投資信託の利回りとは?平均相場と計算方法を解説

投資信託の利回りとは?平均相場と計算方法を解説

投資信託を始めたいけれど、「利回り」という言葉の意味がよく分からない。

平均的な利回りはどれくらいなのか、自分の投資が成功しているのか判断できない。

こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。

投資信託の利回りとは、投資した金額に対してどれだけの収益が得られたかを示す指標です。

一般的に、投資信託の平均利回りは3%~10%程度とされており、資産の種類や運用期間によって大きく異なります。

この記事では、利回りの基本的な仕組みから計算方法、資産別の平均相場まで、投資信託の利回りに関する情報を分かりやすく解説します。

年代別の目標設定や注意点も紹介しますので、ご自身に合った投資判断の参考にしてください。

この記事の要約
  • 投資信託の平均利回りは3%~10%で、資産の種類によって異なる
  • 利回りは「年間の収益÷投資元本×100」で計算できる
  • 高利回りには高リスクが伴うため、手数料や分配金の仕組みを理解することが重要
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

投資信託の利回りとは?|基本の仕組み

投資信託の利回りは、投資した金額に対してどれだけの収益が得られたかを示す重要な指標です。

初めて投資を検討する方にとって、この利回りの理解は投資判断の基礎となります。

利回りの定義と計算式

利回りとは、投資した元本に対して1年間でどれだけの収益が得られたかを示す割合のことです。

投資信託の利回りは、値上がり益(キャピタルゲイン)と分配金(インカムゲイン)の両方を含めて計算されます。

基本的な計算式

利回り(%)=(売却時の評価額-購入時の投資額+受取分配金)÷ 購入時の投資額 × 100

例えば、100万円で購入した投資信託が1年後に105万円になり、その間に2万円の分配金を受け取った場合、利回りは(105万円-100万円+2万円)÷ 100万円 × 100 = 7%となります。

利回りは年率で表示されることが一般的で、複数年にわたる投資の場合は年率換算して比較します。

トータルリターンとの関係

投資信託の収益を評価する際には、「トータルリターン」という用語もよく使われます。

トータルリターンとは、投資信託の値上がり益(または値下がり損)と分配金を合計した総合的な収益のことです。

金融庁は、投資信託の運用成果を正確に把握するため、2014年からトータルリターンの通知を義務付けています。

トータルリターンと利回りの関係は密接で、実は利回りはトータルリターンを年率換算したものと考えることができます。

トータルリターンが金額ベースの収益を示すのに対し、利回りは投資元本に対する割合として表現される点が異なります。

投資判断を行う際には、単年度の利回りだけでなく、3年・5年・10年といった長期のトータルリターンを確認することが推奨されます。

なぜ利回りが重要なのか

利回りは、投資信託を選ぶ際の最も基本的な判断材料の一つです。

利回りを理解することで、自分の投資がどれだけの成果を上げているか、目標とする資産形成が実現できそうかを客観的に評価できます。

例えば、老後資金として2,000万円を準備したい場合、毎月5万円を積み立てるとして、利回り3%なら約25年、利回り5%なら約22年かかります。

このように、利回りの違いは資産形成の期間に大きく影響するため、投資を始める前に目標利回りを設定することが重要です。

利回りだけで投資信託を選ぶのは危険です。高い利回りには高いリスクが伴うことが一般的で、過去の利回りが将来も続く保証はありません。

利回りと利率の違いは?|混同しやすい3つの用語

投資信託を調べていると、「利回り」「利率」「騰落率」「分配金利回り」など、似たような用語が数多く登場します。

これらの用語は混同されやすく、正確に理解していないと投資判断を誤る可能性があります。

利回りと利率の違い

「利回り」と「利率」は似た言葉ですが、意味は大きく異なります。

利率は、債券などの金融商品があらかじめ約束している利息の割合のことです。

一方、利回りは実際に得られた収益の割合を示します。

債券を例にすると分かりやすいでしょう。

額面100万円、利率2%の債券を100万円で購入した場合、毎年2万円の利息を受け取れます。この2%が「利率」です。

しかし、この債券を95万円で購入できた場合、実際の利回りは(2万円+5万円の値上がり益)÷ 95万円で計算され、利率よりも高くなります。

項目 利率 利回り
定義 あらかじめ約束された利息の割合 実際に得られた収益の割合
対象商品 債券、預金など 投資信託、株式、債券など
確定性 購入時に確定 運用結果によって変動
計算要素 利息のみ 利息+値上がり益(または値下がり損)

投資信託の場合、利率という概念は基本的にありません。

投資信託は株式や債券などに投資する商品で、あらかじめ決まった利息を約束するものではないためです。

騰落率とは

騰落率(とうらくりつ)は、投資信託の基準価額がどれだけ変動したかを示す指標です。

一定期間における基準価額の変化率を表し、投資信託の値動きを把握するために使われます。

騰落率の計算式

騰落率(%)=(期末の基準価額-期初の基準価額)÷ 期初の基準価額 × 100

例えば、基準価額が10,000円から10,500円に上昇した場合、騰落率は(10,500円-10,000円)÷ 10,000円 × 100 = 5%となります。

騰落率と利回りの大きな違いは、分配金を含むかどうかです。

騰落率は基準価額の変動のみを示し、分配金は含まれません。一方、利回りは分配金も含めた総合的な収益率を表します。

そのため、分配金を多く出す投資信託の場合、騰落率はマイナスでも利回りはプラスになることがあります。

分配金利回りとは

分配金利回りは、投資信託が支払う分配金の割合を示す指標です。

投資信託の基準価額に対して、1年間でどれだけの分配金が支払われるかを表します。

分配金利回りの計算式

分配金利回り(%)= 年間分配金 ÷ 基準価額 × 100

例えば、基準価額が10,000円の投資信託が年間で300円の分配金を支払う場合、分配金利回りは 300円 ÷ 10,000円 × 100 = 3%となります。

分配金利回りが高い投資信託は一見魅力的に見えますが、注意が必要です。分配金は投資信託の純資産から支払われるため、分配金を出すとその分だけ基準価額が下がります。

さらに、運用益を超える分配金(特別分配金やタコ足配当と呼ばれる)が支払われる場合、実質的には自分の投資元本が戻ってきているだけで、利益ではありません。

投資信託を選ぶ際は、分配金利回りだけでなく、トータルリターンや利回り全体を確認することが大切です。

投資信託の平均利回りはどれくらい?|資産別の相場

投資信託を選ぶ際、最も気になるのが「実際にどれくらいの利回りが期待できるのか」という点でしょう。

投資信託の利回りは、投資対象の資産によって大きく異なります。

平均利回りの相場は3%~10%

投資信託の平均利回りは、一般的に年率3%~10%程度とされています。

ただし、この数値は投資対象の資産や運用期間、市場環境によって大きく変動します。

GPIFの運用実績によると、2001年度から2023年度までの約20年間で、年率換算の収益率は約3.7%でした。

GPIFは国内株式、外国株式、国内債券、外国債券に分散投資する基本ポートフォリオで運用しており、この実績は分散投資の長期的な成果を示す参考値として有用です。

出典:GPIF「2023年度の運用状況」

市場環境が良好な時期には10%を超える利回りを記録する投資信託も珍しくありませんが、逆に市場が低迷する時期にはマイナスの利回りとなることもあります。

金融庁も、長期・積立・分散投資の重要性を推奨しており、20年以上の長期投資では収益率のバラつきが小さくなり、安定したリターンが期待できるとしています。

参考:金融庁「投資の基本」

国内株式の平均利回り

国内株式に投資する投資信託の平均利回りは、長期的には年率5%~7%程度とされています。

日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数に連動するインデックスファンドの場合、過去20年間の年率リターンは約5%前後です。

国内株式の利回りは、日本経済の成長や企業業績に大きく影響されます。

2012年以降のアベノミクス相場では高い利回りを記録した一方、2000年代前半のITバブル崩壊後や2008年のリーマンショック後には大幅なマイナスとなりました。

国内株式投資信託の特徴

メリット:為替リスクがない、日本企業の成長に直接投資できる

デメリット:株価変動が大きく、短期的には損失が出る可能性がある

海外株式の平均利回り

海外株式に投資する投資信託、特に米国株式に投資するファンドの平均利回りは、長期的には年率7%~10%程度と、国内株式よりも高い傾向があります。

S&P500指数に連動する投資信託の場合、過去30年間の年率リターンは約10%とされています。

GPIFの運用実績でも、外国株式は2001年度から2023年度までの累積収益率が最も高い資産クラスとなっています。

特に米国株式市場は、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などのテクノロジー企業の成長により、長期的に高いリターンを記録してきました。

海外株式には為替リスクがあります。円高になると、現地通貨ベースでは利益が出ていても、円換算すると損失となる可能性があります。

債券の平均利回り

債券に投資する投資信託の平均利回りは、年率1%~3%程度と、株式に比べて低めです。

国内債券の場合、過去20年間の年率リターンは約2%前後となっています。

債券は、国や企業が発行する借用証書のようなもので、あらかじめ決められた利息を受け取れる金融商品です。

そのため、株式に比べて価格変動が小さく、安定した利回りが期待できます。

債券投資信託の特徴

メリット:株式市場が低迷する時期でも比較的安定したリターンが期待できる

デメリット:低金利環境では利回りも低くなる

バランス型ファンドの平均利回り

バランス型ファンドは、株式と債券などを組み合わせて投資する投資信託です。

平均利回りは、資産配分によって異なりますが、年率3%~6%程度が一般的です。

バランス型ファンドの最大のメリットは、1つの商品で分散投資が実現できる点です。

株式と債券の比率を調整することで、リスクとリターンのバランスを取ることができます。

資産タイプ 平均利回り(年率) リスク 特徴
国内株式 5%~7% 日本企業の成長に投資、為替リスクなし
海外株式 7%~10% 高い成長性、為替リスクあり
債券 1%~3% 安定した利回り、価格変動が小さい
バランス型 3%~6% 分散投資、リスクとリターンのバランス

初めて投資信託を選ぶ方や、リスクを抑えた運用をしたい方には、バランス型ファンドが適しています。

利回りの計算方法|実例で学ぶ3つのパターン

利回りの概念を理解したら、次は実際の計算方法を学びましょう。

投資信託の利回りは、投資期間や分配金の有無によって計算方法が異なります。

1年間の利回り計算

最も基本的なのが、1年間の利回り計算です。

投資期間が1年の場合、計算は比較的シンプルです。

1.投資元本を確認する
2.1年後の評価額を確認する
3.受け取った分配金を確認する
4.利回りの計算式に当てはめる

【計算例】

投資元本:100万円

1年後の評価額:105万円

受取分配金:2万円

利回りの計算式:(105万円 - 100万円 + 2万円)÷ 100万円 × 100 = 7%

この例では、1年間で7%の利回りを達成したことになります。

複数年の年率換算計算

投資期間が複数年にわたる場合、年率換算して利回りを計算します。

年率換算することで、異なる期間の投資成果を公平に比較できます。

1.投資期間全体の収益率を計算する
2.投資期間(年数)を確認する
3.年率換算の計算式に当てはめる

【計算例】

投資元本:100万円

3年後の評価額:120万円

受取分配金(3年間の合計):5万円

まず、3年間の総収益率を計算します。

総収益率 =(120万円 - 100万円 + 5万円)÷ 100万円 × 100 = 25%

次に、これを年率換算します。簡易的な計算方法は、総収益率を投資年数で割る方法です。

簡易年率 = 25% ÷ 3年 = 約8.3%

より正確な計算方法は、複利計算を考慮した幾何平均を使います。

年率換算利回り = {(1 + 0.25)の3乗根 - 1} × 100 = 約7.7%

分配金を含む利回り計算

分配金を定期的に受け取る投資信託の場合、計算がやや複雑になります。

特に、分配金を再投資する場合としない場合で、最終的な利回りが大きく変わる点に注意が必要です。

1.投資元本を確認する
2.投資期間終了時の評価額を確認する
3.受け取った分配金の合計を確認する
4.利回りの計算式に当てはめる

【計算例】

投資元本:100万円

3年後の評価額:105万円

受取分配金(3年間の合計):15万円(年5万円×3年)

総収益 =(105万円 - 100万円)+ 15万円 = 20万円

総収益率 = 20万円 ÷ 100万円 × 100 = 20%

年率換算利回り = 20% ÷ 3年 = 約6.7%(簡易計算)

長期的な資産形成を目指す場合、分配金を受け取らずに再投資するタイプの投資信託を選ぶことで、複利効果を最大限に活かすことができます。

年代別・目的別の目標利回り設定|自分に合った目標は?

投資信託で資産形成を行う際、年代や目的によって適切な目標利回りは異なります。

20代と60代では投資期間やリスク許容度が大きく違うため、同じ利回りを目指すのは適切ではありません。

20代・30代の目標利回り(資産形成期)

20代・30代は、投資期間が長く取れるため、年率5%~7%程度の目標利回りを設定するのが適切です。

この年代は、多少のリスクを取っても長期的な成長を狙える時期です。

20代・30代のメリット
時間を味方にできる点。仮に市場が一時的に下落しても、長期的には回復する可能性が高く、むしろ下落時は安く買い増しできるチャンスと捉えることができます。
おすすめの投資戦略
国内株式50%、海外株式40%、債券10%といった配分で、成長性を重視した運用を行います。つみたてNISAを活用すれば、年間120万円まで非課税で積立投資ができます。

例えば、月3万円を年率5%で30年間積み立てると、元本1,080万円が約2,500万円に成長します。

40代・50代の目標利回り(資産拡大期)

40代・50代は、老後資金の準備を本格化させる時期です。

年率4%~6%程度の目標利回りを設定し、リスクとリターンのバランスを取った運用が適切です。

この年代の特徴
収入が安定し、投資に回せる資金も増える一方で、投資期間は20代・30代に比べて短くなります。過度なリスクは避けつつ、効率的に資産を増やす戦略が求められます。
おすすめの投資戦略
国内株式30%、海外株式30%、債券30%、その他(REIT等)10%といった配分で、安定性を重視した運用を行います。

また、この年代はiDeCoの活用も検討すべきです。

iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税・住民税の節税効果が大きく、実質的な利回りを高めることができます。

60代以降の目標利回り(資産保全期)

60代以降は、資産を守りながら少しずつ取り崩していく時期です。

年率2%~4%程度の目標利回りを設定し、安定性を最優先した運用が適切です。

この年代の最大の目標
元本を大きく減らさないこと。老後の生活資金として必要な資産を、インフレに負けない程度の利回りで運用しながら、計画的に取り崩していく戦略が求められます。
おすすめの投資戦略
債券60%、株式30%、現金10%といった配分で、価格変動を抑えた運用を行います。株式は完全にゼロにするのではなく、インフレ対策として一定割合を保有することが推奨されます。

目的別の利回り目標(教育資金・老後資金)

投資の目的によっても、適切な目標利回りは異なります。

目的 投資期間 目標利回り 推奨戦略
教育資金 10~18年 3%~5% バランス型、徐々に安全資産へシフト
老後資金 20~40年 4%~6% 株式中心、年齢とともに債券比率を上げる
住宅購入資金 5~10年 2%~4% 債券中心、価格変動を抑える
緊急資金 短期 0%~2% 預金・MMF、すぐに引き出せる商品

教育資金は、子どもの進学時期が決まっているため、その時期に合わせた計画的な運用が必要です。

子どもが小さいうちは株式中心で運用し、進学が近づくにつれて債券や預金など安全資産の比率を高めていく戦略が有効です。

利回りが高い投資信託を選ぶときの注意点

投資信託を選ぶ際、利回りが高い商品は魅力的に見えます。

しかし、高利回りには必ずそれに見合ったリスクが伴います。

過去の利回りは将来を保証しない

投資信託の過去の利回りは、将来の運用成果を保証するものではありません。

これは投資の大原則であり、すべての投資家が理解しておくべき重要なポイントです。

過去5年間で年率10%の利回りを記録した投資信託があったとしても、今後も同じ利回りが続くとは限りません。

市場環境は常に変化しており、好調だった市場が突然低迷することもあります。

金融庁も、投資信託の広告や説明資料において、過去の運用実績を示す際には「過去の実績は将来の成果を保証するものではありません」という注意書きを義務付けています。

参考:金融庁「リスク情報の開示」

投資信託を選ぶ際は、過去の利回りだけでなく、投資対象の資産、運用方針、運用会社の信頼性、手数料などを総合的に評価することが大切です。

高利回りは高リスクを伴う

投資の世界では、「ハイリスク・ハイリターン」という原則があります。

高い利回りが期待できる投資信託は、それだけ価格変動が大きく、元本割れのリスクも高いということを意味します。

例えば、新興国株式に投資する投資信託は、先進国株式に比べて高い利回りが期待できますが、その分リスクも高くなります。

新興国は経済成長率が高い一方で、政治的な不安定さや通貨の変動リスクが大きいためです。

  • ご自身のリスク許容度を正確に把握する
  • 年齢、収入、資産状況、投資経験、性格などを考慮する
  • 高い利回りを追求するあまり、リスク許容度を超えた投資をしない
  • 市場の下落時にパニックにならないよう、適切な資産配分を心がける

手数料が利回りに与える影響

投資信託には様々な手数料がかかり、これらの手数料は利回りを大きく左右します。

手数料は確実に発生するコストであり、利回りから直接差し引かれるため、長期的には運用成果に大きな影響を与えます。

投資信託の主な手数料

1. 購入時手数料:投資信託を購入する際に支払う手数料(0%~3%程度)

2. 信託報酬:投資信託を保有している間、毎日差し引かれる手数料(年率0.1%~2%程度)

3. 信託財産留保額:投資信託を解約する際に支払う手数料(0%~0.5%程度)

例えば、年率5%の利回りが期待できる投資信託でも、信託報酬が年率2%かかる場合、実質的な利回りは3%に下がります。

20年間運用した場合、信託報酬の差が最終的な資産額に大きな差を生み出します。

分配金を出すファンドの落とし穴

分配金を定期的に受け取れる投資信託は、一見魅力的に見えますが、実は注意が必要な点がいくつかあります。

分配金は投資信託の純資産から支払われるため、分配金を出すとその分だけ基準価額が下がります。

つまり、分配金を受け取っても、それと同額だけ保有する投資信託の価値が減少するのです。

さらに問題なのは、運用益を超える分配金を出す投資信託(タコ足配当)です。

例えば、運用益が年間3%しかないのに、年間5%の分配金を出す投資信託があったとします。

この場合、不足分の2%は元本を取り崩して支払われています。

  • 分配金には税金がかかる(約20%)
  • 分配金を再投資する場合、再投資時にも手数料がかかることがある
  • 複利効果が得られにくい
  • 元本を取り崩す分配金(特別分配金)は利益ではない

長期的な資産形成を目指す場合、分配金を出さずに再投資するタイプの投資信託の方が有利です。

手数料を含めた実質利回りの比較方法

投資信託の真の収益性を評価するには、表面的な利回りだけでなく、手数料を差し引いた実質利回りを比較することが重要です。

購入時手数料の影響

購入時手数料(販売手数料)は、投資信託を購入する際に支払う手数料です。

この手数料は、投資する金額に対して一定の割合(通常0%~3%程度)で設定されています。

購入時手数料の最大の問題は、投資を始める前に資産が目減りするという点です。

例えば、100万円を投資しようとして、購入時手数料が3%の投資信託を選んだ場合、実際に運用されるのは97万円だけです。

残りの3万円は証券会社や販売会社の手数料として差し引かれます。

近年は、購入時手数料が無料の投資信託(ノーロードファンド)が増えています。

特にインターネット証券では、多くの投資信託をノーロードで購入できます。

信託報酬の影響

信託報酬は、投資信託を保有している間、毎日差し引かれる手数料です。

年率で表示されますが、実際には日割りで計算され、基準価額から自動的に差し引かれます。

インデックスファンド(市場平均に連動する投資信託)の信託報酬は、年率0.1%~0.5%程度と低い傾向があります。

一方、アクティブファンド(市場平均を上回る成果を目指す投資信託)の信託報酬は、年率0.5%~2%程度と高めです。

信託報酬の違いは、長期的には運用成果に大きな差を生みます。

例えば、年率5%の利回りが期待できる投資信託で、信託報酬が0.2%の商品Aと2%の商品Bを比較してみましょう。

商品A(信託報酬0.2%)の実質利回り:5% - 0.2% = 4.8%

商品B(信託報酬2%)の実質利回り:5% - 2% = 3%

100万円を20年間運用した場合、商品Aは約254万円、商品Bは約181万円になります。

信託報酬の差だけで、最終的な資産額に約73万円もの差が生まれるのです。

売却時手数料の影響

売却時手数料(信託財産留保額)は、投資信託を解約する際に支払う手数料です。

すべての投資信託にかかるわけではなく、設定されていない商品も多くあります。

設定されている場合でも、通常は0.1%~0.5%程度と比較的低い水準です。

信託財産留保額の目的は、解約する投資家と保有し続ける投資家の公平性を保つことです。

投資信託を解約する際、運用会社は保有している株式や債券を売却して現金化する必要があり、その際に取引コストが発生します。

20年間の手数料差シミュレーション

手数料の違いが長期的にどれだけの差を生むか、具体的なシミュレーションで確認してみましょう。

項目 商品A(低コスト) 商品B(標準) 商品C(高コスト)
購入時手数料 0% 1% 3%
信託報酬(年率) 0.2% 1% 2%
運用利回り(税引前) 5% 5% 5%
実質利回り(税引前) 4.8% 4% 3%
100万円の20年後 約254万円 約217万円 約181万円
手数料による差額 約37万円 約73万円

このシミュレーションから分かるように、同じ運用利回りでも、手数料の違いによって最終的な資産額に大きな差が生まれます。

商品Aと商品Cでは、20年後に約73万円もの差が生じるのです。

インデックスファンドとアクティブファンドの利回り実績比較

投資信託を選ぶ際、「インデックスファンド」と「アクティブファンド」のどちらを選ぶべきか迷う方は多いでしょう。

両者は運用方針が異なり、利回りやリスクにも違いがあります。

インデックスファンドの特徴と平均利回り

インデックスファンドは、日経平均株価やTOPIX、S&P500などの株価指数(インデックス)に連動した運用成果を目指す投資信託です。

市場平均と同じ動きをすることを目標としているため、「パッシブ運用」とも呼ばれます。

インデックスファンドの最大の特徴は、手数料が非常に低いことです。

市場平均に連動させるだけなので、銘柄選択のための調査や分析が不要で、運用コストを抑えられます。

信託報酬は年率0.1%~0.5%程度と、アクティブファンドの半分以下です。

国内株式インデックスファンド(TOPIX連動型)の過去20年間の平均利回りは、年率約5%前後です。

S&P500に連動する米国株式インデックスファンドの場合、過去20年間の平均利回りは年率約10%と、さらに高いリターンを記録しています。

インデックスファンドのメリット

・手数料が低いため、実質利回りが高くなりやすい

・運用内容が分かりやすく、透明性が高い

・市場全体に分散投資できるため、個別銘柄のリスクを避けられる

・長期的には市場平均のリターンが得られる

アクティブファンドの特徴と平均利回り

アクティブファンドは、ファンドマネージャーが独自の調査・分析に基づいて銘柄を選択し、市場平均を上回る運用成果を目指す投資信託です。

「アクティブ運用」と呼ばれ、インデックスファンドとは対照的な運用方針です。

しかし、現実には多くのアクティブファンドがインデックスファンドに劣る成績となっています。

日本証券業協会のデータによると、国内株式アクティブファンドの約70%が、10年間でTOPIXを下回る成績となっています。

アクティブファンドが市場平均を下回る主な理由は、高い手数料です。

信託報酬が年率1%~2%と高く、この手数料を上回る超過収益を上げることが難しいのです。

10年・20年の長期実績データ

インデックスファンドとアクティブファンドの優劣を判断するには、長期的な実績データを確認することが重要です。

投資対象 運用タイプ 10年平均利回り 20年平均利回り 信託報酬
国内株式 インデックス(TOPIX) 約6% 約5% 0.1%~0.3%
国内株式 アクティブ(平均) 約4% 約3% 1%~2%
米国株式 インデックス(S&P500) 約13% 約10% 0.1%~0.2%
米国株式 アクティブ(平均) 約10% 約7% 1%~2%

このデータから分かるように、長期的にはインデックスファンドの方が優れた成績を残しています。

特に米国株式では、インデックスファンドとアクティブファンドの差が顕著です。

投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏も、一般の投資家にはインデックスファンドへの投資を推奨しています。

長期的な資産形成を目指すなら、低コストのインデックスファンドを選ぶことが賢明な選択と言えるでしょう。

まとめ

投資信託の利回りは、投資した金額に対してどれだけの収益が得られたかを示す重要な指標です。

一般的に、投資信託の平均利回りは3%~10%程度で、国内株式は5%~7%、海外株式は7%~10%、債券は1%~3%程度が相場となっています。

利回りを理解する上で重要なのは、利回りと利率の違いです。

利回りは実際に得られた収益の割合を示すのに対し、利率はあらかじめ約束された利息の割合を指します。

投資信託では、値上がり益と分配金を合わせた利回り全体で評価することが大切です。

年代や目的によって、適切な目標利回りは異なります。

20代・30代は年率5%~7%、40代・50代は4%~6%、60代以降は2%~4%を目安に、ご自身のリスク許容度に合わせた投資戦略を立てましょう。

利回りが高い投資信託を選ぶ際は、いくつかの注意点があります。

過去の利回りは将来を保証せず、高利回りには高リスクが伴います。

また、手数料が利回りに大きな影響を与えるため、購入時手数料や信託報酬を含めた実質利回りで比較することが重要です。

分配金を多く出す投資信託は、元本を取り崩している可能性があるため注意が必要です。

インデックスファンドとアクティブファンドを比較すると、長期的にはインデックスファンドの方が優れた成績を残しています。

手数料が低く、市場平均のリターンが得られるインデックスファンドは、長期的な資産形成に適した選択肢です。

投資信託を選ぶ際は、利回りだけでなく、投資対象の資産、運用方針、手数料、リスクなどを総合的に評価しましょう。

ご自身の投資目的や年代に合わせて、適切な投資信託を選ぶことが、成功する資産形成への第一歩です。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、不明な点は金融機関や専門家にご相談ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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