労務とはどんな業務?人事との違いや費用の内訳について解説

労務とはどんな業務?人事との違いや費用の内訳について解説

会社の業務に「労務」という部門があることはご存知の方も多いと思いますが、具体的に労務の仕事内容について正しく理解できていますでしょうか?

労務・人事としてひとくくりにされることも多い労務の仕事。今回は労務の仕事内容や人事との違いついて解説し、合わせて知っておきたい「労務費」の内訳について説明していきます。

◆労務とは?

企業経営における経営資源「ヒト」「モノ」「カネ」のうち、「ヒト」に関わるのが労務の仕事です。『「ヒト」の領域=人事の仕事』と連想されがちで、業務範囲の住み分けも会社によって異なるケースがあります。一般的には下記のように分担されることが多いでしょう。

・労務:就業規則の整備や労働時間の管理など、労働環境を整備する

・人事:採用や入退社の手続き、教育研修、異動、人事評価など、従業員の働きやすさをサポートする

◆労務と人事の仕事内容の違い

前項では、労務・人事の役割の大まかな違いについて解説しましたが、ここからは、それぞれの具体的な仕事内容をご紹介します。

  • 労務の仕事内容

〇勤怠管理

一般的に、勤怠に関わる下記項目の把握と管理を求められます。

・出退勤時間
・時間外労働時間
・休憩時間
・出欠勤日数
・休日出勤回数
・有休休暇取得状況

勤怠の情報は人事評価に影響するケースも多く、非常に重要です。また、従業員が就業規則の範囲内で残業をしているかなど、企業は労働衛生の観点から管理する義務が課せられています。ここでは詳しい解説は省略しますが、労務担当者は、労働基準法や36協定など、関連法規も理解しておくといいでしょう。

〇給与計算

社会保険や税金まわりの関連法規、就業規則や給与規定などに基づき、給与額を算出します。給与は主に下記項目から構成されています。

・基本給

・諸手当

・基準外手当

・法定控除

・その他控除

〇社会保険関連の手続き

雇用されて働く従業員は、法律に基づき下記の社会保険に加入する義務があります。労働日数・時間や年齢などにより対象となる保険が異なるため、労務担当者が適切な手続きを行うことが大切です。

・健康保険

・厚生年金保険

・介護保険

・労災保険

・雇用保険

〇福利厚生の管理

社会保険など企業の負担が法律で義務付けられたものは「法定福利」、企業が任意で従業員へ供与するものは「法定外福利」といいます。

≪法定外福利の一例≫

・住宅手当や借り上げ社宅制度

・交通費

・社員イベントの実施や金銭補助

・アニバーサリー休暇

・書籍購入

法定外福利は従業員の生活の質や労働生産性の向上などを目的としており、従業員のモチベーションアップにもつながります。そのため、法定外福利も労務の重要な業務と言えるでしょう。

〇安全衛生管理

従業員の安全と健康を守るため、労働安全衛生法に基づいた衛生対策を行います。

≪対策の一例≫

・年1回の定期健康診断実施

・従業員のメンタルヘルスのケア※

※過労による労働災害が近年問題視されており、実際に従業員が亡くなる痛ましい事故も起こりました。そういった状況を踏まえ、50人以上を雇用する企業を対象に、ストレスチェックが義務化されています(2015年12月より)。

〇就業規則の作成

常時10名以上の従業員を雇用する企業は、労働基準法により就業規則の作成と届け出の義務が課せられています。

  • 人事の仕事内容

〇採用活動・採用戦略の立案

新卒採用や中途採用は人事の代表的な仕事です。面接以外にも、応募者に向け企業魅力をどう訴求していくか、どういった素養のある人をいつまで何人採用するか、採用手段はどうするかなど、採用戦略の企画や立案までカバーすることもあります。

〇社内研修の実施

社内研修は、業務に必要な法律や知識のインプットや従業員の啓発をうながす役割があり、労働生産性の向上も期待されます。研修担当者は従業員のニーズをくみ取り、研修の企画・準備・実施を行います。研修の専門企業へ外注することもあります。

〇人事評価制度の企画・策定

人事評価制度とは、企業ビジョンや経営目標をふまえ、従業員の成果を評価する仕組みです。企業によって内容は異なりますが、目標に対する達成度を数値化し、客観的に判断することが一般的です。評価をベースに給与や賞与の金額が決定することが非常に多いため、公平な評価につながる制度設計はとても大切です。

〇配属先の決定

事業計画や人員配置計画をふまえ、従業員の配属先を決定します。新入社員の配属先のみならず、既存の社員の異動や社外への出向・転籍なども含まれます。

◆労務費用の内訳

労務の業務内容と合わせて覚えておきたいのが「労務費」です。労務費と人件費もまた、混同されてしまうことが少なくありません。

一般的に人件費とは、給与・賞与・手当等の費用を指します。会計処理における人件費は、目的に応じて「労務費」「販売費」「一般管理費」の3つに細分化されますが、労務費はその中で「商品の製造に直接かかわる人の給与・賞与・手当等」のみが該当します。

販売費は「商品の販売に必要な人の給与・賞与・手当等」を、一般管理費は「社員管理、仕入れや在庫管理に必要な人の給与・賞与・手当」を指します。そのため、サービス業・小売業などでは労務費が発生することがありません。労務費は生産活動に影響するためコスト削減が難しく、管理が重要視される項目です。

労務費は、以下の5項目に分類されます。

・賃金

・雑給

・従業員賞与手当

・退職給付費用

・法定福利費

◆まとめ

今回は人事・労務の違いと業務内容、そして労務費について解説しました。混同されやすい領域ですが、それぞれ違った役割があることを覚えておきましょう。

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著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

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