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個人事業主やフリーランスの方は、会社員と違って厚生年金がないため、老後の年金が国民年金だけになってしまいます。
「国民年金だけでは老後が不安」「もっと効率的に老後資金を貯めたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな個人事業主の方におすすめなのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。
iDeCoは掛金が全額所得控除になるため、節税しながら老後資金を準備できる制度として注目されています。
この記事では、個人事業主がiDeCoを活用するメリット、掛金の上限額、年収別の節税シミュレーション、小規模企業共済との併用方法まで、実践的な情報を詳しく解説します。
iDeCoを正しく理解して、賢く老後に備えましょう。
目次
個人事業主がiDeCoに加入するメリットは?
個人事業主がiDeCoに加入する最大のメリットは、税制優遇を受けながら老後資金を準備できることです。
会社員と違って厚生年金がない個人事業主にとって、iDeCoは老後の生活を支える重要な制度となります。
ここでは、個人事業主がiDeCoを活用すべき4つの具体的なメリットを詳しく解説します。
この大きな掛金枠を活用すれば、年間で最大81.6万円もの金額を老後資金として積み立てることができます。
しかも、後述するように掛金は全額所得控除の対象となるため、節税効果も非常に大きくなります。
国民年金基金や付加年金と合算で月6.8万円が上限となる点には注意が必要です。詳しくは次のセクションで解説します。
iDeCoには「掛金拠出時」「運用時」「受取時」の3つの段階で税制優遇があります。この3段階の優遇により、効率的に資産を増やすことができます。
まず、掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。
例えば年収500万円の個人事業主が月3万円(年36万円)を掛けた場合、年間で約7.2万円の節税になります。
次に、運用中に得た利益(運用益)は非課税です。通常の投資では運用益に約20%の税金がかかりますが、iDeCoではこれが一切かかりません。長期運用すればするほど、この非課税メリットは大きくなります。
最後に、60歳以降に受け取る際も、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、税負担が軽減されます。
国民年金の満額支給額は月額約6.8万円(2024年度)です。これだけでは老後の生活費を賄うのは難しく、多くの個人事業主が老後資金に不安を抱えています。
iDeCoを活用すれば、国民年金に上乗せして自分で老後資金を準備できます。
例えば、30歳から60歳まで月3万円を積み立て、年利3%で運用できた場合、約1,750万円の資産を形成できます(元本1,080万円、運用益約670万円)。
この資産を65歳から85歳までの20年間で取り崩すと、月約7.3万円を受け取れる計算になります。国民年金と合わせれば月14万円程度となり、生活の基盤を作ることができます。
会社員のような厚生年金がない個人事業主にとって、iDeCoは老後の生活水準を維持するための重要な手段なのです。
iDeCoの特徴の一つが、原則として60歳まで引き出せないという点です。
一見デメリットに思えますが、これが確実に老後資金を貯められる強みにもなります。
個人事業主は収入が不安定になりがちで、事業資金が必要になったり、急な出費が発生したりすることもあります。普通の預金や投資であれば、つい使ってしまうこともあるでしょう。
しかしiDeCoは制度上引き出せないため、強制的に老後資金を確保できます。「老後のお金は絶対に手をつけない」という仕組みが、長期的な資産形成を支えてくれるのです。
本当に資金が必要な時に引き出せないというリスクもあります。事業資金と老後資金のバランスについては、後ほど詳しく解説します。
個人事業主のiDeCo掛金上限額はいくら?
iDeCoの掛金上限額は、加入者の職業や年金制度によって異なります。
個人事業主の場合、月額6.8万円、年間81.6万円が上限ですが、他の年金制度との兼ね合いや、2024年12月の法改正による変更点もあります。
ここでは、個人事業主のiDeCo掛金上限額について、詳しく解説します。
この大きな掛金枠は、厚生年金がない個人事業主が、会社員と同等の老後資金を準備できるように設計されています。
月6.8万円をフル活用すれば、年間で最大81.6万円もの所得控除を受けられるため、節税効果も非常に大きくなります。
掛金は月5,000円から1,000円単位で自由に設定でき、年1回変更も可能です。事業の収支状況に応じて柔軟に調整できるのも、個人事業主にとって使いやすいポイントです。
注意すべき点は、iDeCoの掛金上限6.8万円は、国民年金基金や付加年金と合算した金額だということです。これらの制度を併用している場合、合計で月6.8万円を超えることはできません。
例えば、国民年金基金に月2万円を拠出している場合、iDeCoには月4.8万円までしか拠出できません。付加年金(月400円)を利用している場合は、iDeCoの上限は月6.76万円となります。
国民年金基金とiDeCoは併用できますが、どちらを優先すべきかは個人の状況によって異なります。
国民年金基金は終身年金として受け取れる安心感がある一方、iDeCoは運用次第で資産を増やせる可能性があります。
どちらを選ぶか、あるいはどのように組み合わせるかについては、後ほど詳しく解説します。
2024年12月に確定拠出年金法が改正され、iDeCoの拠出限度額の算定方法が一部変更されました。
ただし、個人事業主(第1号被保険者)の月額6.8万円という上限額自体は変更されていません。
今回の改正は主に、会社員(第2号被保険者)で企業型DCに加入している方の拠出限度額の計算方法が見直されたものです。個人事業主の方は、従来通り月6.8万円(国民年金基金・付加年金と合算)の枠を活用できます。
iDeCoの最大の魅力は、「掛金拠出時」「運用時」「受取時」の3つの段階で税制優遇を受けられることです。
特に掛金が全額所得控除になる点は、個人事業主にとって大きな節税メリットとなります。
ここでは、3つの税制優遇の仕組みと、年収別の具体的な節税額をシミュレーションします。
iDeCoの掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります。これにより、所得税と住民税が軽減されます。
例えば、年収500万円(課税所得300万円)の個人事業主が、月3万円(年36万円)をiDeCoに拠出した場合、所得税率20%、住民税率10%として、年間で約10.8万円(所得税7.2万円+住民税3.6万円)の節税になります。
この節税効果は、掛金が多いほど、また所得が高いほど大きくなります。所得税は累進課税のため、課税所得が高い方ほど税率が高く、節税額も増える仕組みです。
確定申告では、「小規模企業共済等掛金控除」の欄に年間の掛金額を記入するだけで控除を受けられます。金融機関から送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付すれば手続きは完了です。
iDeCoで運用して得た利益(運用益)は、全額非課税です。
通常の投資では、株式や投資信託の売却益や配当金に約20.315%の税金がかかりますが、iDeCoではこれが一切かかりません。
例えば、30年間で運用益が500万円出た場合、通常の課税口座なら約100万円が税金として引かれますが、iDeCoなら500万円をそのまま受け取れます。長期運用すればするほど、この非課税メリットは大きくなります。
運用益が非課税ということは、複利効果を最大限に活かせるということでもあります。利益に税金がかからないため、その分を再投資に回すことができ、雪だるま式に資産が増えていきます。
iDeCoは60歳まで引き出せないため、長期運用が前提です。短期的な利益を狙うのではなく、老後資金としてじっくり育てる姿勢が大切です。
60歳以降にiDeCoの資産を受け取る際も、税制優遇が適用されます。
受取方法は「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」の3つから選べ、それぞれ異なる控除が適用されます。
一時金として一括で受け取る場合は、「退職所得控除」が適用されます。退職所得控除は、加入期間に応じて控除額が増える仕組みで、例えば30年加入していれば1,500万円まで非課税で受け取れます。
年金として分割で受け取る場合は、「公的年金等控除」が適用されます。65歳以上で年金収入が年110万円以下なら全額非課税、それ以上でも一定額まで控除されます。
どちらの受取方法が有利かは、他の退職金や年金収入との兼ね合いによって変わります。複数の退職金がある場合は一時金受取が不利になることもあるため、受取時期が近づいたら税理士やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
実際に、年収別でiDeCoの節税効果をシミュレーションしてみましょう。
ここでは、年収300万円、500万円、700万円の個人事業主が、それぞれ異なる掛金を拠出した場合の節税額を計算します。
| 年収 | 課税所得(概算) | 月掛金 | 年間掛金 | 所得税率 | 年間節税額(所得税+住民税) |
| 300万円 | 約150万円 | 1万円 | 12万円 | 5% | 約1.8万円 |
| 300万円 | 約150万円 | 2万円 | 24万円 | 5% | 約3.6万円 |
| 500万円 | 約300万円 | 3万円 | 36万円 | 10% | 約7.2万円 |
| 500万円 | 約300万円 | 4万円 | 48万円 | 10% | 約9.6万円 |
| 700万円 | 約500万円 | 5万円 | 60万円 | 20% | 約18万円 |
| 700万円 | 約500万円 | 6.8万円 | 81.6万円 | 20% | 約24.5万円 |
このように、年収が高いほど、また掛金が多いほど節税効果は大きくなります。
年収700万円で上限の月6.8万円を拠出すれば、年間で約24.5万円もの節税が可能です。30年間続ければ、節税額だけで約735万円にもなります。
無理に掛金を増やして事業資金が不足しては本末転倒です。次のセクションでは、年収や年齢に応じた最適な掛金額について解説します。
個人事業主がiDeCoに加入するデメリットと注意点
iDeCoには多くのメリットがありますが、デメリットや注意点もしっかり理解しておく必要があります。
特に個人事業主は収入が不安定になりがちなため、事業資金とのバランスを考えることが重要です。
ここでは、iDeCoのデメリットと、個人事業主特有の注意点を詳しく解説します。
iDeCoの最大のデメリットは、原則として60歳まで引き出せないことです。病気や事業の不振など、急にお金が必要になった場合でも、iDeCoの資産を取り崩すことはできません。
個人事業主は会社員と違って収入が不安定で、事業資金が急に必要になることもあります。iDeCoに多額の資金を拠出しすぎると、いざという時に資金繰りに困る可能性があります。
そのため、生活費の6ヶ月~1年分の緊急予備資金を確保した上で、余裕資金でiDeCoを始めることが大切です。
事業用の運転資金も別途確保し、iDeCoはあくまで「老後のために絶対に使わないお金」として位置づけましょう。
掛金の拠出を一時停止することは可能です(ただし口座管理手数料は継続)。事業が不調な時は無理に拠出を続けず、柔軟に調整することをおすすめします。
iDeCoは投資商品であるため、運用次第では元本割れのリスクがあります。特に投資信託で運用する場合、株式市場の下落により資産が減少する可能性があります。
ただし、iDeCoは長期運用が前提の制度です。短期的には値動きがあっても、10年、20年という長期で見れば、分散投資によりリスクを抑えながら資産を増やせる可能性が高まります。
元本割れが心配な方は、定期預金や保険などの元本確保型商品を選ぶこともできます。
ただし、元本確保型は利回りが低く、インフレに負ける可能性もあるため、一部を投資信託に振り分けてバランスを取る方法もおすすめです。
投資信託を選ぶ場合は、国内外の株式・債券に分散投資する「バランス型ファンド」から始めると、リスクを抑えながら運用できます。
iDeCoには、加入時・運用時・受取時にそれぞれ手数料がかかります。これらの手数料は金融機関によって異なるため、金融機関選びの重要なポイントとなります。
加入時には、国民年金基金連合会に2,829円の手数料がかかります(初回のみ)。
運用中は、毎月171円の口座管理手数料(国民年金基金連合会105円+信託銀行66円)が必ずかかり、これに金融機関の運営管理手数料が加わります。
ネット証券の多くは運営管理手数料が無料ですが、一部の金融機関では月数百円かかる場合もあります。30年間で考えると、月300円の差でも総額10万円以上の違いになるため、できるだけ手数料が安い金融機関を選びましょう。
受取時には、給付手数料として1回440円がかかります。年金として分割受取する場合は、受取回数分の手数料が発生します。
個人事業主特有の注意点として、事業資金と老後資金のバランスがあります。
iDeCoの節税効果に魅力を感じて多額の掛金を拠出すると、事業の運転資金が不足するリスクがあります。
事業が成長期にある場合は、iDeCoよりも事業への再投資を優先すべきかもしれません。事業が安定してきたら、徐々にiDeCoの掛金を増やしていくという戦略も有効です。
また、小規模企業共済との優先順位も考える必要があります。小規模企業共済は廃業時にも受け取れるため、事業のリスクヘッジとしての側面もあります。iDeCoと小規模企業共済のどちらを優先すべきかについては、次のセクションで詳しく解説します。
目安としては、手取り収入の10~20%程度をiDeCoや小規模企業共済などの老後資金準備に回し、残りを生活費・事業資金・緊急予備資金に振り分けるバランスが理想的です。
iDeCoと小規模企業共済を比較
個人事業主が老後資金を準備する際、iDeCoと並んでよく検討されるのが小規模企業共済です。どちらも所得控除を受けられる制度ですが、それぞれ特徴が異なります。
ここでは、小規模企業共済の基本情報、iDeCoとの違い、併用の可否、そして使い分けのポイントを詳しく解説します。
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者のための退職金制度です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、廃業や退職時にまとまった資金を受け取れます。
掛金は月1,000円から7万円まで500円単位で設定でき、iDeCoと同様に全額が所得控除の対象となります。掛金は事業の状況に応じて増減でき、一時的に掛金を止めることも可能です。
小規模企業共済の大きな特徴は、廃業時や退職時にも受け取れる点です。iDeCoは60歳まで引き出せませんが、小規模企業共済は事業をやめた時点で共済金を受け取れます。事業のリスクヘッジとしての側面もあるのです。
また、契約者貸付制度があり、掛金の範囲内で低金利で借入ができます。急な事業資金が必要な時に活用できる点も、個人事業主にとってメリットです。
iDeCoと小規模企業共済は、どちらも所得控除を受けられる点では共通していますが、目的や受取条件、運用方法が異なります。それぞれの違いを表にまとめました。
| 項目 | iDeCo | 小規模企業共済 |
| 目的 | 老後資金の準備 | 事業の退職金・廃業時の資金 |
| 掛金上限 | 月6.8万円(年81.6万円) | 月7万円(年84万円) |
| 所得控除 | 全額(小規模企業共済等掛金控除) | 全額(小規模企業共済等掛金控除) |
| 運用方法 | 自分で運用商品を選択(投資信託・定期預金等) | 中小機構が運用(予定利率1%) |
| 受取条件 | 原則60歳以降 | 廃業・退職・65歳以上で180ヶ月以上加入 |
| 元本割れリスク | あり(運用商品による) | 基本的になし(掛金納付月数による) |
| 貸付制度 | なし | あり(掛金の範囲内で低金利借入可能) |
| 受取方法 | 一時金・年金・併用 | 一時金・分割(10年・15年)・併用 |
この表から分かるように、iDeCoは運用次第で資産を増やせる可能性がある一方、元本割れのリスクもあります。
一方、小規模企業共済は予定利率1%で安定的に運用され、元本割れのリスクは基本的にありません(ただし、掛金納付月数が短いと元本割れすることもあります)。
また、iDeCoは60歳まで引き出せませんが、小規模企業共済は廃業時に受け取れるため、事業のリスクに備える意味もあります。
iDeCoと小規模企業共済は、併用が可能です。それぞれ別の制度として運営されているため、掛金の枠も別々に設定されています。
つまり、iDeCoに月6.8万円、小規模企業共済に月7万円を拠出すれば、合計で月13.8万円(年165.6万円)を所得控除として活用できます。
年収が高く、節税効果を最大化したい個人事業主にとっては、非常に有効な戦略です。
例えば、年収800万円(課税所得600万円、所得税率20%)の個人事業主が、iDeCoに月6.8万円、小規模企業共済に月7万円を拠出した場合、年間の節税額は約49.7万円(所得税33.1万円+住民税16.6万円)にもなります。
併用する場合は年間で約166万円もの資金を拠出することになるため、事業資金や生活費とのバランスをしっかり考える必要があります。無理に上限まで拠出して資金繰りに困らないよう、慎重に計画しましょう。
iDeCoと小規模企業共済のどちらを優先すべきかは、事業の状況や年齢、リスク許容度によって異なります。ここでは、使い分けのポイントを解説します。
iDeCo・国民年金基金・付加年金の比較
個人事業主が利用できる年金制度は、iDeCoだけではありません。国民年金基金や付加年金も、老後の年金を増やすための選択肢です。
ここでは、これら3つの年金制度の特徴を比較し、どれを選ぶべきかのポイントを解説します。
国民年金基金は、国民年金に上乗せして年金を増やすための公的な制度です。個人事業主や自営業者など、国民年金の第1号被保険者が加入できます。
国民年金基金の最大の特徴は、終身年金として一生涯受け取れる点です。iDeCoは積み立てた資産を取り崩す形ですが、国民年金基金は生きている限り年金を受け取り続けられるため、長生きリスクに備えられます。
掛金は月額6.8万円が上限で、iDeCoと合算して6.8万円を超えることはできません。掛金は全額が所得控除の対象となり、節税効果があります。
国民年金基金は途中で脱退できないという制約があります。一度加入すると、掛金の減額や一時停止はできますが、脱退して掛金を返金してもらうことはできません。また、予定利率が固定されているため、インフレに弱いという側面もあります。
付加年金は、国民年金に月400円を上乗せして納付することで、将来の年金を増やせる制度です。非常にシンプルで、誰でも簡単に利用できます。
付加年金を納付すると、将来受け取る年金額が「200円×納付月数」だけ増えます。例えば、40年間(480ヶ月)納付すると、年間9.6万円(月8,000円)の年金が上乗せされます。
付加年金の最大のメリットは、2年で元が取れる点です。納付額は月400円×480ヶ月=19.2万円ですが、受取額は年9.6万円なので、2年間受け取れば元が取れます。それ以降は、生きている限り受け取り続けられるため、非常にコストパフォーマンスが高い制度です。
付加年金は国民年金基金と併用できません。どちらか一方しか選べないため、注意が必要です。また、付加年金を納付すると、iDeCoの上限が月6.76万円に減ります(月400円分が差し引かれる)。
iDeCo、国民年金基金、付加年金の違いを表にまとめました。それぞれの特徴を理解して、自分に合った制度を選びましょう。
| 項目 | iDeCo | 国民年金基金 | 付加年金 |
| 掛金上限 | 月6.8万円(基金・付加年金と合算) | 月6.8万円(iDeCoと合算) | 月400円 |
| 所得控除 | 全額 | 全額 | 全額 |
| 運用方法 | 自分で選択(投資信託・定期預金等) | 国民年金基金が運用 | 国が運用 |
| 受取方法 | 一時金・年金・併用 | 終身年金または確定年金 | 終身年金(国民年金に上乗せ) |
| 受取開始 | 60歳以降 | 65歳以降(プランによる) | 65歳以降 |
| 元本割れリスク | あり | 基本的になし | なし |
| 途中脱退 | 不可(60歳まで引き出せない) | 不可(減額・停止は可能) | いつでも停止可能 |
| 併用 | 基金・付加年金と合算で月6.8万円 | iDeCoと合算で月6.8万円、付加年金とは併用不可 | iDeCoと併用可能、基金とは併用不可 |
この表から分かるように、iDeCoは運用次第で資産を増やせる可能性がある一方、元本割れのリスクもあります。国民年金基金と付加年金は終身年金として安定的に受け取れますが、インフレに弱いという側面もあります。
iDeCo、国民年金基金、付加年金をどう組み合わせるかは、年齢、収入、リスク許容度によって異なります。ここでは、代表的な併用パターンを紹介します。
個人事業主のiDeCo活用戦略
iDeCoの掛金は月5,000円から6.8万円まで自由に設定できますが、年収や年齢、事業の状況によって最適な掛金額は異なります。
無理に上限まで拠出すると資金繰りに困る可能性もあるため、自分に合った掛金額を見極めることが大切です。
ここでは、年収別・年齢別の最適な掛金額と、事業の浮き沈みに対応した掛金調整の方法を解説します。
年収300万円台の個人事業主は、事業が安定していない場合も多く、生活費や事業資金の確保が優先です。iDeCoは月1万円~2万円程度から無理なく始めることをおすすめします。
月1万円(年12万円)を拠出した場合、所得税率5%、住民税率10%として、年間で約1.8万円の節税になります。30年間続ければ、節税額だけで約54万円です。さらに運用益が加われば、老後資金として十分な金額を準備できます。
年収300万円台の場合、小規模企業共済との併用も検討しましょう。例えば、小規模企業共済に月2万円、iDeCoに月1万円という形で、合計月3万円を老後資金準備に回すバランスが理想的です。
付加年金(月400円)は必ず加入しておきましょう。2年で元が取れるため、年収が低い方でも確実に年金を増やせます。
年収500万円台になると、事業も安定してきて、老後資金準備に本格的に取り組める段階です。iDeCoには月3万円~4万円を拠出し、節税効果を実感しながら資産形成を進めましょう。
月3万円(年36万円)を拠出した場合、所得税率10%、住民税率10%として、年間で約7.2万円の節税になります。月4万円なら年間で約9.6万円の節税です。30年間続ければ、節税額だけで約216万円~288万円にもなります。
年収500万円台の場合、小規模企業共済との併用も積極的に検討しましょう。例えば、小規模企業共済に月4万円、iDeCoに月3万円という形で、合計月7万円を老後資金準備に回すと、年間で約21万円の節税効果があります。
運用商品は、バランス型ファンド(株式と債券を組み合わせた投資信託)を中心に、リスクを抑えながら運用益を狙う戦略がおすすめです。
年収700万円以上の個人事業主は、事業が安定し、節税効果も最大化できる段階です。iDeCoには月5万円~6.8万円を拠出し、上限を活用して老後資金を最大化しましょう。
月6.8万円(年81.6万円)を拠出した場合、所得税率20%、住民税率10%として、年間で約24.5万円の節税になります。30年間続ければ、節税額だけで約735万円にもなります。
年収700万円以上の場合、小規模企業共済との併用で節税効果を最大化できます。例えば、小規模企業共済に月7万円、iDeCoに月6.8万円という形で、合計月13.8万円を拠出すると、年間で約49.7万円もの節税効果があります。
運用商品は、株式型ファンド(国内外の株式に投資する投資信託)を中心に、積極的に運用益を狙う戦略がおすすめです。ただし、元本割れのリスクもあるため、一部をバランス型や債券型に振り分けてリスク分散することも検討しましょう。
個人事業主は、会社員と違って収入が不安定です。好調な年もあれば、不調な年もあります。iDeCoの掛金は、事業の状況に応じて柔軟に調整することが大切です。
iDeCoの掛金は、年1回変更できます。例えば、事業が好調な年は月6.8万円に増額し、不調な年は月1万円に減額するという調整が可能です。掛金変更の手続きは、金融機関に「加入者掛金額変更届」を提出するだけで完了します。
また、掛金の拠出を一時停止することもできます(ただし、口座管理手数料は継続して発生します)。事業が厳しい時期は無理に拠出を続けず、一時停止して資金繰りを優先しましょう。
理想的には、事業の好調期に多めに拠出し、不調期は減額・停止するという形で、長期的に平均して積み立てていく戦略がおすすめです。
例えば、年収が700万円の年は月5万円、年収が400万円の年は月2万円という形で、柔軟に調整しましょう。
また、事業用の緊急予備資金(生活費の6ヶ月~1年分)を確保した上で、余裕資金をiDeCoに回すという原則を守ることが大切です。無理に拠出して資金繰りに困らないよう、慎重に計画しましょう。
iDeCoに興味を持ったら、次は実際に加入する手続きを進めましょう。ここでは、金融機関の選び方、加入手続きの流れ、確定申告での処理方法、運用商品の選び方を詳しく解説します。
iDeCoを始めるには、まず金融機関(運営管理機関)を選ぶ必要があります。金融機関選びは、手数料、商品数、サポート体制の3つのポイントで比較しましょう。
手数料は、最も重要な比較ポイントです。iDeCoには、国民年金基金連合会と信託銀行に支払う手数料(月171円)が必ずかかりますが、これに加えて金融機関の運営管理手数料がかかる場合があります。
ネット証券の多くは運営管理手数料が無料ですが、一部の金融機関では月数百円かかることもあります。30年間で考えると、月300円の差でも総額10万円以上の違いになるため、できるだけ手数料が安い金融機関を選びましょう。
商品数も重要です。iDeCoで選べる運用商品は金融機関によって異なります。投資信託の本数が多い方が、自分に合った商品を選びやすくなります。ただし、商品数が多すぎると選ぶのが大変なので、20~30本程度の厳選されたラインナップがある金融機関がおすすめです。
サポート体制も確認しましょう。特に投資初心者の方は、コールセンターの対応時間や、オンラインセミナーの有無、ウェブサイトの分かりやすさなどをチェックしておくと安心です。
代表的なネット証券としては、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券などがあります。これらはいずれも運営管理手数料が無料で、商品数も豊富です。
iDeCoの加入手続きは、以下の流れで進めます。
手続きは比較的シンプルですが、審査に1~2ヶ月かかるため、早めに申し込むことをおすすめします。また、掛金の引き落としは口座振替のみで、クレジットカード払いはできません。
iDeCoの掛金は、確定申告で「小規模企業共済等掛金控除」として申告することで、所得控除を受けられます。記入方法は以下の通りです。
freeeやマネーフォワードなどの確定申告ソフトを使っている場合は、「小規模企業共済等掛金控除」の項目に金額を入力するだけで、自動的に計算されます。
小規模企業共済とiDeCoの両方に加入している場合は、それぞれの証明書を添付し、合計額を記入します。
iDeCoで最も重要なのが、運用商品の選び方です。投資初心者の方は、以下の3つのステップで選びましょう。
個人事業主がiDeCoを活用することで、掛金上限が月6.8万円と大きく、3つの税制優遇を受けながら老後資金を準備できます。
年収500万円の方が月3万円を拠出すれば、年間で約7.2万円の節税効果があり、30年間で約216万円もの節税が可能です。
iDeCoは60歳まで引き出せないというデメリットがありますが、これが逆に老後資金を確実に貯める強制力となります。小規模企業共済との併用も可能で、両方を活用すれば年間165.6万円もの所得控除を受けられます。
年収や年齢、事業の状況に応じて、最適な掛金額を設定しましょう。年収300万円台なら月1~2万円、年収500万円台なら月3~4万円、年収700万円以上なら月5~6.8万円が目安です。事業の浮き沈みに応じて掛金を柔軟に調整することも大切です。
金融機関を選ぶ際は、手数料、商品数、サポート体制を比較し、ネット証券の運営管理手数料無料の金融機関を選ぶことをおすすめします。確定申告では、小規模企業共済等掛金控除として申告し、節税効果を確実に受け取りましょう。
なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。詳しくは各金融機関やiDeCo公式サイトにご確認ください。
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