社会保険の加入は義務?加入対象者と種類について解説

社会保険の加入は義務?加入対象者と種類について解説

求人広告などを見ていると「各種保険完備」という表現をよく見かけますよね。社会保険は法人化した場合、たとえ社長ひとりの会社でも原則として加入が必須です。

この記事では、経営者が知っておくべき社会保険の基礎知識や社会保険に加入するための条件、各種社会保険の加入の義務について解説します。

会社設立時には必ず向き合うべき内容ですので、しっかりポイントを抑えましょう!

◆社会保険とは

社会保険とは、健康保険、厚生年金、雇用保険、介護保険、労災保険などの国や公共団体が管理や運営する社会保証制度で、従業員が雇用されて働くために必要な公的な保険の総省のことを示します。

個人事業主で従業員が自分1人であっても、必ず社会保険に加入しなければなりません。次項より加入義務について詳しく見ていきましょう。

◆社会保険加入は義務?

個人事業主の方で、自分1人だから社会保険に加入したくないと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、社会保険の条件基準を満たす事業主は必ず加入しなければなりません。

社会保険の加入条件を満たしているのにも関わらず社会保険に加入していなかった場合、遡って最大2年分の請求が届き、まとめて保険料を払うことになるため事業主の負担も大きくなります。

また、社会保険の加入条件を満たしているのに加入していない事業所で、正当な理由がなく以下に該当する場合には6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金を課されます。

詳しくは、健康保険法 第208条を確認しましょう。

  • 社会保険加入の義務がある条件や事業内容

加入条件は下記のとおりです。

加入条件

・国または地方の公共団体

・法人の事務所

・一定の業種で常時5人以上を雇用している個人事業所

(※)一定の業種・・・製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告工業、教育研究調査業、医療保険業、通信法同業など

参考:厚生労働省「人を雇うときのルール(4)社会保険」

上記の職種の事業所以外は加入の義務はないのかというと、そうではありません。厚生年金保険等の適用事業所となることに従業員の半数以上が同意している場合、事業主は厚生労働省に任意適用事業所として社会保険の加入を申請することができます。

厚生労働省が申請を認めると任意適用事業所となり、該当する従業員全員が社会保険に加入して被保険者になります。

また、健康保険・厚生年金保険のいずれか片方のみの加入も可能となっています。

◆社会保険に加入できる従業員の条件

社会保険の加入が義務付けられている会社であっても、従業員の働き方などに加入できる場合とできない場合があります。

正社員であれば、基本的に社会保険加入は必須となりますが、パート・アルバイトの従業員は加入の条件を満たさない場合もあります。パート・アルバイトの従業員を雇用する場合は、パート・アルバイトの加入条件についてもしっかり把握しておきましょう。

【パート・アルバイト従業員の社会保険の加入条件】
・1週間あたりの決まった労働時間が20時間位以上
・1カ月あたりの決まった賃金が88,000円以上
・雇用期間の見込みが1年以上
・学生ではない
・勤務先が「従業員数501人以上の会社(特定適用事業所)」または「従業員数500人以下で社会保険加入の労使合意がされている」
※2021年3月現在。

参照:政府広報オンライン「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がっています」

パート、アルバイトの社会保険の加入については2022年10月から1年以上の雇用から「2ヶ月を超える雇用が見込まれること」さらに、従業員数も従来の101人以上の企業に変更になり、2024年10月からは51人以上の企業へと変更されます。

◆社会保険の種類と内容

社会保険の種類、内容は以下のものがあります。

  • 健康保険

そもそも健康保険とは、業務災害以外の疾病に対して保険給付を行う制度です。
病気、ケガ、出産にや死亡に対して保険金を給付し、病気やケガから回復して生活を安定させるための社会保険制度です。本人以外にも、本人が扶養している家族も一緒に加入することができます

健康保険に加入すると健康保険証が発行され、診察や治療、入院など、病院の窓口で患者が支払う医療費の負担額は3割となります。

また、健康保険に加入をしていると病気やケガなどで長期にわたって療養のために仕事を休まざるを得なくなった際に、最長で1年6か月、標準日額報酬の3分の2一定額保証してくれる傷病手当が利用できます。

その支払い条件は4項目あります。

・仕事に就くことができないこと

・業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること

・連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

・休業した期間について給与の支払いがないこと

  • 厚生年金

厚生年金とは、将来の病気、ケガ、定年退職により収入が得られなくなった時のリスクに備えるためのもので、厚生年金料は毎月、給料から天引きされるかたちで支払います。

原則として企業や役所などに勤めている会社員や公務員が国民年金と合わせて加入する公的年金制度で、70歳未満までなら加入することができ、老後の年金を受けとる時には国民年金に厚生年金支払い分を上乗せした老後年金の給付を受けられます。

厚生年金は、被保険者の病気、障害、死亡により働くことが出来なくなった場合には家族の生活安定のために支払われます。

  • 介護保険

介護保険とは、65歳以上の従業員が原因を問わず要介護や要支援になったとき、または40歳以上で加齢による特定疾患により要介護、要支援の状態になった時に給付が受けられる保険です。40歳以上の人が加入対象となります。

介護保険は、厚生労働省が定めた16疾患が原因で要介護、要支援状態になった時にのみ利用することができます。

1.         がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)※

2.         関節リウマチ※

3.         筋萎縮性側索硬化症

4.         後縦靱帯骨化症

5.         骨折を伴う骨粗鬆症

6.         初老期における認知症

7.         進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※

【パーキンソン病関連疾患】

8.         脊髄小脳変性症

9.         脊柱管狭窄症

10.     早老症

11.     多系統萎縮症※

12.     糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

13.     脳血管疾患

14.     閉塞性動脈硬化症

15.     慢性閉塞性肺疾患

16.     両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

(※印は平成18年4月に追加、見直しがなされたもの)

引用:厚生労働省「特定疾患の選定基準の考え方」

  • 雇用保険

雇用保険は、失業をして労働者が働けなくなった場合のために、生活を安定させ、再就職を支援して促進させることを目的としている保険で、保険料を事業主と従業員の両方が負担をします。

雇用保険加入の対象者は、企業で働く従業員となるため個人事業主や経営者は対象外となります。

雇用保険は、「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる労働者で、1週間の所定労働時間が20時間以上であること」が条件になっているため、該当しない労働条件の従業員は加入することができません。

  • 労災保険

健康保険が仕事中以外のことが原因で起こったケガや病気などに対し、労災保険は仕事中、または通勤途中に起きたケガや病気、死亡、後遺症に給付される保険制度です。

保険料は事業主が全額負担をし、法人・個人事業主のいずれの場合でも労働者を1人で雇用している全ての事業所の加入が義務付けられています。

◆従業員にとっての社会保険加入メリット

社会保険への加入は、従業員にとって働けない時の収入の確保や、病気やケガ、出産、死亡をした時の治療や家族への生活の保障に役立ちます。詳しく見ていきましょう。

  • メリットその1 保険料の負担が半分!!

健康保険、厚生年金保険、雇用保険は事業主と従業員が折半するために、半分の保険料負担で加入することができます。

  • メリットその2 3割の負担で、病気、ケガ、薬の処方も!

健康保険料は、通院、治療に関する医療費が3割負担です。高額な医療費が必要な場合には高額療養費制度が適用されます。

高額療養制度とは、1ヶ月に医療機関や薬局の窓口で支払う額が上限を超えた場合、その超えた額を支給する制度のことです。

上限額は、所得や年齢によって定められていて、いくつかの条件を満たせば負担を3割よりさらに軽減することも可能です。

<例>70歳以上・年収約370万円~770万円の場合(3割負担) 100万円の医療費で、窓口の負担(3割)が30万円かかる場合

高額療養費として支給 30万円-87,430円 = 212,570円

自己負担の上限額 80,100円+(100万円-267,000円)×1% = 87,430円

引用:厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ

  • メリットその3 働けなくなっても、給与補填あり!

傷病手当は、業務以外の理由による病気やケガで4日以上(連続する3日間を含む)働けなかった場合、給与の2/3が最長1年6ヶ月に渡って支給される手当です。

健康保険に加入をすると、傷病手当が受けられる資格が与えられます。

  • メリットその4 出産前後も給与保障!

健康保険に加入している被保険者が出産で休職中、出産日(出産が予定日より遅くなった場合は、出産予定日)前42日から出産翌日〜56日目までの範囲内で仕事を休んだ期間が対象となり、給与の支払いを受けられない場合に出産手当が支給されます。

◆社会保険加入に必要な手続きを確認

社会保険の加入に必要な手続きについて解説しておきますね。雇用後にすぐに手続きが必要になるので、しっかりと把握しておきましょう。

前述の通り、前提として社会保険は、原則、事業所単位で加入義務があります(強制適用事業所)。一方例外として、業種や雇用人数によって任意の加入が認められます(任意適用事業所)。

個人事業主で会社設立をする予定の人は、強制適用事業所の場合、会社設立から5日以内、任意適用事業所の場合、従業員の半数以上の同意が得られた後、日本年金機構へ申請書類を提出しなければなりません。

・健康保険・厚生年金保険新規適用届

・被保険者資格取得届

・被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)

・保険料口座振替納付(変更)申出書 ※扶養家族がいる場合

これらの書類は、年金事務所、または日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。

また、適用事業所が新しく従業員を雇用した場合は、採用日から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を日本年金機構へ提出する必要があります。

被保険者に被扶養者がいる場合や、追加・削除など変更があった場合は、「健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を事実発生から5日以内に日本年金機構へ提出しなければなりません。

まとめると下記の通りになります。

提出期限加入条件の発生から5日以内(強制加入の場合)
提出先事業所の実際の所在地を管轄する年金事務所または各都道府県の事務センター
提出方法郵送、持参、電子申請など

◆まとめ

社会保険は雇用主、従業員にかかわらず加入義務があることや、加入条件の発生からすぐに必要書類を提出する必要があることなどをご説明してきました。

経営者にとって、社会保険の仕組みを理解し事業を行うことはひとつの社会的責任と言えるでしょう。信頼される事業を行うために社会保険の加入を忘れずに行いましょう!

『会社設立のミチシルベ』では会社設立を検討されている方をサポートしています。東京・埼玉・千葉・横浜で会社設立を検討している方や、株式会社・合同会社設立時に使える補助金・助成金については『会社設立のミチシルベ』までお気軽にお問い合わせください!

・国または地方の公共団体
・法人の事業所
・一定の業種(※)で、常時5人以上を雇用している個人事業所

(※)一定の業種…製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告工業、教育研究調査業、医療保険業、通信法同業など

[1]国、地方公共団体または法人の事業所、あるいは[2]一定の業種(※)であり常時5人以上を雇用する個人事業所では強制適用となっており、適用事業所で働く労働者は加入者となります(パート、アルバイトでも、1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者の分の4分の3以上あれば加入させる必要があります)。また、保険料は、事業主と労働者が折半で負担します。

※一定の業種・・・製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告工業、教育研究調査業、医療保険業、通信法同業など

著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

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