NISAはデメリットしかない?本当のリスクと始めるべき人の特徴

NISAはデメリットしかない?本当のリスクと始めるべき人の特徴

「NISAはデメリットしかない」という声を聞いて、投資を始めることに不安を感じていませんか。

確かにNISAには損益通算ができない、元本割れのリスクがあるなど、いくつかのデメリットが存在します。しかし、「デメリットしかない」という表現は極端であり、実際には運用益が非課税になるなど大きなメリットもあります。

この記事では、NISAの本当のデメリットを正確に解説し、どんな人が始めるべきか、どんな人は避けるべきかを具体的に示します。デメリットを正しく理解した上で、あなた自身に合った判断ができるようになります。

この記事の要約
  • NISAには損益通算ができないなどのデメリットがあるが、「デメリットしかない」というのは極端な表現
  • 運用益が非課税になるメリットは大きく、長期・積立・分散投資でデメリットを最小化できる
  • 余裕資金がなく短期で利益を出したい人には向かないが、長期的に資産を増やしたい人には有効
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

NISAにデメリットしかないと言われる理由

なぜ「NISAはデメリットしかない」という極端な表現が広まっているのでしょうか。その背景には、投資に対する心理的な不安と、制度の複雑さによる誤解があります。

損をした時の不安が強調されやすい

投資において、利益よりも損失の方が心理的なインパクトが大きいという特性があります。行動経済学では、人は同じ金額でも利益を得る喜びよりも損失を被る苦痛の方を約2倍強く感じるとされています。

NISAでは元本割れのリスクがあるため、「損をするかもしれない」という不安が先行し、デメリットばかりが強調されやすい傾向があります。特に投資未経験者にとっては、非課税というメリットよりも「お金が減るかもしれない」という恐怖の方が印象に残りやすいのです。

また、SNSやインターネット上では、成功体験よりも失敗体験の方が共有されやすく、「NISAで損をした」という声が目立ちやすいという側面もあります。実際には利益を得ている人も多いのですが、そうした声はあまり表に出てこないため、ネガティブな情報ばかりが拡散されてしまいます。

制度の複雑さが誤解を生んでいる

NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類があり、それぞれに年間投資枠や非課税保有限度額などの制限があります。さらに、損益通算ができない、損失の繰越控除ができないといった税制上の特徴もあり、制度全体が複雑に感じられます。

この複雑さが、「よく分からないから危険だ」「デメリットばかりで使いにくい」という誤解を生む原因になっています。特に「損益通算ができない」という説明を聞いて、「それなら課税口座の方が有利なのでは」と誤解する人も少なくありません。

しかし実際には、損益通算が必要になるのは複数の口座で取引をしていて、一方で損失が出ている場合に限られます。NISA口座だけで長期投資をする場合、損益通算の問題はほとんど関係ありません。制度の一部だけを見て全体を判断してしまうことで、「デメリットしかない」という極端な結論に至ってしまうのです。

実際にはメリットも大きい

「デメリットしかない」という表現は、NISAの一面だけを見た偏った評価です。実際には、運用益が非課税になるという大きなメリットがあり、長期的に見れば課税口座よりも有利になる可能性が高いのです。

例えば、年間120万円を20年間積み立てて年率5%で運用した場合、運用益は約1,700万円になります。課税口座であれば、この運用益に対して約20%の税金がかかり、約340万円が税金として引かれます。しかしNISA口座なら、この340万円が非課税となり、そのまま受け取ることができます。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

また、NISAは少額から始められる、確定申告が不要、非課税保有期間が無期限など、投資初心者にとって使いやすい特徴も多くあります。デメリットだけに注目するのではなく、メリットとデメリットを両方理解した上で、自分に合っているかどうかを判断することが大切です。

「デメリットしかない」という極端な表現が広まっている背景には、損失への心理的な恐怖と制度の複雑さによる誤解があります。しかし冷静に見れば、NISAには大きなメリットもあり、適切に活用すれば効果的な資産形成の手段となります。

NISAの7つのデメリット|正しく理解しよう

NISAには確かにデメリットが存在します。ここでは、よく指摘される7つのデメリットを正確に解説します。これらを理解した上で、自分にとって問題になるかどうかを判断しましょう。

元本割れのリスクがある

NISAで投資できる商品は、株式や投資信託などの値動きのある金融商品です。そのため、購入時よりも価格が下がり、元本割れする可能性があります。これは預金とは異なり、投資である以上避けられないリスクです。

特に短期間で見ると、株式市場は大きく変動することがあります。リーマンショックやコロナショックのような金融危機が起これば、一時的に大きな損失を抱える可能性もあります。NISA口座で購入した商品も例外ではなく、市場の影響を受けて価格が下落します。

ただし、長期的に見れば株式市場は成長する傾向があります。金融庁の資料によると、積立投資を20年間継続した場合、元本割れする確率は大幅に低下するというデータがあります。短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けることが、元本割れのリスクを抑える重要なポイントです。

金融庁:投資の基本

損益通算ができない

NISA口座で発生した損失は、他の課税口座(特定口座や一般口座)で発生した利益と相殺する「損益通算」ができません。これは、NISA口座の利益が非課税である代わりに、損失も税務上は「なかったもの」として扱われるためです。

例えば、課税口座で50万円の利益が出て、NISA口座で30万円の損失が出た場合を考えてみましょう。課税口座同士であれば損益通算ができ、課税対象となるのは差し引き20万円の利益だけです。しかしNISA口座の損失は損益通算できないため、課税口座の50万円の利益全額に対して税金がかかります。

ただし、これが問題になるのは、複数の口座で取引をしていて、かつ一方で損失が出ている場合に限られます。NISA口座だけで投資をしている場合や、長期的に利益が出ている場合には、損益通算ができないことはほとんど問題になりません。

損失の繰越控除ができない

課税口座で発生した損失は、確定申告をすることで最大3年間繰り越すことができ、翌年以降の利益と相殺できます。これを「繰越控除」といいます。しかし、NISA口座で発生した損失は、この繰越控除の対象にもなりません。

例えば、ある年に課税口座で100万円の損失が出た場合、確定申告をすれば翌年以降3年間、この損失を繰り越せます。翌年に50万円の利益が出ても、前年の損失と相殺できるため税金はかかりません。しかしNISA口座の損失は繰り越せないため、このような税務上のメリットを受けることができません。

これも損益通算と同様に、NISA口座だけで長期投資をしている場合には、あまり問題にならないデメリットです。複数の口座で頻繁に売買を繰り返す投資スタイルの人にとっては不利になる可能性がありますが、長期・積立・分散投資を基本とする場合には、大きな影響はありません。

NISA口座は1人1口座まで

NISA口座は、1人につき1つの金融機関でしか開設できません。複数の証券会社でNISA口座を持つことはできないため、証券会社選びは慎重に行う必要があります。

もし開設後に別の証券会社に変更したい場合、年単位での変更手続きが必要になります。その年にすでにNISA口座で買付をしている場合は、翌年まで変更できません。また、変更前の証券会社で購入した商品は、変更後の証券会社に移管することができず、変更前の口座でそのまま保有し続けることになります。

そのため、NISA口座を開設する際には、取扱商品の種類、手数料、使いやすさなどを総合的に比較し、長く使い続けられる証券会社を選ぶことが重要です。途中で変更すると手続きが煩雑になるため、最初の選択が大切になります。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

年間投資枠に上限がある

NISAには年間投資枠の上限が設定されています。2024年からの新NISA制度では、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円で、合計360万円が年間の投資上限です。この枠を超えて投資することはできません。

まとまった資金を一度に投資したい人や、年間360万円を超える金額を投資したい人にとっては、この上限が制約になる可能性があります。特に高額な資産を運用したい投資経験者にとっては、物足りなく感じるかもしれません。

ただし、非課税保有限度額は1,800万円と大きく設定されており、長期的に見れば十分な投資枠が確保されています。また、売却すれば翌年以降に非課税枠が復活するため、長期投資を前提とすれば、年間投資枠の制約はそれほど大きな問題にはなりません。

投資できる商品に制限がある

NISA口座では、すべての金融商品に投資できるわけではありません。つみたて投資枠では、金融庁が定めた基準を満たす投資信託やETFのみが対象となります。成長投資枠でも、上場株式や投資信託などに限られ、デリバティブ取引や信用取引の一部は対象外です。

特につみたて投資枠では、手数料が低く、分散投資がされているなど、長期・積立・分散投資に適した商品に限定されています。これは投資初心者を保護するための措置ですが、投資経験者にとっては選択肢が限られると感じるかもしれません。

一方で、この制限は「安全性の高い商品に絞られている」とも言えます。金融庁が認めた商品だけが対象となるため、悪質な商品を避けられるというメリットもあります。投資初心者にとっては、むしろ商品選びの負担が軽減されると考えることもできます。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

含み損のある状態での売却に注意が必要

NISA口座で購入した商品を含み損がある状態で売却すると、その分の非課税枠が無駄になってしまいます。例えば、100万円で購入した商品が80万円に値下がりした時点で売却すると、20万円の損失が出るだけでなく、100万円分の非課税枠も消費されてしまいます。

課税口座であれば、損失を確定させることで損益通算や繰越控除に活用できますが、NISA口座ではそのメリットもありません。そのため、一時的な価格下落で慌てて売却してしまうと、二重の損失を被ることになります。

これを避けるためには、短期的な値動きに動揺せず、長期的な視点で保有を続けることが重要です。特に積立投資を行っている場合、価格が下がった時こそ多くの口数を購入できるチャンスでもあります。含み損が出ても慌てて売却せず、長期保有を前提とした投資戦略を持つことが、このデメリットを最小化するポイントです。

損益通算できないことの実際の影響|具体例で解説

「損益通算ができない」というデメリットは、抽象的に説明されることが多く、実際にどれくらい不利になるのか分かりにくいという声があります。ここでは、具体的な金額を使ったシミュレーションで、損益通算の有無による違いを明確に示します。

課税口座なら損益通算できる場合

まず、課税口座(特定口座)で取引をしている場合を考えてみましょう。Aさんは2つの特定口座を持っており、証券会社Xで50万円の利益、証券会社Yで30万円の損失が出たとします。

課税口座では、複数の口座間で損益通算ができるため、確定申告をすることで利益と損失を相殺できます。この場合、課税対象となるのは差し引き20万円(50万円 – 30万円)の利益だけです。税率20.315%を適用すると、税金は約4万円となります。

もし損益通算をしなければ、証券会社Xの50万円の利益に対してそのまま税金がかかり、約10万円の税金を支払うことになります。しかし損益通算をすることで、税金を約6万円減らすことができるのです。これが損益通算のメリットです。

NISA口座だと損益通算できない場合

次に、Bさんの例を見てみましょう。Bさんは課税口座で50万円の利益が出ており、NISA口座で30万円の損失が出ています。

NISA口座の損失は損益通算の対象にならないため、課税口座の50万円の利益全額に対して税金がかかります。税率20.315%を適用すると、税金は約10万円となります。NISA口座で30万円の損失が出ているにもかかわらず、この損失を税務上活用することができません。

もしBさんがNISA口座ではなく、もう1つの課税口座で取引をしていれば、Aさんと同様に損益通算ができ、税金を約4万円に抑えることができました。つまり、損益通算ができないことで、約6万円の税務上の不利益が生じたことになります。

実際の損失額の違いをシミュレーション

以下の表で、課税口座とNISA口座の違いを比較してみましょう。

項目 課税口座のみ(損益通算あり) 課税口座+NISA口座(損益通算なし)
口座Aの利益 50万円 50万円
口座Bの損失 ▲30万円 ▲30万円(NISA口座)
課税対象額 20万円(50万円 – 30万円) 50万円(損益通算不可)
税金(20.315%) 約4万円 約10万円
手元に残る金額 16万円(20万円 – 4万円) 10万円(20万円 – 10万円)
税務上の不利益 なし 約6万円

このシミュレーションから分かるように、損益通算ができないことで、約6万円の税務上の不利益が生じる可能性があります。ただし、これはあくまで「複数の口座で取引をしていて、一方で損失が出ている場合」に限られます。

重要なのは、NISA口座だけで長期投資をしている場合や、NISA口座で利益が出ている場合には、この問題はほとんど関係ないということです。損益通算のデメリットが実際に影響するのは、かなり限定的なケースだと言えます。むしろ、NISA口座で利益が出ていれば、その利益が非課税になるメリットの方がはるかに大きいのです。

NISAをやめた方がいい人の特徴5つ

NISAは多くの人にとって有効な制度ですが、すべての人に向いているわけではありません。ここでは、NISAを始めない方がいい人の特徴を5つ挙げます。自分に当てはまるかどうかチェックしてみましょう。

余裕資金がない人

投資は必ず余裕資金で行うことが鉄則です。生活費や近い将来に使う予定のあるお金を投資に回してしまうと、急な出費が必要になった時に困ることになります。特に、投資商品は価格が変動するため、必要な時に元本割れしている可能性もあります。

目安としては、生活費の3〜6ヶ月分を預金として確保した上で、それでも余るお金がある場合に初めて投資を検討すべきです。毎月の収支がギリギリで貯金もほとんどない状態では、投資を始めるタイミングではありません。

また、数年以内に使う予定のあるお金(住宅購入の頭金、子どもの教育資金など)も、投資には向きません。このようなお金は元本割れのリスクを避け、預金や個人向け国債など安全性の高い方法で保管しておくべきです。余裕資金がない状態でNISAを始めると、かえって生活を圧迫してしまう危険があります。

短期間で利益を出したい人

NISAは長期投資を前提とした制度です。短期間で大きな利益を出したいと考えている人には向いていません。株式市場は短期的には大きく変動するため、数ヶ月や1年程度の短期間では、利益が出るどころか損失を抱える可能性が高くなります。

また、短期売買を繰り返すと、NISA口座の非課税枠を効率的に使えません。売却すると非課税枠が復活するのは翌年以降になるため、頻繁に売買を繰り返すスタイルには適していないのです。

短期間で利益を出したい人は、NISAではなく、課税口座でのデイトレードや短期売買を検討する方が合理的です。ただし、短期売買は高度な知識と経験が必要であり、初心者にはリスクが高いことを理解しておく必要があります。

元本割れに耐えられない人

投資には必ず元本割れのリスクが伴います。一時的に購入価格を下回ることは、長期投資をしていれば何度も経験することです。このような価格変動に精神的に耐えられない人は、NISAを始めるべきではありません。

「少しでも損をするのが怖い」「資産が減るのを見るのが耐えられない」という人は、投資よりも預金の方が向いています。無理に投資を始めても、価格が下がるたびに不安になり、結局は損失が出ている時に売却してしまう可能性が高いからです。

元本割れのリスクを受け入れられるかどうかは、投資を始める前に必ず自問自答すべき重要なポイントです。リスク許容度は人それぞれ異なるため、自分の性格や価値観に合った資産形成の方法を選ぶことが大切です。

頻繁に売買したい人

NISAは「買ったら長期保有」を基本とする制度です。頻繁に売買を繰り返したい人には、NISA口座は向いていません。売却すると非課税枠が使われてしまい、復活するのは翌年以降になるため、短期売買には不向きなのです。

また、NISA口座では信用取引の一部やデリバティブ取引ができないため、高度な売買戦略を実行することもできません。テクニカル分析を駆使して頻繁に売買したい人や、レバレッジをかけた取引をしたい人は、課税口座を使う方が適しています。

ただし、頻繁な売買は取引コストがかさむだけでなく、税金も多くかかります。投資の世界では「売買を繰り返すほど損をする」というデータもあるため、頻繁な売買自体があまり推奨されない投資スタイルであることも知っておくべきです。

投資の勉強をする時間がない人

投資を始めるには、最低限の知識が必要です。投資信託の仕組み、リスクとリターンの関係、分散投資の重要性など、基本的なことを理解せずに始めると、失敗する可能性が高くなります。

「とりあえず始めてみよう」「周りがやっているから自分も」という安易な気持ちで始めると、商品選びを間違えたり、価格が下がった時にパニックになって売却してしまったりする危険があります。投資の基礎を学ぶ時間が取れない人は、まずは勉強してから始めるべきです。

ただし、つみたて投資枠で金融庁が認めた投資信託を積み立てるだけなら、それほど高度な知識は必要ありません。最低限の基礎知識を身につけた上で、シンプルな積立投資から始めるという方法もあります。完璧に理解してから始める必要はありませんが、「何も知らないまま始める」のは避けるべきです。

NISAを始めた方がいい人の特徴5つ

一方で、NISAが向いている人の特徴もあります。以下の5つに当てはまる人は、NISAを積極的に活用することで、効果的な資産形成ができる可能性が高いでしょう。

長期的に資産を増やしたい人

NISAは長期投資に最適な制度です。10年、20年といった長期的な視点で資産を増やしたいと考えている人には、非常に有効です。長期投資では、複利効果により資産が雪だるま式に増えていく可能性があり、その利益がすべて非課税になるメリットは非常に大きいのです。

例えば、毎月3万円を20年間積み立て、年率5%で運用できた場合、元本720万円が約1,230万円になります。運用益の約510万円に対して、課税口座なら約103万円の税金がかかりますが、NISA口座ならこれが非課税になります。長期になればなるほど、この税制優遇のメリットは大きくなります。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

老後資金の準備や子どもの教育資金の準備など、長期的な目標がある人にとって、NISAは非常に強力な味方になります。短期的な値動きに惑わされず、長期的な視点で資産形成をしたい人には、NISAが最適です。

月1万円以上の余裕資金がある人

毎月1万円以上の余裕資金がある人は、つみたて投資枠を活用した積立投資を始めることができます。少額から始められるのがNISAの大きなメリットであり、無理のない金額で長期投資を続けることが可能です。

月1万円の積立でも、20年間続ければ元本は240万円になります。これを年率5%で運用できれば、約410万円まで増える計算です。「月1万円では意味がない」と思うかもしれませんが、長期的に見れば大きな資産になる可能性があります。

また、収入が増えたら積立額を増やすこともできます。最初は月1万円から始めて、徐々に金額を増やしていくという柔軟な運用も可能です。大切なのは、無理のない金額で継続することです。月1万円以上の余裕資金がある人は、今すぐNISAを始める価値があります。

税制優遇を活用したい人

投資で得た利益には通常20.315%の税金がかかりますが、NISA口座ならこれが非課税になります。この税制優遇を最大限活用したい人にとって、NISAは必須の制度です。

特に、ある程度まとまった金額を投資する人ほど、税制優遇のメリットは大きくなります。例えば、年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)をフル活用し、これを年率5%で運用した場合、10年後の運用益は約1,200万円になります。課税口座ならこの利益に対して約240万円の税金がかかりますが、NISA口座なら非課税です。

また、確定申告が不要なのも大きなメリットです。課税口座で複数の証券会社を使っている場合、損益通算をするためには確定申告が必要ですが、NISA口座なら自動的に非課税となり、手続きの手間がかかりません。税制優遇を賢く活用して、効率的に資産を増やしたい人には、NISAが最適です。

分散投資でリスクを抑えたい人

投資のリスクを抑えるには、分散投資が有効です。NISAのつみたて投資枠では、複数の国や地域、さまざまな企業に分散投資された投資信託が中心となっており、初心者でも簡単に分散投資ができます。

例えば、全世界株式インデックスファンドを1本購入するだけで、世界中の数千社の企業に分散投資ができます。個別株を自分で選んで分散投資をしようとすると、多くの資金と知識が必要ですが、投資信託なら少額から世界分散投資が可能です。

また、積立投資を行うことで、時間的な分散も実現できます。毎月一定額を積み立てることで、価格が高い時には少なく、安い時には多く購入することになり、平均購入単価を抑える効果があります。これを「ドルコスト平均法」といいます。分散投資でリスクを抑えながら、着実に資産を増やしたい人には、NISAが非常に適しています。

金融庁:投資の基本

少額から投資を始めたい人

NISAは100円から投資を始めることができます。「投資は大金が必要」というイメージを持っている人も多いですが、実際には非常に少額から始められるのです。特に投資初心者にとって、少額から始められることは大きなメリットです。

最初は月1,000円や3,000円といった少額から始めて、投資に慣れてきたら徐々に金額を増やしていくという方法も可能です。いきなり大きな金額を投資するのは不安でも、少額なら心理的なハードルも低く、気軽に始めることができます。

また、少額でも長期間続けることで、複利効果により大きな資産になる可能性があります。「少額だから意味がない」と考えるのではなく、「少額でも始めることが大切」と考えましょう。投資初心者で、まずは少額から始めてみたいという人には、NISAが最適な選択肢です。

NISAのメリット|デメリットを上回る理由

ここまでデメリットを詳しく見てきましたが、NISAにはそれを上回る大きなメリットがあります。なぜ多くの人がNISAを活用しているのか、その理由を解説します。

運用益が非課税になる

NISAの最大のメリットは、運用益が非課税になることです。通常、株式や投資信託で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座ならこれが一切かかりません。この税制優遇は、長期的に見ると非常に大きな差を生みます。

例えば、100万円を投資して150万円になった場合、利益は50万円です。課税口座なら、この50万円に対して約10万円の税金がかかり、手元に残るのは40万円です。しかしNISA口座なら、50万円全額が手元に残ります。この10万円の差は、決して小さくありません。

さらに、この利益を再投資することで複利効果が働き、資産はさらに大きく成長します。税金がかからない分、再投資できる金額が増えるため、長期的には課税口座との差は雪だるま式に拡大していきます。運用益が非課税になるメリットは、NISAの最も強力な武器です。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

非課税保有期間が無期限

2024年からの新NISA制度では、非課税保有期間が無期限になりました。旧NISA制度では期間に制限がありましたが、新制度ではいつまでも非課税で保有し続けることができます。これは、長期投資を前提とする人にとって非常に大きなメリットです。

期間の制限がないため、「いつまでに売却しなければならない」というプレッシャーがありません。市場が好調な時に売却してもいいですし、そのまま保有し続けることもできます。自分のライフプランに合わせて、柔軟に運用できるのです。

また、相続時にも非課税枠が引き継がれるため、世代を超えた資産形成にも活用できます。無期限で非課税保有できるという特徴は、旧制度から大きく改善されたポイントであり、NISAの魅力を一層高めています。

つみたて投資枠と成長投資枠を併用できる

新NISA制度では、つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用できます。これにより、年間最大360万円まで投資でき、投資戦略の幅が大きく広がりました。

つみたて投資枠では、長期・積立・分散投資に適した投資信託を積み立てることができます。一方、成長投資枠では、個別株やETFなど、より幅広い商品に投資できます。両方を組み合わせることで、安定した積立投資と、個別株への投資を同時に行うことが可能です。

例えば、つみたて投資枠で全世界株式インデックスファンドを毎月積み立てながら、成長投資枠で気になる個別株を購入するという使い方ができます。投資スタイルに合わせて柔軟に活用できるのが、新NISA制度の大きな強みです。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

少額から始められて確定申告も不要

NISAは100円という少額から投資を始めることができ、投資初心者にとって非常にハードルが低い制度です。また、NISA口座で得た利益は自動的に非課税となるため、確定申告の必要もありません。

課税口座で複数の証券会社を使っている場合、損益通算をするためには確定申告が必要ですが、NISA口座ならその手間がかかりません。特に会社員で確定申告に慣れていない人にとって、この手軽さは大きなメリットです。

また、つみたて投資枠では金融庁が認めた投資信託のみが対象となるため、商品選びで失敗するリスクも低くなっています。手数料が低く、分散投資がされている商品に絞られているため、初心者でも安心して始められます。少額から始められて、手続きも簡単、しかも税制優遇が受けられるという三拍子揃った制度が、NISAなのです。

デメリットを最小化する3つの方法

NISAのデメリットは確かに存在しますが、適切な方法で投資を行えば、そのデメリットを最小化することができます。ここでは、具体的な3つの方法を紹介します。

長期・積立・分散投資を実践する

NISAのデメリットを最小化する最も効果的な方法は、「長期・積立・分散投資」を実践することです。この3つの原則を守ることで、元本割れのリスクを大幅に抑えることができます。

長期投資
10年、20年といった長い期間で投資を続けることです。短期的には株式市場は大きく変動しますが、長期的に見れば成長する傾向があります。金融庁のデータによると、積立投資を20年間続けた場合、元本割れする確率は大幅に低下します。一時的な価格下落に動揺せず、長期的な視点で保有し続けることが重要です。
積立投資
毎月一定額を定期的に投資することです。これにより、価格が高い時には少なく、安い時には多く購入することになり、平均購入単価を抑える効果があります。一度に大きな金額を投資するよりも、時間を分散して投資する方がリスクを抑えられます。
分散投資
複数の国や地域、さまざまな企業に投資を分散させることです。1つの企業や国に集中投資すると、その企業や国に問題が起きた時に大きな損失を被りますが、分散投資をしていればリスクを分散できます。全世界株式インデックスファンドなど、1本で世界中に分散投資できる商品を選ぶことで、簡単に分散投資が実現できます。

金融庁:投資の基本

つみたて投資枠を優先的に活用する

投資初心者や、リスクを抑えたい人は、つみたて投資枠を優先的に活用することをおすすめします。つみたて投資枠で購入できる商品は、金融庁が定めた基準を満たす投資信託に限られており、手数料が低く、長期投資に適した商品が厳選されています。

成長投資枠では個別株にも投資できますが、個別株は値動きが大きく、銘柄選びにも知識が必要です。一方、つみたて投資枠の投資信託は、プロが運用し、多くの企業に分散投資されているため、初心者でも安心して投資できます。

まずはつみたて投資枠で積立投資を始め、投資に慣れてきたら成長投資枠も活用するという段階的なアプローチが、リスクを抑えながら資産を増やす賢い方法です。最初から成長投資枠で個別株に投資するよりも、つみたて投資枠で基礎を固めることが、長期的な成功につながります。

含み損が出ても慌てて売却しない

投資をしていれば、一時的に含み損を抱えることは避けられません。しかし、短期的な価格下落で慌てて売却してしまうと、損失を確定させてしまうだけでなく、その後の回復局面を逃すことになります。

株式市場は短期的には大きく変動しますが、長期的には成長する傾向があります。リーマンショックやコロナショックのような大きな下落があっても、その後市場は回復し、新たな高値を更新してきました。一時的な下落で売却してしまうと、この回復の恩恵を受けられません。

むしろ、価格が下がった時こそ、多くの口数を購入できるチャンスです。積立投資を続けていれば、価格が安い時に多く購入でき、平均購入単価を下げることができます。含み損が出ても慌てず、長期的な視点で保有を続けることが、NISAのデメリットを最小化する重要なポイントです。

NISAとiDeCoの使い分け|どちらを選ぶべき?

資産形成を考える際、NISAと並んでよく比較されるのがiDeCo(個人型確定拠出年金)です。どちらも税制優遇がある制度ですが、特徴が異なります。ここでは、両者の違いと使い分けのポイントを解説します。

NISAとiDeCoの違い

NISAとiDeCoは、どちらも税制優遇がある資産形成制度ですが、目的や制度設計が大きく異なります。最も大きな違いは、iDeCoは「老後資金のための年金制度」であり、原則60歳まで引き出せないという点です。

NISAは、運用益が非課税になりますが、掛金の所得控除はありません。一方、iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税、受取時も一定額まで非課税となる「三重の税制優遇」があります。ただし、60歳まで引き出せないという大きな制約があります。

また、iDeCoには加入資格や掛金の上限があり、職業によって上限額が異なります。自営業者は月額6.8万円、会社員(企業年金なし)は月額2.3万円、公務員は月額1.2万円などと決められています。NISAは年齢や職業に関係なく、年間360万円まで投資できます。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

NISAが向いているケース

NISAが向いているのは、以下のようなケースです。

60歳より前に資金を使う可能性がある人
住宅購入の頭金、子どもの教育資金、急な出費への備えなど、老後以前に資金が必要になる可能性がある場合は、いつでも引き出せるNISAが適しています。
投資額を柔軟に調整したい人
iDeCoは一度設定した掛金を変更するのに手続きが必要ですが、NISAは自由に投資額を変更できます。収入が不安定な人や、ライフイベントに応じて投資額を調整したい人には、NISAが向いています。
個別株やETFに投資したい人
iDeCoは投資信託と定期預金に限られますが、NISAの成長投資枠では個別株やETFにも投資できます。自分で銘柄を選んで投資したい人には、NISAの方が選択肢が広いのです。

iDeCoが向いているケース

一方、iDeCoが向いているのは、以下のようなケースです。

老後資金の準備を最優先したい人
60歳まで引き出せないという制約は、裏を返せば「確実に老後資金を貯められる」というメリットでもあります。途中で使ってしまう心配がないため、老後資金の準備には最適です。
所得税・住民税の負担が大きい人
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となるため、課税所得が高い人ほど節税効果が大きくなります。例えば、年収600万円の人が月額2万円をiDeCoに拠出すると、年間約4.8万円の税金が軽減されます。この節税効果は、NISAにはないiDeCo独自のメリットです。
NISAとiDeCoを併用できる人
iDeCoで老後資金を確実に準備しながら、NISAで柔軟に使える資産を形成するという使い分けが理想的です。両方の制度を活用することで、税制優遇を最大限に受けながら、バランスの取れた資産形成ができます。
項目 NISA iDeCo
主な目的 資産形成全般 老後資金の準備
年間投資上限 360万円(つみたて120万円+成長240万円) 14.4万円〜81.6万円(職業により異なる)
引き出し いつでも可能 原則60歳まで不可
税制優遇 運用益が非課税 掛金が所得控除+運用益非課税+受取時も一定額まで非課税
投資対象 株式、投資信託、ETFなど 投資信託、定期預金
手数料 証券会社により異なる(多くは無料) 加入時・運用時に手数料あり

まとめ

「NISAはデメリットしかない」という表現は極端であり、実際にはメリットとデメリットの両方が存在します。損益通算ができない、元本割れのリスクがあるといったデメリットは確かにありますが、運用益が非課税になる、非課税保有期間が無期限、少額から始められるといった大きなメリットもあります。

重要なのは、デメリットを正しく理解した上で、自分に合っているかどうかを判断することです。余裕資金がなく短期で利益を出したい人には向きませんが、長期的に資産を増やしたい人、月1万円以上の余裕資金がある人、税制優遇を活用したい人には非常に有効な制度です。

また、長期・積立・分散投資を実践し、つみたて投資枠を優先的に活用することで、デメリットを最小化できます。含み損が出ても慌てて売却せず、長期的な視点で保有を続けることが成功のポイントです。

NISAとiDeCoを使い分けることで、より効果的な資産形成も可能です。自分のライフプランや投資目的に合わせて、最適な方法を選びましょう。なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。詳しくは金融庁のNISA特設ウェブサイトや各証券会社にご確認ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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