても、毎月の収入の一部を投資に回すことで、無理なく資産形成を始められます。

投資初心者の方にも積立投資枠は最適です。一度設定すれば自動的に積み立てられるため、投資タイミングを見極める必要がありません。また、対象商品が厳選されているため、商品選びで迷うことも少なくなります。日々の値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で資産形成に取り組みたい方には、積立投資枠がぴったりです。

向いていない人|短期で大きく稼ぎたい方

積立投資枠が向いていないのは、短期間で大きな利益を得たい方です。積立投資は、時間をかけてコツコツと資産を増やしていく投資方法なので、すぐに大きなリターンを得ることは期待できません。

また、投資タイミングを自分で決めたい方にも向いていません。積立投資枠では、毎月決まった日に自動的に買付が行われるため、市場の動きを見ながら売買するといった柔軟な対応ができません。相場を見ながらアクティブに投資したい方は、成長投資枠を利用する方が適しています。

さらに、個別株やETF、REITなど、幅広い商品に投資したい方にも物足りないかもしれません。積立投資枠の対象商品は投資信託のみに限定されているため、多様な商品に投資したい場合は、成長投資枠を併用する必要があります。

自分の投資スタイルや目的に合わせて、最適な投資枠を選びましょう。

成長投資枠との併用がおすすめのケース

積立投資枠と成長投資枠を併用することで、それぞれのメリットを活かした柔軟な資産運用が可能になります。例えば、積立投資枠で毎月コツコツと投資信託を積み立てながら、成長投資枠で気になる個別株を購入するといった使い方ができます。

ボーナスなどのまとまった資金が入った時に、成長投資枠で一括投資を行うのもおすすめです。積立投資枠で基本的な資産形成を行いつつ、余剰資金を成長投資枠で運用することで、効率的に非課税枠を活用できます。

また、投資に慣れてきた方は、積立投資枠で安定的な運用を続けながら、成長投資枠でより積極的な投資に挑戦するという使い方もあります。リスクの低い商品とリスクの高い商品を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のバランスを取ることができます。自分のライフステージや投資経験に合わせて、2つの枠を使い分けましょう。

積立投資枠と成長投資枠の併用パターン3例

積立投資枠と成長投資枠をどのように併用すればよいか、具体的なイメージが湧かない方も多いでしょう。ここでは、投資スタイル別に3つの併用パターンを紹介します。

これらのパターンを参考に、自分に合った使い方を見つけてください。ライフステージや投資目的に応じて、柔軟に組み合わせることが大切です。

パターン①|積立重視型(月10万円×12ヶ月)

積立重視型は、積立投資枠を最大限活用するパターンです。毎月10万円を積立投資枠で積み立てることで、年間120万円の非課税枠をフルに活用できます。15年間継続すれば、積立投資枠だけで1,800万円の非課税枠を使い切ることができます。

このパターンは、長期的にコツコツと資産を積み上げていきたい方に最適です。全世界株式ファンドや米国株式ファンドなど、低コストのインデックスファンドを選ぶことで、安定したリターンが期待できます。

成長投資枠は使わずに残しておくことで、将来的にまとまった資金が必要になった時や、投資機会が訪れた時に活用することができます。例えば、子どもの教育資金や住宅購入の頭金など、ライフイベントに合わせて柔軟に対応できるのが魅力です。積立投資枠で基盤を作りながら、成長投資枠を温存しておくという戦略もおすすめです。

パターン②|バランス型(積立月5万円+成長枠180万円)

バランス型は、積立投資枠と成長投資枠をバランスよく活用するパターンです。積立投資枠で毎月5万円(年間60万円)を積み立てながら、成長投資枠で年間180万円を投資します。年間投資枠240万円をフルに活用できます

積立投資枠では、インデックスファンドを中心に安定的な運用を行います。一方、成長投資枠では、個別株や一括投資、アクティブファンドなど、より積極的な投資に挑戦できます。リスクとリターンのバランスを取りながら、効率的に資産を増やすことができます。

このパターンは、ある程度の投資経験があり、投資資金にも余裕がある方に向いています。積立投資で基本的な資産形成を行いながら、成長投資枠で投資の幅を広げることができます。7年半で1,800万円の非課税枠を使い切ることができ、中期的な資産形成に最適なパターンです。

パターン③|成長枠重視型(積立月1万円+成長枠で個別株)

成長枠重視型は、成長投資枠をメインに活用するパターンです。積立投資枠では毎月1万円程度の少額積立を行い、成長投資枠で個別株やETFなど、より自由度の高い投資を行います。

このパターンは、投資経験が豊富で、自分で銘柄を選んで投資したい方に向いています。積立投資枠で最低限の資産形成を行いながら、成長投資枠で自分の投資戦略を実践できます。個別株の配当金を狙ったり、成長性の高い銘柄に集中投資したりと、柔軟な運用が可能です。

個別株投資はリスクも高くなるため、十分な知識と経験が必要です。また、成長投資枠のみでは非課税保有限度額が1,200万円までとなるため、残りの600万円は積立投資枠を活用する必要があります。

投資に慣れてきたら、積立投資枠の積立額を増やして、非課税枠を最大限活用するとよいでしょう。

積立投資枠の始め方|口座開設から積立設定まで

積立投資枠を始めるには、NISA口座を開設し、積立設定を行う必要があります。手続きは思ったよりも簡単で、オンラインで完結する証券会社も増えています。

ここでは、積立投資枠を始めるための具体的な手順を3つのステップで解説します。これから投資を始める方は、ぜひ参考にしてください。

ステップ①|証券会社・銀行でNISA口座を開設

まず、証券会社または銀行でNISA口座を開設します。NISA口座は1人1口座しか開設できないため、どの金融機関で開設するかをよく検討しましょう。証券会社によって、取扱商品数、手数料、ポイント還元率、使いやすさなどが異なります。

ネット証券では、口座開設から取引までオンラインで完結できます。本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)とマイナンバーを用意して、オンラインで申し込みます。最短で翌営業日に口座開設が完了する証券会社もあります。

NISA口座を開設する際は、証券総合口座も同時に開設されます。すでに証券総合口座を持っている場合は、追加でNISA口座を申し込むだけで大丈夫です。金融機関を変更したい場合は、年単位で変更が可能ですが、その年に買付を行っていないことが条件となります。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

ステップ②|積立する商品を選ぶ

NISA口座が開設されたら、次に積立する商品を選びます。積立投資枠の対象商品は約280本あり、証券会社によって取扱商品が異なります。まずは、自分が利用する証券会社でどのような商品が取り扱われているかを確認しましょう。

商品を選ぶ際は、投資対象地域、信託報酬、運用実績などを確認します。初心者の方は、全世界株式ファンドや米国株式ファンドなど、低コストのインデックスファンドから始めるのがおすすめです。1本で幅広く分散投資できるため、リスクを抑えながら安定したリターンが期待できます。

証券会社のウェブサイトでは、商品の詳細情報や目論見書を確認できます。目論見書には、投資方針、投資対象、手数料、リスクなどが記載されているので、必ず確認してから投資しましょう。分からないことがあれば、証券会社のサポートに問い合わせることもできます。

ステップ③|積立金額と引落方法を設定

投資する商品が決まったら、積立金額と引落方法を設定します。毎月の積立額は、証券会社によって100円や1,000円から設定できます。無理のない範囲で、継続できる金額を設定することが大切です。

引落方法は、証券会社によって異なりますが、主に以下の方法があります。証券口座からの引落、銀行口座からの自動引落、クレジットカード決済などです。クレジットカード決済を選ぶと、積立額に応じてポイントが貯まる証券会社もあります。

積立日も設定できます。毎月1日、10日、20日など、複数の日から選べる証券会社が多いです。給料日の直後に設定しておくと、確実に積立を続けられます。設定が完了したら、あとは自動的に積立が行われます。定期的に運用状況を確認しながら、長期的な視点で資産形成に取り組みましょう。

よくある質問(Q&A)

よくある質問(Q&A)
途中で積立金額を変更できる?

はい、積立金額はいつでも変更できます。証券会社のウェブサイトやアプリから、簡単に変更手続きができます。収入が増えたら積立額を増やしたり、支出が増えたら一時的に減額したりと、柔軟に対応できます。

ただし、変更のタイミングには注意が必要です。多くの証券会社では、毎月の積立日の数日前までに変更手続きを行う必要があります。例えば、毎月10日が積立日の場合、前月の25日頃までに変更手続きを完了させる必要があります。詳しい期限は、利用している証券会社で確認しましょう。

積立を一時停止したらどうなる?

積立を一時停止することも可能です。証券会社のウェブサイトやアプリから、積立の停止手続きができます。停止している間は新たな買付は行われませんが、すでに保有している投資信託は非課税のまま保有し続けることができます。

一時停止しても、NISA口座が閉鎖されることはありません。再開したい時に、再び積立設定を行えば、すぐに積立を再開できます。ただし、停止している期間の年間投資枠は使えなくなるため、長期的には投資機会を逃すことになります。可能であれば、少額でも積立を継続することをおすすめします。

年間120万円の枠を使い切らないとダメ?

いいえ、年間120万円の枠を必ずしも使い切る必要はありません。自分のペースで、無理のない範囲で投資を続けることが大切です。例えば、毎月3万円の積立なら年間36万円、毎月5万円なら年間60万円となり、年間投資枠の一部を使うことになります。

年間投資枠は毎年リセットされるため、使い切れなかった分を翌年に繰り越すことはできません。しかし、非課税期間が無期限化されたことで、急いで枠を使い切る必要はなくなりました。長期的な視点で、コツコツと積立を続けることが重要です。

金融機関を変更できる?

はい、NISA口座の金融機関は年単位で変更できます。ただし、変更したい年に一度でも買付を行っていると、その年は変更できません。例えば、2025年に金融機関を変更したい場合、2025年中に買付を行わないことが条件となります。

金融機関を変更する際は、変更前の金融機関で保有している商品は、そのまま非課税で保有し続けることができます。ただし、変更前の金融機関では新たな買付はできなくなります。変更後の金融機関で、新たに積立設定を行う必要があります。

iDeCoと併用できる?

はい、積立投資枠とiDeCo(個人型確定拠出年金)は併用できます。NISAとiDeCoは別の制度なので、両方を同時に利用することで、より効率的な資産形成が可能になります。

iDeCoは、掛金が全額所得控除の対象となるため、税制メリットが大きいのが特徴です。一方、NISAは運用益が非課税で、いつでも引き出せる柔軟性があります。それぞれのメリットを活かして、目的に応じて使い分けるとよいでしょう。

売却したら非課税枠は復活する?

はい、NISA口座で保有している商品を売却すると、売却した商品の取得価額分の非課税枠が翌年以降に復活します。例えば、100万円で購入した投資信託を売却すると、翌年以降に100万円分の非課税枠を再利用できるようになります。

ただし、売却した年内に非課税枠が復活するわけではありません。復活するのは翌年以降です。また、復活する金額は売却価格ではなく、購入時の取得価額である点に注意しましょう。この仕組みにより、ライフイベントに合わせて資産を引き出しても、長期的には非課税枠を活用し続けることができます。

確定申告は必要?

NISA口座で得た利益は非課税なので、原則として確定申告は不要です。売却益や分配金に税金がかからないため、確定申告の手続きも必要ありません。これがNISAの大きなメリットの1つです。

ただし、NISA口座以外の課税口座(特定口座や一般口座)で投資を行っている場合は、確定申告が必要になることがあります。複数の口座を使い分けている場合は、それぞれの口座の取扱いを確認しておきましょう。

まとめ

積立投資枠は、2024年から始まった新NISA制度の2つの投資枠のうちの1つで、長期的な資産形成を目的とした積立投資専用の非課税枠です。年間120万円まで非課税で投資でき、非課税期間は無期限、生涯投資枠は1,800万円と、旧つみたてNISAから大幅に拡充されました。

積立投資枠の最大のメリットは、ドルコスト平均法により価格変動リスクを分散できること、少額から自動積立で始められること、金融庁が厳選した低コストの商品に投資できることです。一方、短期間で大きな利益は期待しにくく、元本割れのリスクがあることも理解しておく必要があります。

成長投資枠との違いは、投資方法(積立のみ vs 一括・積立両方)、対象商品(厳選された投資信託 vs 幅広い選択肢)、年間投資枠(120万円 vs 240万円)などです。2つの枠は併用できるため、自分の投資目的やライフステージに合わせて使い分けることが大切です。

積立投資枠が向いているのは、長期でコツコツ資産形成したい方、投資初心者の方、少額から始めたい方です。商品を選ぶ際は、信託報酬、投資対象地域、運用実績などを確認し、自分に合った商品を選びましょう。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。詳しくは各証券会社・金融機関にご確認ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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