SBI証券のiDeCoを徹底解説|特徴と始め方まとめ

「iDeCoはデメリットしかない」という極端な意見を目にして、加入を迷っていませんか。
確かにiDeCoには60歳まで引き出せない、元本割れのリスクがあるといった制約があります。
しかし結論から言えば、「デメリットしかない」というのは誤解です。
iDeCoは年収や家計状況、ライフプランによってメリットが大きく変わる制度であり、向いている人と向いていない人がはっきり分かれます。
この記事では、iDeCoの主なデメリットを正直に解説したうえで、実際に後悔した人の失敗パターン、加入すべき人・すべきでない人の判断基準を具体的に紹介します。
手数料と節税効果の実質収支も詳しく検証しますので、冷静に判断する材料としてお役立てください。
目次
「iDeCoはデメリットしかない」という極端な意見は、一部の人にとっての実感を表したものであり、すべての人に当てはまるわけではありません。
iDeCoは個人型確定拠出年金として、掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税で受け取れる私的年金制度です。
この制度の最大の特徴は、メリットとデメリットのバランスが個人の状況によって大きく変わる点にあります。
年収が高く所得税・住民税の負担が大きい人にとっては、節税効果が手数料を大きく上回るため非常に有利な制度です。
一方で、年収が低い人や貯金がほとんどない人にとっては、手数料負担が重く、60歳まで引き出せない制約がリスクになります。
iDeCoに向いているのは、年収が高く家計が安定している人、自営業・フリーランスで退職金がない人、老後資金を確実に準備したい人です。
逆に、家計が赤字または貯金がほとんどない人、近い将来に大きな出費予定がある人、20代で自己投資を優先したい人は、加入を慎重に検討すべきです。
「デメリットしかない」と感じる人の多くは、自分の状況に合わない制度に無理に加入してしまったケースです。
iDeCoは万能な制度ではなく、向き不向きがはっきりしています。
この記事では、具体的なデメリットと判断基準を詳しく解説しますので、ご自身の状況と照らし合わせて冷静に判断してください。
iDeCoの5つの主なデメリット
iDeCoには大きく分けて5つの主なデメリットがあります。
これらを正しく理解せずに加入すると、後悔する可能性が高くなります。ここでは各デメリットの内容と、それが実際にどのような影響を与えるのかを詳しく解説します。
iDeCoの最大のデメリットは、原則として60歳まで資金を引き出せない点です。
これは老後資金を確実に準備するための制度設計ですが、急な出費が必要になった場合でも引き出すことができません。
このような状況でも、iDeCoの資金には手をつけられません。
60歳まで引き出せないということは、20代で加入すれば30年以上、30代でも20年以上資金が拘束されることを意味します。
その間にライフステージが変わり、まとまった資金が必要になる可能性は十分にあります。iDeCoに回す金額は、本当に60歳まで使わなくても困らない余裕資金に限定すべきです。
なお、死亡・高度障害といった特別な事情がある場合や、掛金納付期間が短い場合は受給開始年齢が繰り下がることがあります。
しかし基本的には60歳まで引き出せないという制約を前提に、加入を検討する必要があります。
iDeCoは運用商品を自分で選ぶ制度のため、選んだ商品によっては元本割れする可能性があります。
特に投資信託を選んだ場合、市場の変動により資産が減少するリスクがあります。
投資信託は株式や債券などに投資するため、経済状況や市場環境によって価格が変動します。
リーマンショックやコロナショックのような大きな経済危機が起きた場合、一時的に大きく資産が減少することもあります。
老後資金を準備するつもりが、元本割れで資産が減ってしまっては本末転倒です。
ただし、iDeCoには定期預金や保険といった元本確保型商品も用意されています。
これらを選べば元本割れのリスクは避けられますが、低金利環境では運用益がほとんど期待できず、後述する手数料負担で実質的に損をする可能性があります。
元本割れを避けたい人は、元本確保型商品を中心に運用するか、バランス型ファンドで株式と債券を組み合わせてリスクを分散する方法があります。
また、長期投資では一時的な下落も回復する可能性が高いため、短期的な値動きに一喜一憂しないことも大切です。
iDeCoは加入時・運用中・受取時にそれぞれ手数料がかかります。
少額で積み立てる場合、手数料負担が相対的に大きくなるため注意が必要です。
iDeCoの手数料内訳
加入時:国民年金基金連合会へ2,829円
運用中:毎月171円(国民年金基金連合会105円+事務委託先金融機関66円)
金融機関によっては運営管理手数料が上乗せ(主要ネット証券は無料)
受取時:給付1回につき440円
例えば月5,000円を積み立てる場合、年間の口座管理手数料は2,052円(171円×12ヶ月)です。
年間の掛金が60,000円に対して手数料が2,052円かかるため、約3.4%が手数料で消えることになります。
これに対して、月23,000円(年間276,000円)を積み立てる場合、同じ手数料2,052円でも約0.7%の負担率です。
手数料負担を抑えるためには、できるだけ多くの金額を積み立てることと、運営管理手数料が無料の金融機関を選ぶことが重要です。
また、後述する節税効果が手数料を上回るかどうかも、加入判断の重要なポイントになります。
iDeCoは掛金拠出時と運用中は税制優遇がありますが、受取時には課税されるため、場合によっては節税効果が減少します。
受取方法には一時金・年金・併用の3つがあり、それぞれ課税方法が異なります。
一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用されます。
退職所得控除額は勤続年数(iDeCoの場合は加入年数)によって決まり、20年以下の場合は40万円×加入年数、20年超の場合は800万円+70万円×(加入年数-20年)です。
この控除額を超えた部分に対して課税されます。
年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。
65歳未満は年間60万円、65歳以上は年間110万円の控除がありますが、公的年金や企業年金と合算されるため、他の年金収入が多い人は控除枠を使い切ってしまい、iDeCoの受取分に課税される可能性があります。
特に注意が必要なのは、退職金が多い人です。会社からの退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、退職所得控除を共有することになり、控除額を超えた部分に課税されます。
受取タイミングをずらすなどの工夫が必要です。
掛金を停止しても口座管理手数料は毎月かかり続けるため、放置すると資産が目減りしていきます。
生活状況が変わる可能性がある人は、最初から無理のない掛金額に設定することが大切です。
実際にiDeCoで後悔した人の失敗パターン3つ
iDeCoに加入して後悔する人には、共通する失敗パターンがあります。
ここでは実際によくある失敗事例を3つ紹介し、同じ過ちを避けるための教訓をお伝えします。
30代会社員のAさんは、月2万円をiDeCoに積み立てていました。
節税効果を重視して、貯金の一部をiDeCoに回していたのです。しかし加入から3年後、突然の病気で入院が必要になり、医療費と収入減で生活費が不足する事態に陥りました。
iDeCoには約70万円の資産がありましたが、60歳まで引き出せないため、結局カードローンで借り入れをせざるを得なくなりました。
iDeCoで節税できた金額よりも、借入利息の方が高くついてしまい、「iDeCoに入らずに普通に貯金しておけばよかった」と後悔しています。
この失敗から学べるのは、iDeCoに回すのは本当に余裕のある資金だけにすべきという点です。
最低でも生活費の3~6ヶ月分は普通預金で確保し、それとは別に近い将来の出費予定(結婚、住宅購入、教育費など)を考慮したうえで、残った余裕資金だけをiDeCoに回すべきです。
特に20代~30代は、ライフイベントが多く予想外の出費が発生しやすい年代です。
節税効果に目を奪われて、手元の流動性資金を減らしすぎないよう注意が必要です。
20代フリーランスのBさんは、「少しでも老後資金を準備しよう」と考え、月5,000円でiDeCoを始めました。
年収が300万円程度だったため、節税効果は年間9,000円程度(所得税率5%+住民税率10%)でした。
しかし口座管理手数料が年間2,052円かかることを軽視していました。
さらに選んだ投資信託の信託報酬が年0.5%だったため、運用資産が増えるにつれて信託報酬負担も増えていきました。
3年後に計算してみると、節税効果と手数料・信託報酬がほぼ相殺され、「ほとんどメリットがなかった」と気づきました。
この失敗のポイントは、少額積立では手数料負担率が高くなり、節税効果が相殺されるという点です。
年収が低く所得税率が低い人は、そもそも節税効果が小さいため、手数料負担が相対的に大きくなります。
少額でiDeCoを始める場合は、運営管理手数料無料の金融機関を選び、信託報酬が低いインデックスファンド(年0.1%~0.2%程度)を選ぶことが重要です。
また、収入が増えて所得税率が上がったタイミングで掛金を増額すれば、節税効果を高めることができます。
この失敗から学べるのは、転職・退職時にはiDeCoの手続きを忘れずに行うことの重要性です。
特に企業型DCのある会社に転職する場合、速やかに移換手続きまたは併用手続きを行わないと、無駄な手数料を払い続けることになります。
転職が決まったら、新しい会社の人事部にiDeCoと企業型DCの併用が可能か確認し、必要な手続きを早めに進めることが大切です。
手続きが面倒だからと放置すると、長期的に大きな損失につながります。
iDeCoに入らないほうがいい人
iDeCoは万人に向いている制度ではありません。
以下の条件に当てはまる人は、加入を慎重に検討するか、見送った方がよい場合があります。
毎月の収支が赤字、または貯金が生活費の3ヶ月分未満という人は、iDeCoよりもまず家計の立て直しと緊急資金の確保を優先すべきです。
iDeCoは60歳まで引き出せないため、急な出費に対応できません。
まずは家計簿をつけて無駄な支出を削減し、毎月黒字にすることから始めましょう。
そのうえで、生活費の3~6ヶ月分を普通預金で確保してから、iDeCoを検討するのが安全です。節税効果よりも、手元の流動性資金を確保することの方が重要です。
3~5年以内に結婚、住宅購入、子どもの教育費といった大きな出費予定がある人は、その資金をiDeCoに回すべきではありません。
60歳まで引き出せないため、必要な時に使えず困ることになります。
大きな出費予定がある場合は、その資金は普通預金や定期預金で確保し、それとは別の余裕資金がある場合のみiDeCoを検討しましょう。
ライフプランを立てて、いつ・いくら必要になるかを明確にすることが大切です。
20代は自己投資によるリターンが最も高い時期です。
資格取得、スキルアップ、転職活動、起業準備など、自分の市場価値を高めることに資金を使った方が、長期的には大きなリターンが期待できます。
老後資金の準備も大切ですが、20代のうちは収入を増やすことを優先し、30代以降に収入が安定してからiDeCoを始めても遅くありません。
若いうちは柔軟に資金を使える状態を保つことも重要です。
年収が200万円~300万円程度で所得税率が5%の人は、節税効果が小さく、手数料負担が相対的に大きくなります。
例えば月5,000円(年間6万円)を拠出した場合、節税額は年間9,000円程度(所得税率5%+住民税率10%)ですが、口座管理手数料が年間2,052円かかります。
さらに信託報酬を考慮すると、実質的なメリットが小さくなります。
年収が低い場合は、まず収入を増やすことに注力し、年収が上がって所得税率が高くなってからiDeCoを始める方が効率的です。
投資に対する不安が強い人は、まずNISAのつみたて投資枠で少額から投資を経験し、リスクとリターンの感覚をつかんでからiDeCoを検討する方が安全です。
iDeCoは一度始めると途中で引き出せないため、投資に慣れてから始めても遅くありません。
一方で、以下のような人はiDeCoのメリットが大きく、積極的に活用を検討すべきです。
デメリットを理解したうえで、自分の状況に合っていると判断できれば、非常に有利な制度です。
年収600万円以上で所得税率が20%以上の人は、iDeCoの節税効果が非常に大きくなります。
例えば年収700万円の会社員が月23,000円(年間276,000円)を拠出した場合、所得税率20%+住民税率10%で年間約82,800円の節税になります。
口座管理手数料が年間2,052円でも、節税効果が大きく上回るため、実質的なメリットは年間約80,000円です。
20年間続ければ累計で約160万円の節税効果が期待できます。これは手数料や信託報酬を差し引いても、非常に大きなメリットです。
特に所得税率が23%以上(年収800万円以上)の人は、さらに節税効果が大きくなります。高所得者ほどiDeCoのメリットを最大限に活用できるため、積極的に検討すべきです。
ただし、受取時の税金も考慮して、退職金との兼ね合いを確認することが重要です。
自営業やフリーランスの人は、会社員のような退職金や企業年金がないため、老後資金を自分で準備する必要があります。
iDeCoは掛金の上限が月68,000円(年間816,000円)と高く設定されており、大きな節税効果を得ながら老後資金を準備できます。
例えば年収500万円の自営業者が月68,000円を拠出した場合、所得税率20%+住民税率10%+国民健康保険料率(約10%)で年間約326,400円の節税効果が期待できます。
これは非常に大きなメリットです。
自営業者は収入が不安定な場合もありますが、掛金は月5,000円から設定でき、途中で減額・停止も可能です。
収入が安定している月は多めに拠出し、厳しい月は減額するといった柔軟な運用もできます。退職金がない分、iDeCoで計画的に老後資金を準備することが重要です。
このような人は、iDeCoの60歳まで引き出せないという制約がむしろメリットになります。
強制的に老後資金を積み立てられるため、途中で使ってしまう心配がありません。節税効果も享受しながら、確実に老後資金を準備できます。
家計が安定している人は、iDeCoとNISAを併用することで、さらに効率的に資産形成ができます。
iDeCoで老後資金、NISAで中期的な資産形成という使い分けが理想的です。
手数料と節税効果を徹底比較
「iDeCoは手数料が高くて損をする」という意見がありますが、実際に手数料と節税効果を比較すると、多くの場合は節税効果の方が大きくなります。
ここでは具体的な数値で検証します。
iDeCoでかかる手数料は以下の通りです。
加入時に国民年金基金連合会へ2,829円が必要です。
運用中は毎月、国民年金基金連合会へ105円、事務委託先金融機関へ66円の合計171円が最低限かかります。
金融機関によっては運営管理手数料が上乗せされますが、SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要ネット証券では無料です。
受取時には、給付1回につき440円の手数料がかかります。
一時金で受け取る場合は1回、年金で受け取る場合は受取回数分の手数料が発生します。
例えば運営管理手数料無料の金融機関で30年間運用した場合、加入時2,829円+運用中61,560円(171円×12ヶ月×30年)+受取時440円=合計64,829円の手数料がかかります。
年間では約2,161円の負担です。
年収300万円(所得税率5%)の人が月10,000円(年間120,000円)を拠出した場合、節税額は年間18,000円(所得税6,000円+住民税12,000円)です。
手数料2,052円を差し引いても、年間約15,948円のメリットがあります。
年収500万円(所得税率20%)の人が月20,000円(年間240,000円)を拠出した場合、節税額は年間72,000円(所得税48,000円+住民税24,000円)です。
手数料2,052円を差し引くと、年間約69,948円のメリットです。
年収700万円(所得税率20%)の人が月23,000円(年間276,000円)を拠出した場合、節税額は年間82,800円(所得税55,200円+住民税27,600円)です。
手数料2,052円を差し引くと、年間約80,748円のメリットです。
年収1,000万円(所得税率33%)の人が月23,000円(年間276,000円)を拠出した場合、節税額は年間118,680円(所得税91,080円+住民税27,600円)です。
手数料2,052円を差し引くと、年間約116,628円のメリットです。
| 年収 | 月額掛金 | 年間節税額 | 年間手数料 | 実質メリット |
| 300万円 | 10,000円 | 18,000円 | 2,052円 | 15,948円 |
| 500万円 | 20,000円 | 72,000円 | 2,052円 | 69,948円 |
| 700万円 | 23,000円 | 82,800円 | 2,052円 | 80,748円 |
| 1,000万円 | 23,000円 | 118,680円 | 2,052円 | 116,628円 |
このように、年収が高いほど節税効果が大きくなり、手数料を大きく上回るメリットが得られます。
年収300万円でも手数料を差し引いて年間約16,000円のメリットがありますが、掛金が少ない場合や年収がさらに低い場合は、手数料負担率が高くなるため注意が必要です。
受取時の税金で損をしないために
iDeCoは掛金拠出時と運用中は税制優遇がありますが、受取時には課税されます。
受取方法と退職金の有無によって税金が大きく変わるため、事前に理解しておくことが重要です。
一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用されます。
控除額は加入年数20年以下の場合は40万円×加入年数、20年超の場合は800万円+70万円×(加入年数-20年)です。
例えば30年間加入した場合、退職所得控除額は800万円+70万円×10年=1,500万円です。
退職所得は(受取額-退職所得控除額)×1/2が課税対象となります。
例えば30年間で1,000万円を受け取った場合、1,500万円の控除額以内なので課税されません。
一方、2,000万円を受け取った場合、(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円が課税対象です。
年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。
65歳未満は年間60万円、65歳以上は年間110万円の控除があります。
ただし公的年金や企業年金と合算されるため、他の年金収入が多い場合は控除枠を使い切り、iDeCoの受取分に課税される可能性があります。
一時金で受け取る場合のメリットは、退職所得控除が大きく、1/2課税のため税負担が軽いことです。
デメリットは、一度に受け取るため他の退職金と合算されると控除額を超えやすいことです。
年金で受け取る場合のメリットは、受取を分散することで毎年の課税額を抑えられることです。
デメリットは、公的年金等控除の枠を他の年金と共有するため、年金収入が多いと控除枠を使い切り課税される可能性があることです。
また、受取回数が増えるため手数料負担も増えます。
併用(一部を一時金、残りを年金)で受け取る方法もあります。
退職所得控除を最大限活用しつつ、残りを年金で分散受取することで、税負担を最小化できる場合があります。
ただし、受取方法は金融機関によって選択肢が異なるため、事前に確認が必要です。
| 状況 | 注意点 | 対策 |
| 退職金が多い | iDeCoと同年受取で控除額超過 | 受取時期を5年以上ずらす |
| 企業年金がある | 年金受取で控除枠を共有 | 一時金受取を検討 |
| 公的年金が多い | 年金受取で課税される可能性 | 一時金受取を検討 |
| 退職金がない | 控除枠を使い切れない | 一時金受取で控除を活用 |
退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、退職所得控除を共有することになります。
例えば勤続30年で退職金1,500万円を受け取る場合、退職所得控除額1,500万円をすべて使い切ります。
同じ年にiDeCoを受け取ると、控除額がないため全額課税されてしまいます。
対策としては、退職金とiDeCoの受取時期を5年以上ずらすことで、それぞれ別に退職所得控除を適用できます。
60歳で退職金を受け取り、65歳でiDeCoを受け取るといった計画が有効です。
受取タイミングの最適化は、税理士やFPに相談することをおすすめします。
元本割れを避ける運用方法
iDeCoで元本割れを避けたい人は、運用商品の選び方が重要です。
リスクを抑えながら運用する方法を解説します。
元本確保型商品には定期預金と保険があります。
これらは元本が保証されているため、元本割れのリスクはありません。
ただし、低金利環境では運用益がほとんど期待できず、手数料負担を考慮すると実質的にマイナスになる可能性があります。
例えば定期預金の金利が年0.01%の場合、100万円を1年間預けても利息は100円です。
一方、口座管理手数料は年間2,052円かかるため、実質的には年間約1,952円のマイナスです。
元本割れは避けられますが、資産は増えません。
元本確保型商品は、60歳に近づいて受取時期が迫っている人や、どうしても元本割れが怖い人に向いています。
ただし、長期運用の場合は投資信託の方が複利効果で資産を増やせる可能性が高いため、年齢や運用期間に応じて選択することが大切です。
バランス型ファンドは、株式と債券を組み合わせた投資信託です。
株式だけに投資するよりもリスクが抑えられ、債券だけよりもリターンが期待できます。
株式と債券の比率によって、リスクとリターンのバランスを調整できます。
例えば「株式50%・債券50%」のバランス型ファンドは、株式市場が下落しても債券部分が安定するため、値動きが比較的穏やかです。
「株式30%・債券70%」のような保守的なバランス型なら、さらにリスクを抑えられます。
バランス型ファンドは、自分で株式と債券の比率を考える必要がなく、運用会社が自動的にリバランス(資産配分の調整)を行ってくれるため、投資初心者にも扱いやすい商品です。
信託報酬は年0.1%~0.5%程度のものを選ぶとよいでしょう。
年齢が上がるにつれて、徐々にリスクを抑えた運用に切り替えることが重要です。
受取直前に市場が暴落して元本割れするリスクを避けるため、50代後半からは安全性を重視した運用に移行しましょう。
定期的な見直しとして、年1回程度、資産配分を見直して調整することをおすすめします。
iDeCoにおすすめの金融機関3社
iDeCoを始める際は、運営管理手数料が無料で商品ラインナップが充実した金融機関を選ぶことが重要です。
ここでは主要なネット証券3社を紹介します。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座数 | 約15,000,000口座 ※2025年11月25日時点(SBIネオモバイル証券など含む) |
| 取引手数料 | 【スタンダードプラン(1注文ごと)】 取引金額に関係なく0円【アクティブプラン(1日定額制)】 1日100万円以下の取引:0円※現物取引・信用取引・単元未満株(S株)もすべて対象です。 |
| NISA対応 | 〇 |
| つみたて投資枠取扱銘柄数 | 〇(259銘柄)※2025年3月3日時点 |
| 成長投資枠対象商品 | 国内株 / 外国株 / 投資信託(約1,329銘柄 ※2025年3月3日時点) |
| 投資信託 | 約2,550本 ※2025年3月3日時点 |
| 外国株 | 8カ国/米国株式(5,000銘柄) |
| 取引ツール(PC) | HYPER SBI 2 / HYPER SBI / SBI CFDトレーダー |
| スマホアプリ | SBI証券 株アプリ / 米国株アプリ / かんたん積立 / HYPER FX / HYPER 先物 / HYPER CFD |
| 提携銀行口座 | SBI新生銀行 / 住信SBIネット銀行 |
| ポイント投資・付与 | Pontaポイント / dポイント / Vポイント(クレカ積立) |
| 口座開設スピード | 最短 翌営業日 |
SBI証券はiDeCo口座数が最も多く、運営管理手数料が無料です。
投資信託の取扱本数は約90本と業界最多クラスで、低コストのインデックスファンドからアクティブファンドまで幅広い選択肢があります。
元本確保型商品として定期預金と保険も用意されており、リスクを取りたくない人にも対応しています。
Webサイトやアプリが使いやすく、運用状況の確認や商品の変更も簡単に行えます。サポート体制も充実しており、コールセンターで丁寧に対応してもらえます。
特におすすめなのは、eMAXIS Slimシリーズなど信託報酬が年0.1%前後の超低コストファンドが充実している点です。
長期運用では信託報酬の差が大きな影響を与えるため、低コストファンドが豊富なSBI証券は有力な選択肢です。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座数 | 約12,000,000口座 ※2025年1月時点 |
| 取引手数料 | 【ゼロコース】 国内株式(現物・信用):0円 かぶミニ®(単元未満株):0円 投資信託:0円 ※ゼロコース選択時。 ※一部、スプレッドや信託財産留保額が発生する場合があります。 |
| NISA対応 | 〇(新NISA対応) |
| つみたて投資枠取扱銘柄数 | 263銘柄 ※2025年4月24日時点 |
| 成長投資枠対象商品 | 国内株式 / 外国株式 / 投資信託(約1,345銘柄) |
| 投資信託 | 約2,550本 ※2025年4月24日時点 |
| 外国株 | 6カ国/米国株式(約4,500銘柄) |
| 取引ツール(PC) | マーケットスピード / マーケットスピード II / 楽天MT4 |
| スマホアプリ | iSPEED / iSPEED for iPad / iSPEED FX / iSPEED 先物 |
| 提携銀行口座 | 楽天銀行(マネーブリッジ) |
| ポイント投資・付与 | 楽天ポイント(投資信託 / 国内株式 / 米国株式<円貨決済>) |
| 口座開設スピード | 最短 翌営業日 |
楽天証券も運営管理手数料が無料で、投資信託の取扱本数は約30本です。
SBI証券よりも本数は少ないですが、厳選された低コストファンドが揃っており、初心者でも選びやすいラインナップです。
楽天証券の特徴は、楽天経済圏との連携です。
楽天カードや楽天銀行を利用している人は、ポイントを活用した資産形成ができます。
また、Webサイトやアプリが直感的で使いやすく、投資初心者でも迷わず操作できます。
サポート体制も充実しており、iDeCoの仕組みや商品選びについて丁寧に説明してもらえます。
楽天経済圏を活用している人や、シンプルで使いやすい金融機関を求める人におすすめです。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座数 | 約2,700,000口座 ※2025年2月時点 |
| 取引手数料 | 【取引毎手数料コース】
|
| NISA対応 | 〇(日本株・米国株・中国株・投資信託の売買手数料が無料) |
| つみたて投資枠取扱銘柄数 | 〇(銘柄数は公式サイトで確認) |
| 成長投資枠対象商品 | 国内株 / 米国株 / 中国株 / 投資信託(約1,750本以上) |
| 投資信託 | 約1,800本(購入時手数料すべて無料) |
| 外国株 | 2カ国/米国株:約5,000銘柄以上(2025年1月27日時点) |
| 取引ツール(PC) | マネックストレーダー / 銘柄スカウター |
| スマホアプリ | マネックス証券アプリ / 米国株アプリ / 投信アプリ |
| 提携銀行口座 | マネックス証券専用銀行口座(詳細は公式サイトで確認) |
| ポイント投資・付与 | マネックスポイント / dポイント(投資信託の積立に利用可能) |
| 口座開設スピード | オンライン申込で最短翌営業日 |
| 項目 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 |
| 運営管理手数料 | 無料 | 無料 | 無料 |
| 投資信託本数 | 約90本 | 約30本 | 約27本 |
| 元本確保型 | あり | あり | あり |
| 特徴 | 商品数最多 | 楽天経済圏連携 | 低コストファンド充実 |
マネックス証券も運営管理手数料が無料で、投資信託の取扱本数は約27本です。
厳選された低コストファンドが中心で、eMAXIS Slimシリーズなど信託報酬が年0.1%前後のファンドが揃っています。
マネックス証券の特徴は、ロボアドバイザーによる商品提案機能があることです。
簡単な質問に答えるだけで、自分に合った運用商品を提案してもらえるため、初心者でも商品選びに迷いません。
また、投資教育コンテンツが充実しており、iDeCoや投資の基礎知識を学べます。
iDeCoとNISAの使い分け
iDeCoとNISAはどちらも税制優遇のある制度ですが、特徴が異なります。
自分の状況に応じて使い分けることが重要です。
iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税、受取時は退職所得控除または公的年金等控除が適用されます。
一方、60歳まで引き出せない、口座管理手数料がかかる、受取時に課税されるというデメリットがあります。
NISAは投資で得た利益が非課税になる制度で、2024年からの新NISAでは非課税保有限度額が1,800万円に拡大されました。
いつでも引き出せる、口座管理手数料がかからない、受取時も非課税というメリットがあります。
ただし、掛金の所得控除はありません。
iDeCoは節税効果が大きく老後資金の準備に特化した制度、NISAは柔軟性が高く中長期的な資産形成に向いた制度と言えます。
どちらか一方ではなく、両方を併用することで効率的な資産形成が可能です。
| 制度 | 用途 | 運用方針 | 商品例 |
| iDeCo | 老後資金 | 長期・安定重視 | バランス型、債券中心 |
| NISA | 中期的資産形成 | 成長重視 | 株式インデックス |
| 預金 | 緊急資金 | 流動性確保 | 普通預金 |
iDeCoとNISAを併用する場合、iDeCoは老後資金として安定重視の運用、NISAは中期的な資産形成として成長重視の運用という使い分けが効果的です。
iDeCoは60歳まで引き出せないため、バランス型ファンドや債券中心の安定運用が向いています。
NISAはいつでも引き出せるため、株式インデックスファンドなど成長性の高い商品で積極的に運用できます。
また、生活費の6ヶ月分以上は普通預金で確保し、緊急時の流動性を保つことも忘れないようにしましょう。
はい、可能です。掛金の減額や停止はいつでも手続きできます。ただし、停止した場合でも口座管理手数料は毎月かかり続けるため、完全に放置すると手数料で資産が目減りします。収入が減った場合は、最低額の月5,000円に減額する方が、停止するよりも有利な場合があります。
転職先の状況によって対応が異なります。転職先に企業型DCがない場合は、iDeCoをそのまま継続できます。転職先に企業型DCがある場合は、iDeCoの資産を企業型DCに移換するか、併用の手続きが必要です。退職して自営業になった場合は、掛金上限が月68,000円に増えます。いずれの場合も、速やかに手続きを行わないと「運用指図者」となり、新たな掛金を拠出できなくなります。
はい、可能です。ただし、変更には手数料がかかり、手続きに2~3ヶ月かかります。また、変更前の金融機関で保有していた商品は一度売却して現金化し、新しい金融機関で改めて商品を購入する必要があります。そのため、最初から手数料が安く商品ラインナップが充実した金融機関を選ぶことが重要です。
企業型DCの規約で併用が認められている場合は可能です。2022年10月から併用の条件が緩和され、多くの企業で併用できるようになりました。ただし、企業型DCとiDeCoの掛金合計には上限があり、企業型DCのみの場合は月55,000円、企業型DCとiDeCo併用の場合は企業型DCの掛金によってiDeCoの上限が変わります。詳しくは勤務先の人事部に確認してください。
はい、遺族が死亡一時金として受け取れます。死亡一時金は相続財産として扱われ、相続税の課税対象となります。ただし、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)は適用されません。受取人は配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で決まります。遺族への影響も考慮して、iDeCoの加入額を決めることが大切です。
特別法人税は現在凍結されていますが、復活すると年1.173%の税金がかかります。ただし、これまで何度も凍結が延長されており、復活の可能性は低いとされています。仮に復活した場合でも、運用益が年1.173%以上あれば実質的な影響は限定的です。過度に心配する必要はありませんが、制度変更のリスクがあることは理解しておきましょう。
インフレが進むと、貨幣価値が下がり実質的な資産価値が目減りします。元本確保型商品だけで運用している場合、インフレ率が金利を上回ると実質的に損をします。インフレ対策としては、株式や不動産など実物資産に連動する投資信託を組み入れることが有効です。長期的にはインフレ率を上回るリターンを目指すことが重要です。
はい、75歳まで運用を続けられます。60歳で受け取る必要はなく、そのまま運用を継続して受取時期を遅らせることができます。ただし、75歳までには受け取る必要があります。運用を続けている間も口座管理手数料はかかりますが、運用益が期待できる場合は継続する価値があります。
2022年の制度改正により、基本的に20歳以上65歳未満の国民年金被保険者であれば誰でも加入できるようになりました。ただし、国民年金保険料を免除されている人(学生納付特例、納付猶予を受けている人など)は加入できません。また、企業型DCの加入者で規約で併用が認められていない場合も加入できません。
40代から始めても、60歳までに20年程度の運用期間があり、十分にメリットがあります。50代から始める場合、運用期間は短いですが、節税効果は年収が高ければ大きくなります。運用期間が短い場合は、元本確保型やバランス型など安定重視の商品を選ぶことが重要です。受取時の税金も考慮して、退職金との兼ね合いを確認することが大切です。「遅い」と思って何もしないよりも、少額でも始めることで老後資金の準備ができます。
iDeCoは「デメリットしかない」わけではなく、年収や家計状況、ライフプランによってメリットが大きく変わる制度です。
60歳まで引き出せない、元本割れのリスクがある、手数料がかかる、受取時に課税されるといったデメリットがある一方で、掛金の全額所得控除、運用益非課税という大きなメリットもあります。
年収が高く所得税・住民税の負担が大きい人、自営業・フリーランスで退職金がない人、家計が安定していて老後資金を確保したい人にとっては、節税効果が手数料を大きく上回るため非常に有利な制度です。
一方で、家計が赤字または貯金がほとんどない人、近い将来に大きな出費予定がある人、年収が低く節税効果が小さい人は、加入を慎重に検討すべきです。
iDeCoに加入する場合は、運営管理手数料が無料で商品ラインナップが充実したSBI証券、楽天証券、マネックス証券などのネット証券を選ぶことをおすすめします。
また、NISAとの併用で、iDeCoは老後資金、NISAは中期的な資産形成という使い分けをすることで、効率的な資産形成が可能です。
投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。詳しくは各金融機関にご確認いただくか、ファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。
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