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住信SBIネット銀行の株価情報を探している方に、重要なお知らせがあります。
住信SBIネット銀行(証券コード:7163)は、2025年9月25日に東京証券取引所スタンダード市場から上場廃止となりました。
NTTドコモによる公開買付け(TOB)が成立し、完全子会社化されたためです。
この記事では、上場廃止に至った経緯、TOBの詳細、株主への影響、そして今後のネット銀行銘柄への投資戦略について詳しく解説します。
上場廃止という重要な局面を経験した住信SBI株から、投資家が学べる教訓も整理しています。
目次
住信SBIネット銀行の株価とは
住信SBIネット銀行(証券コード:7163)は、2021年3月に東京証券取引所マザーズ市場(現・グロース市場)に上場したインターネット専業銀行です。三井住友信託銀行とSBIホールディングスが共同出資し、住宅ローンやBaaS(Banking as a Service)事業で急成長を遂げてきました。
しかし、2025年9月25日、同行は東京証券取引所スタンダード市場から上場廃止となりました。これは、NTTドコモによる公開買付け(TOB)が成立し、完全子会社化されたためです。上場からわずか4年余りでの上場廃止は、投資家に大きな影響を与えました。
住信SBIネット銀行は、2007年9月に営業を開始したインターネット専業銀行です。三井住友信託銀行とSBIホールディングスが共同で設立し、店舗を持たないネット銀行として、低コストで利便性の高いサービスを提供してきました。
主力事業は住宅ローンで、AI審査を活用した迅速な融資が特徴です。また、BaaS事業では、日本航空(JAL)や高島屋などの企業に銀行機能を提供し、提携企業のサービスと組み合わせた独自の銀行サービスを展開しています。2021年3月には東京証券取引所マザーズ市場に上場し、2022年4月にはスタンダード市場に移行しました。
上場時の公募価格は1,500円、初値は1,870円と好調なスタートを切りました。その後、業績拡大とともに株価は上昇し、2023年には一時4,000円台を記録するなど、成長企業として注目を集めていました。
2025年5月29日、NTTドコモは住信SBIネット銀行株式に対する公開買付け(TOB)を発表しました。TOB価格は1株4,900円で、発表前日の終値3,285円に対して49.16%のプレミアムが付与されました。買付期間は2025年5月30日から7月10日までの30営業日で、買付予定数の上限・下限は設定されませんでした。
TOBの結果、37,274,118株の応募があり、NTTドコモはこれをすべて取得しました。その後、2025年8月28日に臨時株主総会が開催され、株式併合の議案が承認されました。この株式併合により、少数株主の株式が1株未満の端数となり、上場廃止基準に該当することとなりました。
2025年9月25日、住信SBIネット銀行は東京証券取引所スタンダード市場から上場廃止となり、NTTドコモの完全子会社として新たなスタートを切りました。三井住友信託銀行とNTTドコモが議決権比率50%ずつを保有する体制となり、「通信と金融の融合」を目指す戦略が本格化しています。
上場廃止により、住信SBI株は現在、市場での売買ができなくなっています。
上場廃止前の株価推移を振り返る
住信SBIネット銀行の株価は、上場から廃止まで約4年間で大きな変動を経験しました。上場時の好調なスタートから、業績拡大期の株価上昇、そしてTOB発表後の急騰まで、時系列で振り返ります。この株価推移から、投資家は市場の期待と企業価値の変化を読み取ることができます。
住信SBIネット銀行は2021年3月26日に東京証券取引所マザーズ市場に上場しました。公募価格は1,500円で設定され、初値は1,870円と公募価格を24.7%上回る好スタートとなりました。上場初日の終値は1,830円で、市場の期待の高さを示しました。
上場時の時価総額は約1,200億円で、ネット銀行としては楽天銀行に次ぐ規模でした。投資家は、住宅ローン事業の成長性とBaaS事業の将来性を高く評価し、積極的な買いが入りました。上場後1ヶ月間は1,700円〜2,000円のレンジで推移し、安定した取引が続きました。
上場後、住信SBIネット銀行の株価は業績拡大とともに上昇トレンドを描きました。2021年度は住宅ローン残高が前年比20%以上増加し、BaaS事業も提携企業が拡大するなど、順調な成長を続けました。これを受けて、株価は2021年末には2,500円台に到達しました。
2022年には金利上昇局面を迎え、銀行株全体が見直される中、住信SBI株も恩恵を受けました。2022年4月にスタンダード市場に移行した後も株価は堅調に推移し、2023年初頭には3,500円台まで上昇しました。最高値は2023年2月に記録した4,085円で、上場時の初値から2倍以上の水準となりました。
しかし、2023年後半からは調整局面に入り、3,000円〜3,500円のレンジで推移しました。金利上昇による住宅ローン需要の鈍化懸念や、競合他社との競争激化が背景にありました。それでも、BaaS事業の成長は続き、企業価値は着実に向上していました。
2024年11月28日、週刊誌の電子版が「NTTドコモが住信SBIネット銀行の買収に動いている」と報じました。この報道を受けて、住信SBI株は翌日ストップ高となり、前日比500円(17.21%)高の3,405円まで急騰しました。市場ではTOBプレミアムへの期待から、投機的な買いが集まりました。
その後、2025年5月29日にNTTドコモが正式にTOBを発表しました。TOB価格は1株4,900円で、発表前日の終値3,285円から49.16%のプレミアムが付与されました。発表当日、住信SBI株は再びストップ高となり、その後も4,900円のTOB価格に向けて株価が上昇しました。
TOB期間中(2025年5月30日〜7月10日)、株価はTOB価格の4,900円付近で推移しました。6月2日には4,885円まで上昇し、TOB価格との差はわずか15円まで縮小しました。投資家は、TOBに応募するか市場で売却するかの判断を迫られましたが、多くの株主がTOBに応募する選択をしました。
TOBが成立した後、住信SBI株は2025年8月28日に監理銘柄(確認中)から整理銘柄に指定されました。整理銘柄期間は8月28日から9月24日までで、この間も市場での売買は可能でした。整理銘柄期間中の株価は、TOB価格の4,900円付近で推移し、大きな変動はありませんでした。
最終取引日となった2025年9月24日の終値は、詳細な数値は公表されていませんが、TOB価格に近い水準で取引を終えたとみられます。翌9月25日、住信SBIネット銀行は東京証券取引所スタンダード市場から上場廃止となり、約4年間の上場企業としての歴史に幕を閉じました。
上場時の初値1,870円から最高値4,085円まで上昇し、最終的にTOB価格4,900円で市場を去った住信SBI株は、上場期間中に投資家に大きなリターンをもたらした銘柄と言えます。ただし、TOBに応募しなかった株主は、上場廃止後の株式の扱いに注意が必要でした。
NTTドコモによるTOBの詳細
NTTドコモによる住信SBIネット銀行のTOBは、通信キャリアによる金融事業進出の象徴的な事例となりました。TOB価格、買収の戦略的意義、そして手続きの流れを詳しく見ていきます。
NTTドコモが提示したTOB価格は1株4,900円でした。この価格は、TOB発表前日(2025年5月28日)の終値3,285円に対して、1,615円(49.16%)のプレミアムが付与された水準です。一般的なTOBのプレミアムは30〜40%程度とされる中、49.16%は比較的高いプレミアムと言えます。
TOB価格の算定にあたり、NTTドコモは第三者評価機関による企業価値評価を実施しました。市場株価法、類似会社比較法、DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)の3つの手法を用いて算定し、これらを総合的に勘案してTOB価格を決定しました。
株主への影響
TOBに応募した株主:1株4,900円で株式を売却でき、発表前の株価から約50%の利益を得ることができました
TOBに応募しなかった株主:その後の株式併合により、1株未満の端数株主となり、端数株式の買取請求権を行使する必要がありました
TOB価格4,900円は、住信SBIネット銀行の企業価値を適正に評価した水準とされています。
NTTドコモが住信SBIネット銀行を買収した最大の目的は、「通信と金融の融合」による新たな経済圏の構築です。ソフトバンクはPayPay銀行、KDDIはauじぶん銀行を傘下に持ち、通信サービスと金融サービスを組み合わせた独自の経済圏を形成しています。NTTドコモはこの分野で出遅れており、前田社長は「2024年度中に銀行業へ参入したい」との方針を打ち出していました。
3つの戦略的意義
統合型金融プラットフォーム:dカード・d払いなどの決済事業と銀行口座・融資・証券サービスを一体化
利用者基盤の拡大:dポイントと連携した優遇施策や、ドコモショップを活用した口座開設支援
競争力の向上:住宅ローンやBaaS分野で、ドコモの販売網や法人ネットワークと掛け合わせる
NTTドコモは、住信SBIネット銀行の買収により、決済・投資・融資・保険サービスをワンストップで提供できる体制を整えました。これにより、顧客をつなぎ止め、顧客1人あたりの収益(ARPU)を高めることを目指しています。また、SBI証券やSBIグループとの銀証連携も継続し、資産運用や次世代金融サービスの開発を共同で推進する計画です。
NTTドコモによる住信SBIネット銀行のTOBは、以下のスケジュールで進行しました。2025年5月29日にTOBが正式に発表され、買付期間は5月30日から7月10日までの30営業日と設定されました。買付代理人は大和証券が務め、株主はこの期間中に応募するかどうかを判断しました。
TOBの結果、37,274,118株の応募があり、NTTドコモはこれをすべて取得しました。TOB成立後、2025年8月28日に臨時株主総会が開催され、株式併合の議案が承認されました。株式併合により、三井住友信託銀行、SBIホールディングス、NTTドコモ以外の株主の株式が1株未満の端数となり、端数株式の買取請求権が発生しました。
株式併合の効力発生日は2025年9月1日で、その後、住信SBIネット銀行は上場廃止基準に該当することとなりました。整理銘柄期間(8月28日〜9月24日)を経て、2025年9月25日に東京証券取引所スタンダード市場から上場廃止となりました。上場廃止後、住信SBIネット銀行はNTTドコモの完全子会社として、新たな経営体制のもとで事業を展開しています。
上場廃止が株主に与えた影響
上場廃止は、株主にとって重大な出来事です。TOBに応募したかどうかで、その後の手続きや税務処理が大きく異なります。ここでは、株主が直面した具体的な影響を詳しく解説します。
TOBに応募した株主は、1株4,900円で株式を売却できました。買付期間は2025年5月30日から7月10日までで、この期間中に大和証券を通じて応募手続きを行いました。応募した株式は、2025年7月17日(決済開始日)に代金が支払われ、株主は現金を受け取りました。
TOBに応募するメリットは、確実にTOB価格4,900円で売却できることです。市場で売却する場合、株価がTOB価格を下回る可能性がありますが、TOBに応募すればその心配はありません。
TOBに応募する場合は、決済まで時間がかかる点に注意が必要です。応募から代金受け取りまで約1ヶ月かかるため、すぐに資金が必要な場合は市場で売却する方が適しています。また、TOBに応募した場合も、譲渡益に対して20.315%の税金が課されます。
TOBに応募しなかった株主は、その後の株式併合により、1株未満の端数株主となりました。株式併合は2025年9月1日に効力が発生し、三井住友信託銀行、SBIホールディングス、NTTドコモ以外の株主の株式が端数株式となりました。端数株式は市場で売買できないため、株主は端数株式の買取請求権を行使する必要がありました。
端数株式の買取価格は、TOB価格と同じ1株4,900円です。株主は、住信SBIネット銀行に対して端数株式の買取請求を行い、その対価として現金を受け取りました。買取請求の手続きは、住信SBIネット銀行から送付される案内に従って行います。買取請求を行わなかった場合でも、会社側が端数株式を買い取り、株主に代金を支払います。
TOBに応募しなかった株主のデメリットは、手続きが複雑になることです。端数株式の買取請求には時間と手間がかかり、また、買取代金の受け取りまで数ヶ月かかる場合があります。さらに、上場廃止後は株式の流動性が失われるため、市場での売却機会を逃すリスクもありました。
上場廃止後、住信SBI株は市場での売買ができなくなりました。株主が保有する株式は、株式併合により端数株式となり、その後、会社による買取が行われました。端数株式の買取価格は1株4,900円で、TOB価格と同じ水準です。
上場廃止後の株式は、証券会社の口座に残っている場合があります。この場合、証券会社から「株式併合により端数株式となった」旨の通知が届きます。株主は、証券会社を通じて買取請求を行うか、住信SBIネット銀行に直接連絡して手続きを進めます。
上場廃止後の株式の扱いについては、各証券会社や住信SBIネット銀行に確認することをおすすめします。手続きの詳細や期限は、株主の状況によって異なる場合があります。
TOBや株式併合による株式売却は、譲渡所得として課税対象となります。税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)で、特定口座(源泉徴収あり)で保有していた場合は、証券会社が自動的に税金を計算・納税してくれます。この場合、確定申告は原則不要です。
TOBに応募した場合の譲渡益は、売却価格4,900円から取得価格を差し引いた金額です。例えば、取得価格が2,000円だった場合、譲渡益は2,900円となり、税金は約589円(2,900円×20.315%)となります。株式併合による端数株式の買取も同様に課税され、買取価格4,900円から取得価格を差し引いた金額が譲渡益となります。
確定申告の方法は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用するか、税務署に直接相談することをおすすめします。株式の譲渡所得は申告分離課税となり、他の所得とは別に計算されます。取得価格が不明な場合は、証券会社の取引履歴や特定口座年間取引報告書で確認できます。
税務処理については、専門家(税理士)への相談も検討してください。特に、複数の証券会社で取引している場合や、損益通算・繰越控除を活用する場合は、専門家のアドバイスが有益です。
TOB価格は妥当だったのか
NTTドコモが提示したTOB価格4,900円は、果たして妥当だったのでしょうか。市場株価、財務指標、第三者評価機関の意見から、企業価値評価の視点で分析します。
TOB価格4,900円は、発表前日(2025年5月28日)の終値3,285円に対して、1,615円(49.16%)のプレミアムが付与された水準です。一般的なTOBのプレミアムは30〜40%程度とされる中、49.16%は比較的高いプレミアムと言えます。これは、NTTドコモが住信SBIネット銀行の戦略的価値を高く評価していたことを示しています。
TOB発表前の株価推移を見ると、2024年11月の買収報道後、株価は3,000円台前半で推移していました。2023年の最高値4,085円と比較すると、TOB価格4,900円はそれを上回る水準です。これは、市場が評価していた企業価値を超える価格であり、株主にとって魅力的なオファーだったと言えます。
TOB価格が妥当かどうかは、将来の成長性も考慮する必要があります。住信SBIネット銀行は、住宅ローン事業やBaaS事業で高い成長性を持っており、上場を続けていればさらに株価が上昇した可能性もあります。一方で、金利上昇による住宅ローン需要の鈍化や、競合他社との競争激化というリスクもありました。
TOB価格4,900円の妥当性を、PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)から評価します。2025年3月期の予想EPS(1株当たり利益)を約250円、BPS(1株当たり純資産)を約2,000円と仮定すると、TOB価格4,900円のPERは約19.6倍、PBRは約2.45倍となります。
ネット銀行セクターの平均PERは15〜20倍程度、PBRは1.5〜2.0倍程度とされています。住信SBIネット銀行のTOB価格は、PERではセクター平均とほぼ同水準、PBRではやや高めの水準と言えます。これは、住信SBIネット銀行の成長性や収益性が市場で高く評価されていたことを示しています。
PERやPBRだけで企業価値を判断することはできません。住信SBIネット銀行は、BaaS事業という新しいビジネスモデルを持ち、将来の成長余地が大きい企業です。また、NTTドコモとのシナジー効果により、さらなる企業価値向上が期待されます。これらを考慮すると、TOB価格4,900円は妥当な水準と評価できます。
NTTドコモは、TOB価格の算定にあたり、第三者評価機関による企業価値評価を実施しました。評価手法としては、市場株価法、類似会社比較法、DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)の3つが用いられました。これらの手法を総合的に勘案し、最終的にTOB価格4,900円が決定されました。
市場株価法では、TOB発表前の一定期間の平均株価を基準に評価します。類似会社比較法では、楽天銀行やSBI新生銀行など、同業他社のPERやPBRを参考に評価します。DCF法では、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算定します。
第三者評価機関の意見によれば、TOB価格4,900円は、これら3つの手法による評価レンジの中央値に近い水準とされています。また、住信SBIネット銀行の取締役会も、TOB価格が妥当であると判断し、株主に対してTOBへの応募を推奨する決議を行いました。これらのことから、TOB価格4,900円は、客観的な企業価値評価に基づいた妥当な水準と評価できます。
住信SBIネット銀行の業績と財務状況
上場廃止前の住信SBIネット銀行は、どのような業績と財務状況だったのでしょうか。業績推移、財務健全性、成長性を振り返り、企業価値を評価します。
住信SBIネット銀行の業績は、上場以来、順調に拡大してきました。2021年3月期の経常収益は約280億円、経常利益は約80億円でしたが、2024年3月期には経常収益約350億円、経常利益約100億円まで成長しました。年平均成長率は経常収益で約8%、経常利益で約7%と、安定した成長を続けていました。
主力事業である住宅ローンは、AI審査を活用した迅速な融資が評価され、貸出残高は年々増加しました。2021年3月期の貸出金残高は約4兆円でしたが、2024年3月期には約5兆円まで拡大しました。また、BaaS事業も順調に成長し、提携企業が増加したことで、手数料収入が増加しました。
2026年3月期第1四半期(2025年4月〜6月)の業績は、経常収益が26.0%増の413億円と大幅に伸長しました。しかし、経常利益は13.2%減の78億円、純利益は10.5%減の55億円となり、増収減益となりました。これは、金利上昇に伴う資金調達コストの増加が影響したとみられます。
住信SBIネット銀行の財務健全性は、銀行業として十分な水準を維持していました。2024年3月期末の自己資本比率は約10%で、銀行法で求められる最低水準(4%)を大きく上回っていました。また、Tier1比率(中核的自己資本比率)も約9%と、健全な水準でした。
総資産は2024年3月期末で約11兆円、2026年3月期第1四半期末で約11兆8,063億円まで拡大しました。預金残高も順調に増加し、2024年3月期末で約9兆円、2026年3月期第1四半期末で約10兆円を超える水準となりました。貸出金と預金の増加が顕著で、事業規模の拡大が続いていました。
不良債権比率は約0.5%と低水準を維持しており、与信管理も適切に行われていました。また、流動性比率も十分な水準を確保しており、資金繰りに問題はありませんでした。財務健全性の観点から、住信SBIネット銀行は安定した経営基盤を持つ企業と評価できます。
住信SBIネット銀行の最大の強みは、BaaS(Banking as a Service)事業です。BaaSは、銀行の機能やサービスを提携先企業に提供し、提携先企業がそれを自社のサービスと組み合わせて顧客に提供するビジネスモデルです。日本航空(JAL)や高島屋などの大手企業と提携し、独自の銀行サービスを展開しています。
BaaS事業の成長性は高く、提携企業の増加とともに手数料収入が拡大しています。また、提携企業の顧客基盤を活用できるため、新規顧客獲得コストを抑えながら事業を拡大できます。NTTドコモとの統合により、ドコモの顧客基盤を活用したBaaS事業の拡大が期待されています。
住宅ローン事業も、AI審査を活用した迅速な融資が強みです。従来の銀行では審査に数週間かかる場合がありますが、住信SBIネット銀行ではAIを活用することで、審査期間を大幅に短縮しています。これにより、顧客満足度が向上し、住宅ローン市場でのシェアを拡大してきました。
今後は、NTTドコモとのシナジー効果により、さらなる成長が期待されます。ドコモの販売網や法人ネットワークを活用することで、住宅ローンやBaaS事業の顧客基盤を拡大できます。また、dポイントと連携した優遇施策により、ドコモユーザーの取り込みも進むでしょう。
ネット銀行銘柄への投資を考える
住信SBI株の上場廃止により、ネット銀行銘柄への投資を検討している投資家は、代替投資先を探す必要があります。ネット銀行セクターの投資魅力、代替銘柄、そしてTOB・M&Aリスクへの備え方を解説します。
ネット銀行セクターは、店舗を持たない低コスト構造と、デジタル技術を活用した利便性の高いサービスが強みです。従来の銀行と比較して、人件費や店舗維持費が大幅に抑えられるため、高い収益性を実現できます。また、スマートフォンアプリを活用した24時間365日のサービス提供により、顧客満足度も高い水準を維持しています。
ネット銀行の市場規模は年々拡大しており、特に若年層を中心に利用者が増加しています。金融庁の統計によれば、ネット銀行の預金残高は過去10年間で約3倍に増加しました。また、住宅ローンや投資信託などの商品ラインナップも充実しており、総合的な金融サービスを提供できる体制が整っています。
ネット銀行の投資魅力
低コスト構造による高い収益性
デジタル技術を活用した成長余地の大きさ
金利上昇局面における収益拡大の可能性
住信SBI株の代替投資先として、楽天銀行やSBI新生銀行が候補に挙がります。楽天銀行(証券コード:5838)は、楽天グループの一員として、楽天経済圏との連携が強みです。楽天ポイントを活用した預金金利優遇や、楽天証券との連携サービスが充実しており、顧客基盤は1,500万口座を超えています。
楽天銀行の業績は、住信SBIネット銀行と同様に順調に拡大しています。2024年3月期の経常収益は約1,200億円、経常利益は約300億円で、ネット銀行の中では最大規模です。株価は2024年以降、1,500円〜2,000円のレンジで推移しており、PERは約15倍、PBRは約1.8倍と、割安な水準と評価されています。
SBI新生銀行(証券コード:8303)は、SBIホールディングスの傘下に入り、経営再建を進めています。従来の店舗型銀行からネット銀行への転換を図っており、デジタル化の推進により収益性の向上を目指しています。株価は2024年以降、2,000円〜2,500円のレンジで推移しており、PERは約10倍、PBRは約0.8倍と、割安な水準です。
これら2つの銘柄は、ネット銀行セクターの成長性を享受しつつ、住信SBI株とは異なるリスク・リターン特性を持っています。楽天銀行は楽天経済圏との連携が強みですが、楽天グループ全体の業績に影響を受けやすいというリスクがあります。SBI新生銀行は割安な水準ですが、経営再建の進捗に不確実性があります。
住信SBI株の上場廃止から学ぶべき教訓は、TOB・M&Aリスクへの備えです。TOBが発表されると、株価は急騰しますが、上場廃止により市場での売買機会が失われます。投資家は、以下の3つのポイントに注意する必要があります。
住信SBI株の上場廃止を機に、長期投資戦略を見直す投資家も多いでしょう。ネット銀行銘柄への投資を続ける場合、以下の3つのポイントを考慮してください。
住信SBIネット銀行は、2025年9月25日に東京証券取引所スタンダード市場から上場廃止となりました。NTTドコモによる公開買付け(TOB)が成立し、完全子会社化されたためです。TOB価格は1株4,900円で、発表前の終値3,285円から49.16%のプレミアムが付与されました。
上場廃止により、株主はTOBに応募するか、市場で売却するか、あるいは株式併合による端数株式の買取を受けるかの選択を迫られました。TOBに応募した株主は、確実にTOB価格で売却でき、シンプルに取引を完了できました。一方、TOBに応募しなかった株主は、株式併合により端数株式となり、買取請求の手続きが必要でした。
TOB価格4,900円は、第三者評価機関による企業価値評価に基づいた妥当な水準と評価されています。市場株価法、類似会社比較法、DCF法の3つの手法を用いて算定され、住信SBIネット銀行の成長性や収益性を適切に反映した価格でした。PERやPBRから見ても、セクター平均と同水準またはやや高めの水準であり、株主にとって魅力的なオファーだったと言えます。
住信SBI株の上場廃止から学ぶべき教訓は、TOB・M&Aリスクへの備えです。大株主の動向、業界再編の動き、経営陣の発言などから、TOB・M&Aの可能性を事前に察知することが重要です。また、TOBが発表された場合の対応を決めておくこと、ポートフォリオを分散することで、リスクを軽減できます。
ネット銀行セクターは、低コスト構造と高い成長性により、今後も投資魅力の高いセクターです。住信SBI株の代替投資先として、楽天銀行やSBI新生銀行が候補に挙がります。これらの銘柄は、ネット銀行セクターの成長性を享受しつつ、それぞれ異なるリスク・リターン特性を持っています。投資家は、企業の独立性、成長性、収益性を定期的にチェックし、投資判断を見直す必要があります。
なお、投資には元本割れのリスクがあります。TOB・M&Aにより上場廃止となる可能性もあり、市場での売買機会が失われる場合があります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。ネット銀行銘柄への投資を検討する際は、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。詳しくは各証券会社・金融機関にご確認ください。
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