雇用契約とは?業務委託契約との違いや雇用契約書の必要性を解説

雇用契約とは?業務委託契約との違いや雇用契約書の必要性を解説

働き方改革という言葉が浸透して久しい昨今、雇用の現場では労働者が雇用主に対して意見を言いやすい環境になりつつあると言えるでしょう。サービス残業に対しての苦情や申し入れなどは、その代表的な一例です。

自社の従業員が気持ちよく働けているとなれば、経営者側から見ても喜ばしい状況ですが、一方で労働者からの苦情をきっかけにトラブルに発展するケースも少なくありません。

そこで今回は、労働に関するトラブルを未然に防ぐために必要な雇用契約について解説します。雇用契約とはどのようなものか、労働契約との違いは何か、労働基準法に反しないためのルールなど、経営者として知っておきたい基本的なことについて解説します。

◆雇用契約と労働契約

●雇用契約とは
雇用契約とは、雇用する側である企業と雇用される側である労働者の間で結ばれる契約です。基本的に契約内容は、労働者が企業側に労働力を提供する対価として、企業側はその労働に対する賃金を支払うことを約束するものになっています。雇用契約を証明するものに雇用契約書がありますが、民法上では雇用契約は書面である必要はなく、口頭でも成立し、基本的には「時間」により賃金が支払われます。

●業務委託契約とは
一方で、業務委託契約とは自社で対応できない業務を他社に依頼するときに必要な契約です。基本的には「成果」によって報酬が支払われます。

◆雇用契約と業務委託契約の違い

上記でも示してきたように、雇用契約書は従業員と交わし、業務委託契約書は他社と交わす形になります。
雇用契約を結んだ従業員は基本的に会社からの指示に従わなければいけません。一方で業務委託契約は「特定の仕事」を処理していくので、仕事をしっかりこなしていればその他の指示に従う必要はありません。

◆労働トラブルを避けるための雇用契約書

民法623条によると、雇用契約は、会社・労働者双方の意思表示のみで効力が発生するものです。つまり、民法の解釈に従えば、一般的な契約は書面でする必要はありません(=契約する双方の合意があれば口頭でも成立してしまう)ので、雇用契約書の発行・締結は必須ではないということになります。

ただ、労働トラブルを避けるためにも、実務上では雇用契約書が必要となるケースがほとんどであると覚えておいてください。
特に近年では、労働トラブルで裁判になった際は、労働者側のほうが企業側よりも有利な判決が出る傾向が多いです。

経営者として企業を経営している以上、労働関係でのトラブルに直面することは避けては通れません。労働時間・賃金形態など働き方も多様化していることに加え、インターネットやスマートフォンの普及などにより労働者側も法的な知識を身に付けやすくなったので、トラブルに発展しやすい状況になっているとも言えます。

労働者・企業の双方が良好な関係を築いていくためにも、雇用契約書は必ず作成すること、そして労働者側と内容をよく確認し合意を得ることが大切です。

◆雇用契約書に記載すべき事項は?

雇用契約書は厳格にフォーマットが決まっているわけではないですが、労働基準法を遵守して作成する必要があり、違法な内容で作成した契約書は原則無効となります。労働基準法の15条第1項によると「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない」と定められています。

よって、雇用主である企業側は、労働者側に対して労働条件の明示が義務付けられています。労働条件には、絶対にいかなる場合でも雇用契約書に明示する必要がある「絶対的明示事項」と、特別な定めがある時だけに明示が必要な「相対的明示事項」があります。

●絶対的明示事項の内容

雇用契約書を作成する際に絶対に明示しなければならない内容は、以下の事項です。

・労働契約の期間

期間に定めがない場合には、「期間の定めがない」と記載しますが、定めがある時にはその期間、更新の有無、更新の判断基準について明示する必要があります。

・就業場所と業務内容

基本的に、入社後配属される場所の住所と社名も合わせて記載します。
異動の可能性がある場合には、異動先も合わせて記載します。

・就労時間、休憩時間、残業の有無、休日、休暇など労働時間に関する事項

最もイレギュラーが起こりやすいのが、この労働時間に関する事項です。
就労時間や休憩時間などほぼ固定で分かっている事項の他、残業の有無や休日出金の有無など、起こりうる可能性があるものは記載しておく必要があります。
また、残業時間を指定する場合は、労働基準法に沿った時間内に収める必要があります。

・給与の計算方法、支払方法、給与の締め日と支払日

月給制や日給制、時給制など給与の計算方法や、手渡し、銀行振り込みと言った支払い方法についても記載します。

・退職についての事項

退職・解雇についての条件や手続き面についての記載も必要になります。

●相対的明示事項の内容

特別な定めがある場合や、必要性が高い時だけ記載する必要がある相対的明示事項ですが、以下のような事項が該当します。

・昇給に関すること
・退職金に関すること
・賞与に関すること
・労働者自己負担の食費や雑費に関すること
・安全衛生に関すること
・休職に関すること

相対的明示事項については、必要事項があれば記載する形ですので、上記はあくまで一例になります。
ただ、相対的明示事項であれば、特に書かなくても問題がないと言うわけではありません。
あくまで例外的な要素がある事項であるため、絶対的明示事項に含まれていないだけです。
労働者に伝えて納得してもらう必要がある事項は、トラブル防止のため、必ず記載するようにしましょう。

●その他、雇用契約書作成においての必要事項

契約書ですので、効力を持たせるために双方合意の上、署名・捺印が必要になります。
この時の署名・捺印は企業側の分も必要です。
また、後々のトラブルを避けるためにも、社内規則で重要なものがある場合には、雇用契約書に記載しておくことをおすすめします。
法律に違反することでない限り、会社として従業員に守ってほしい事項は、雇用契約書に記載しておくようにしましょう。

◆まとめ

今回は雇用契約をテーマに解説しました。雇用契約は法律が絡んでくる部分が多く、細かくややこしいところもありますが、今後もより労働者の働き方が多様化していくことを考えると、経営者として必ず持っておくべき知識です。

また、労働に対しての社会全体の考え方や価値観は、時代の流れとともにどんどん変わっていきます。雇用契約の内容を法令遵守した上で、アップデートしていく必要があるでしょう。今回の内容が自社の雇用契約を見直すきっかけとなれば幸いです。

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著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

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