成長投資枠とは?新NISAの活用法と始め方を解説

成長投資枠とは?新NISAの活用法と始め方を解説

2024年から始まった新NISAで、「成長投資枠」という言葉を耳にしたことはありませんか?

成長投資枠は、年間240万円まで非課税で投資できる制度で、株式や投資信託など幅広い商品に投資できるのが特徴です。

つみたて投資枠と併用すれば年間360万円まで非課税投資が可能になり、資産形成の選択肢が大きく広がります。

この記事では、成長投資枠の基本的な仕組みから、つみたて投資枠との違い、具体的な活用法、始め方まで分かりやすく解説します。

成長投資枠を正しく理解して、あなたに合った投資スタイルを見つけましょう。

この記事の要約
  • 成長投資枠は年間240万円まで非課税で投資でき、つみたて投資枠と併用可能
  • 株式・投資信託・ETF・REITなど幅広い商品に投資できる
  • 一括投資も積立投資もでき、売却後の枠を再利用できる柔軟性が魅力
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

成長投資枠とは|新NISAの基本をおさえよう

成長投資枠は、2024年から始まった新NISA制度の一部です。投資で得た利益(売却益や配当金)が非課税になる制度で、より積極的な資産形成を目指す方に適しています。

旧制度の一般NISAの後継にあたる制度ですが、非課税期間が無期限になるなど、大幅に使い勝手が向上しました。まずは成長投資枠の基本的な特徴を見ていきましょう。

年間240万円まで非課税で投資できる

成長投資枠では、1年間に240万円まで投資することができます。この枠内で購入した金融商品から得られる利益は、すべて非課税です。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

通常、株式や投資信託で得た利益には約20%の税金がかかりますが、成長投資枠を使えばこの税金が一切かかりません。10万円の利益がそのまま手元に残るため、効率的に資産を増やせます。

例えば10万円の利益が出た場合、通常は約2万円が税金として引かれてしまいます。しかし成長投資枠を使えば、10万円の利益がそのまま手元に残ります。

年間240万円という枠は、月に換算すると約20万円です。毎月コツコツ積み立てることもできますし、余裕資金がある時に一括で投資することもできます。

つみたて投資枠と併用できる

新NISA制度には、成長投資枠とつみたて投資枠の2つがあります。この2つは併用が可能で、同じ年に両方を使うことができます。

つみたて投資枠は年間120万円まで投資でき、長期・積立・分散投資に適した投資信託が対象です。成長投資枠と合わせると、年間360万円まで非課税で投資できることになります。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

例えば、つみたて投資枠で毎月10万円ずつインデックスファンドを積み立てながら、成長投資枠で個別株やETFに投資するといった使い分けができます。

自分の投資スタイルや資金状況に合わせて、柔軟に組み合わせられるのが新NISA制度の大きな魅力です。

非課税期間は無期限

成長投資枠の非課税期間は無期限です。購入した金融商品をいつまで保有していても、売却時の利益や保有中の配当金に税金がかかりません。

旧一般NISA制度では非課税期間が5年間と限られていたため、5年経過後にロールオーバー(非課税期間の延長)の手続きが必要でした。新制度ではこの手間がなくなり、長期投資がしやすくなっています。

無期限で非課税保有できることで、10年、20年といった長期スパンでじっくり資産を育てることができます。長期投資は、時間を味方につけて複利効果を得られる投資手法です。

ただし、非課税で保有できる総額には上限があります。成長投資枠では最大1,200万円まで、新NISA全体では1,800万円までと定められています。

成長投資枠の5つの特徴|つみたて投資枠との違い

成長投資枠には、つみたて投資枠とは異なる特徴があります。両者の違いを理解することで、自分に合った使い方が見えてきます。

ここでは、成長投資枠の主要な5つの特徴を、つみたて投資枠と比較しながら解説します。

幅広い商品に投資できる

成長投資枠の最大の特徴は、投資できる商品の幅広さです。投資信託だけでなく、国内株式、外国株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など、多様な金融商品が対象になります。

つみたて投資枠が金融庁の基準を満たした投資信託に限定されているのに対し、成長投資枠はより自由度の高い投資が可能です。

成長投資枠で投資できる商品

個別の企業の株式を購入したい

海外の成長企業に投資したい

不動産関連の商品で分散投資したい

ただし、すべての商品が対象というわけではありません。毎月分配型の投資信託や、信託期間が20年未満の投資信託など、一部の商品は除外されています。

一括投資も積立投資もできる

成長投資枠では、投資方法を自由に選べます。毎月一定額を積み立てる方法も、まとまった資金を一括で投資する方法も、どちらも可能です。

つみたて投資枠が積立投資に限定されているのに対し、成長投資枠はより柔軟な投資スタイルに対応しています。

例えば、ボーナスが入った時に100万円を一括投資したり、毎月10万円ずつコツコツ積み立てたり、あるいは両方を組み合わせたりすることができます。

市場の状況や自分の資金状況に応じて、投資のタイミングや金額を調整できるのは大きなメリットです。ただし、投資のタイミングを見極めるのは難しいため、初心者の方は積立投資から始めるのがおすすめです。

総投資枠は1,200万円まで

成長投資枠で非課税投資できる総額は、生涯で1,200万円までと定められています。この金額は、購入時の価格(簿価)で計算されます。

新NISA全体の非課税保有限度額は1,800万円なので、成長投資枠だけで上限まで使うこともできますし、つみたて投資枠と組み合わせることもできます。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

例えば、成長投資枠で1,200万円、つみたて投資枠で600万円といった配分や、成長投資枠で600万円、つみたて投資枠で1,200万円といった配分も可能です。

年間240万円ずつ投資した場合、5年間で上限に達する計算になります。長期的な資産形成を考えている方は、計画的に枠を使っていくことが大切です。

売却後の枠を再利用できる

成長投資枠には、売却後の枠を再利用できる仕組みがあります。これは旧NISA制度にはなかった、新制度の大きな改善点です。

例えば、成長投資枠で100万円分の株式を購入し、後日売却した場合、翌年以降にその100万円分の枠が復活します。再び100万円分の投資ができるようになるのです。

この仕組みにより、ポートフォリオのリバランス(資産配分の見直し)がしやすくなりました。市場環境の変化に応じて、保有商品を入れ替えながら、長期的に資産を運用できます。

ただし、枠が復活するのは売却した翌年以降です。同じ年内に売却と再投資を繰り返すことはできないので注意しましょう。

つみたて投資枠との併用で年間360万円

成長投資枠(年間240万円)とつみたて投資枠(年間120万円)を併用すれば、1年間で最大360万円まで非課税投資ができます。

この組み合わせにより、安定的な積立投資と、より積極的な投資を同時に行うことが可能です。投資スタイルの異なる2つの枠を使い分けることで、リスクとリターンのバランスを取りやすくなります。

例えば、つみたて投資枠で毎月10万円ずつ低コストのインデックスファンドを積み立て、成長投資枠で気になる個別株やテーマ型ETFに投資する、といった使い方ができます。

年間360万円という金額は、計画的に資産形成を進めたい方にとって十分な投資枠です。自分の収入や貯蓄額に合わせて、無理のない範囲で活用しましょう。

成長投資枠で買える商品|対象と対象外を確認

成長投資枠では幅広い金融商品に投資できますが、すべての商品が対象というわけではありません。投資を始める前に、何が買えて何が買えないのかを正しく理解しておきましょう。

ここでは、成長投資枠で購入できる主な商品と、対象外となる商品について詳しく解説します。

投資信託(インデックス・アクティブファンド)

成長投資枠では、多くの投資信託が購入対象です。インデックスファンド(市場平均に連動する投資信託)も、アクティブファンド(市場平均を上回る運用を目指す投資信託)も、どちらも選べます。

インデックスファンドは、日経平均株価やS&P500など、特定の指標に連動するように運用されます。運用コストが低く、長期投資に適しているのが特徴です。

アクティブファンドは、ファンドマネージャーが銘柄を選定し、市場平均を上回るリターンを目指します。インデックスファンドより運用コストは高めですが、専門家の判断で運用されるメリットがあります。

つみたて投資枠が金融庁の基準を満たした投資信託に限定されているのに対し、成長投資枠ではより多様な投資信託から選べます。ただし、毎月分配型など一部の商品は対象外です。

国内株式・ETF・REIT

成長投資枠では、国内の上場株式を購入できます。東京証券取引所に上場している企業の株式が対象で、トヨタやソニーなど、気になる企業に直接投資することが可能です。

ETF(上場投資信託)も対象商品です。ETFは証券取引所に上場している投資信託で、株式と同じように売買できます。日経平均やTOPIXに連動するETFなど、さまざまな種類があります。

日本取引所グループ:ETFの基礎知識

REIT(不動産投資信託)も購入できます。REITは、複数の不動産に投資する商品で、オフィスビルや商業施設、マンションなどの賃料収入や売却益が分配されます。

これらの商品は、投資信託よりも自分で銘柄を選ぶ楽しみがあります。ただし、個別の企業や不動産に投資するため、投資信託よりもリスクが高くなる傾向があります。

外国株式(米国株など)

成長投資枠では、外国株式にも投資できます。特に人気が高いのは米国株で、AppleやMicrosoft、Amazonなど、世界的な企業の株式を購入できます。

米国株は、日本株に比べて成長性が高い企業が多く、配当利回りも魅力的です。ただし、為替リスク(円高・円安の影響)があることを理解しておく必要があります。

証券会社によって取扱銘柄数は異なりますが、主要なネット証券では数千銘柄の米国株を取り扱っています。中国株や欧州株を扱っている証券会社もあります。

外国株式への投資は、地域分散によるリスク軽減効果が期待できます。日本経済だけでなく、世界経済の成長を取り込みたい方に適しています。

買えない商品(毎月分配型など)

成長投資枠では、一部の商品が対象外となっています。主な除外商品は以下の通りです。

  • 毎月分配型の投資信託(定期的に分配金が支払われる商品)
  • 信託期間が20年未満の投資信託
  • デリバティブ取引を用いた一定の投資信託(レバレッジ型・インバース型など)
  • 整理銘柄・管理銘柄に指定されている株式

これらの商品が除外されているのは、長期・積立・分散投資という新NISA制度の趣旨に合わないためです。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

毎月分配型の投資信託は、定期的に分配金を受け取れるため人気がありますが、複利効果が得られにくく、長期的な資産形成には向いていません。

証券会社のサイトでは、成長投資枠の対象商品かどうかが表示されています。購入前に必ず確認しましょう。

旧一般NISAから何が変わった?|5つの改正ポイント

2024年から始まった新NISA制度では、旧一般NISA制度から大きく改善されました。すでに旧制度を利用していた方も、これから始める方も、何が変わったのかを理解しておくことが大切です。

ここでは、成長投資枠に関連する主な改正ポイントを5つ紹介します。

年間投資枠が120万円→240万円に拡大

旧一般NISA制度では、年間の投資枠が120万円でした。新制度の成長投資枠では、この枠が240万円に倍増しています。

年間240万円という枠は、月に換算すると約20万円です。より多くの資金を非課税で運用できるようになり、資産形成のスピードが上がります。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

例えば、旧制度では年間120万円しか投資できなかったため、余裕資金があっても非課税枠を使い切れないケースがありました。新制度では、より多くの資金を非課税で投資できるため、効率的な資産形成が可能です。

ただし、年間240万円という枠は、必ずしも使い切る必要はありません。自分の収入や貯蓄額に合わせて、無理のない範囲で投資することが大切です。

非課税期間が5年→無期限に

旧一般NISA制度では、非課税で保有できる期間が5年間に限られていました。5年経過後は、ロールオーバー(非課税期間の延長)の手続きをするか、課税口座に移すか、売却するかを選ぶ必要がありました。

新制度の成長投資枠では、非課税期間が無期限になりました。購入した金融商品をいつまで保有していても、売却時の利益や保有中の配当金に税金がかかりません。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

この変更により、長期投資がしやすくなりました。5年という期限を気にせず、10年、20年といった長期スパンで資産を育てることができます。長期投資は、時間を味方につけて複利効果を得られる投資手法です。

売却後の枠を再利用できるように

旧一般NISA制度では、一度使った非課税枠は、売却しても復活しませんでした。例えば、120万円分の株式を購入して売却しても、その年の非課税枠が再び使えるようになることはありませんでした。

新制度の成長投資枠では、売却した翌年以降に枠が復活する仕組みが導入されました。これにより、ポートフォリオのリバランス(資産配分の見直し)がしやすくなっています。

例えば、成長投資枠で100万円分の株式を購入し、数年後に売却した場合、翌年以降にその100万円分の枠が復活します。再び100万円分の投資ができるようになるのです。

この仕組みにより、市場環境の変化に応じて、保有商品を入れ替えながら、長期的に資産を運用できます。ただし、枠が復活するのは売却した翌年以降なので、同じ年内に何度も売買を繰り返すことはできません。

つみたて投資枠と併用可能に

旧NISA制度では、一般NISAとつみたてNISAは選択制で、どちらか一方しか利用できませんでした。両方を同時に使うことはできなかったのです。

新制度では、成長投資枠とつみたて投資枠を併用できるようになりました。同じ年に両方の枠を使って、合計360万円まで非課税投資ができます。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

この変更により、投資の選択肢が大きく広がりました。つみたて投資枠で安定的な積立投資を行いながら、成長投資枠でより積極的な投資をする、といった使い分けができます。

例えば、つみたて投資枠で毎月10万円ずつインデックスファンドを積み立て、成長投資枠で気になる個別株やテーマ型ETFに投資する、といった組み合わせが可能です。

対象商品の基準が変更

旧一般NISA制度では、上場株式や投資信託など、幅広い商品が対象でした。新制度の成長投資枠では、一部の商品が除外されています。

主な変更点は、毎月分配型の投資信託や、信託期間が20年未満の投資信託が対象外になったことです。これは、長期・積立・分散投資という新NISA制度の趣旨に合わせた変更です。

また、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託(レバレッジ型・インバース型など)も対象外となりました。これらの商品は、短期的な値動きを狙う商品で、長期投資には向いていません。

一方で、上場株式やETF、REITなど、多様な商品は引き続き対象です。長期的な資産形成に適した商品に絞られたことで、初心者でも安心して投資できる環境が整いました。

成長投資枠の活用法3パターン|あなたに合った使い方

成長投資枠の活用方法は、投資経験や資金状況、リスク許容度によって異なります。自分に合った使い方を見つけることが、成功への第一歩です。

ここでは、初心者・中級者・上級者向けの3つの活用パターンを紹介します。自分の状況に近いパターンを参考にしてください。

初心者向け|つみたて投資枠と併用して分散投資

投資を始めたばかりの方や、リスクを抑えたい方には、つみたて投資枠と成長投資枠を併用する方法がおすすめです。

まず、つみたて投資枠で毎月一定額(例:月3万円)をインデックスファンドに積み立てます。インデックスファンドは、市場全体に分散投資できるため、個別の企業リスクを抑えられます。

次に、成長投資枠で、つみたて投資枠では買えない商品に投資します。例えば、国内外の高配当株ETFや、REITなどが候補になります。月1~2万円程度から始めるとよいでしょう。

この方法のメリットは、つみたて投資枠で安定的な資産形成を行いながら、成長投資枠で少し積極的な投資にも挑戦できる点です。投資信託と個別商品の両方を経験することで、投資の知識が深まります。

また、積立投資は、市場の上下に関わらず定期的に購入するため、購入価格が平均化されます(ドルコスト平均法)。初心者が陥りがちな「高値掴み」のリスクを軽減できます。

注意点は、成長投資枠で個別株を買う場合、企業の業績や財務状況をある程度調べる必要があることです。最初は少額から始めて、徐々に慣れていきましょう。

中級者向け|個別株とETFで積極運用

ある程度投資経験があり、より高いリターンを目指したい方には、成長投資枠を活用した積極的な運用がおすすめです。

成長投資枠では、個別株とETFを組み合わせて投資します。例えば、成長性の高い企業の個別株を数銘柄選び、残りをテーマ型ETF(AI関連、半導体関連など)に投資する方法があります。

個別株は、企業の成長を直接取り込めるため、大きなリターンが期待できます。ただし、企業固有のリスクもあるため、複数銘柄に分散することが重要です。

ETFは、特定のテーマや業種に分散投資できるため、個別株よりもリスクを抑えられます。個別株とETFを組み合わせることで、リスクとリターンのバランスを取りやすくなります。

また、つみたて投資枠も併用することで、安定的な資産形成と積極的な運用の両立が可能です。つみたて投資枠で月10万円、成長投資枠で月10~20万円といった配分が考えられます。

注意点は、個別株投資には企業分析のスキルが必要なことです。決算書の読み方や、業界動向の把握など、ある程度の知識が求められます。自信がない場合は、ETFの比率を高めるとよいでしょう。

上級者向け|枠の再利用でリバランス

投資経験が豊富で、ポートフォリオ管理に慣れている方には、枠の再利用を活用したリバランス戦略がおすすめです。

リバランスとは、資産配分を定期的に見直し、当初の目標比率に戻す作業です。例えば、株式60%・債券40%という配分を決めていた場合、株価上昇で株式70%になったら、株式を売却して債券を買い増します。

成長投資枠では、売却した翌年以降に枠が復活するため、リバランスがしやすくなっています。市場環境の変化に応じて、保有商品を入れ替えながら、長期的に資産を運用できます。

具体的には、年に1~2回、ポートフォリオ全体を見直します。大きく値上がりした銘柄は一部売却し、割安になった銘柄や新たな投資先に資金を振り向けます。

この方法のメリットは、利益確定とリスク管理を同時に行える点です。また、非課税枠を最大限活用しながら、柔軟な資産運用ができます。

注意点は、売却のタイミングや銘柄選定には高度な判断が必要なことです。また、頻繁に売買すると手数料がかさむ可能性もあります。計画的に、年1~2回程度の見直しにとどめるとよいでしょう。

成長投資枠の始め方|5ステップで口座開設

成長投資枠を使って投資を始めるには、まずNISA口座を開設する必要があります。ここでは、初心者の方でも迷わず始められるよう、5つのステップに分けて手順を解説します。

証券会社の選び方から、実際の投資開始まで、順を追って見ていきましょう。

証券会社を選ぶ

最初のステップは、証券会社を選ぶことです。NISA口座は1人1口座しか開設できないため、慎重に選びましょう。

証券会社を選ぶ際のポイントは、以下の通りです。

1.取扱商品の豊富さ:投資信託の本数、国内株式・外国株式の銘柄数を確認
2.手数料の安さ:売買手数料、為替手数料などを比較
3.使いやすさ:取引ツールやアプリの操作性、情報提供の充実度
4.ポイント還元:投資信託の保有や取引でポイントが貯まるか

主要なネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券など)は、いずれも取扱商品が豊富で、手数料も比較的安いです。自分の投資スタイルに合った証券会社を選びましょう。

NISA口座を開設する

証券会社を決めたら、NISA口座を開設します。多くの証券会社では、オンラインで手続きが完結します。

口座開設に必要なものは、以下の通りです。

  • マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
  • メールアドレス
  • 銀行口座情報

手続きの流れは、証券会社のウェブサイトから申し込みフォームに必要事項を入力し、本人確認書類をアップロードします。審査が完了すると、口座開設完了のお知らせが届きます。

口座開設には通常、数日から1週間程度かかります。マイナンバーカードを使えば、最短翌営業日に開設できる証券会社もあります。

NISA口座は、証券総合口座と同時に開設する必要があります。すでに証券総合口座を持っている場合は、NISA口座のみを追加で開設できます。

投資する商品を決める

NISA口座が開設できたら、次は投資する商品を決めます。成長投資枠では幅広い商品から選べますが、初心者の方は以下のような商品から始めるとよいでしょう。

  • インデックスファンド:日経平均やS&P500に連動する投資信託
  • 高配当株ETF:定期的に配当金が得られるETF
  • REIT:不動産に分散投資できる商品

商品を選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。

  • 運用コスト(信託報酬):低いほど長期的なリターンが向上
  • 過去の運用実績:ただし、過去の実績は将来を保証しない
  • 投資対象:どの地域・業種に投資しているか

最初は1~2つの商品から始めて、慣れてきたら徐々に分散していくのがおすすめです。

投資金額と方法を設定する

投資する商品が決まったら、投資金額と方法を設定します。成長投資枠では、一括投資も積立投資も選べます。

積立投資を選ぶ場合は、毎月の積立額と購入日を設定します。例えば、「毎月1日に5万円」といった設定が可能です。一度設定すれば、自動的に購入されるため、手間がかかりません。

一括投資を選ぶ場合は、購入したいタイミングで注文を出します。まとまった資金がある場合や、市場が下落した時に買い増したい場合に適しています。

初心者の方には、積立投資がおすすめです。市場の上下に関わらず定期的に購入するため、購入価格が平均化され、リスクを抑えられます。

投資金額は、無理のない範囲で設定しましょう。生活費や緊急資金を確保した上で、余裕資金で投資することが大切です。

定期的に運用状況を確認する

投資を始めたら、定期的に運用状況を確認しましょう。ただし、毎日チェックする必要はありません。月に1回、または四半期に1回程度で十分です。

確認するポイントは、以下の通りです。

  • 資産の評価額:投資額に対して、どのくらい増減しているか
  • 資産配分:当初の計画通りの配分になっているか
  • 投資枠の残高:年間投資枠や総投資枠をどのくらい使っているか

市場は短期的には上下しますが、長期的には成長する傾向があります。一時的な下落に動揺せず、長期的な視点で資産形成を続けることが大切です。

また、年に1~2回は、ポートフォリオ全体を見直すとよいでしょう。大きく値上がりした銘柄は一部売却し、新たな投資先に資金を振り向けることで、リスクとリターンのバランスを保てます。

成長投資枠で気をつけたい3つのこと

成長投資枠は魅力的な制度ですが、注意すべきポイントもあります。投資を始める前に、リスクや制限事項を正しく理解しておきましょう。

ここでは、成長投資枠を利用する際に特に気をつけたい3つのポイントを解説します。

元本割れのリスクがある

成長投資枠で購入できる商品は、株式や投資信託など、価格が変動する金融商品です。市場の状況によっては、投資した金額を下回る可能性があります。

特に、個別株や特定のテーマに集中したETFは、値動きが大きくなる傾向があります。短期的には大きく下落することもあるため、心理的な耐性が必要です。

元本割れのリスクを抑えるには、以下の対策が有効です。

  • 分散投資:複数の商品や地域に分散することで、リスクを軽減
  • 長期投資:短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で保有
  • 余裕資金で投資:生活費や緊急資金は別に確保し、余裕資金で投資

投資は、預金のように元本が保証されているわけではありません。リスクを理解した上で、自分のリスク許容度に合った商品を選びましょう。

対象外商品を誤って買わないように

成長投資枠では、一部の商品が対象外となっています。毎月分配型の投資信託や、信託期間が20年未満の投資信託、レバレッジ型・インバース型の投資信託などは購入できません。

これらの商品を誤って購入しようとすると、エラーメッセージが表示されます。ただし、証券会社によっては、NISA口座と課税口座の両方で取引できるため、どちらの口座で購入しているか確認が必要です。

対象外商品を購入してしまうと、非課税のメリットが受けられません。購入前に、必ず「NISA成長投資枠対象」の表示があるか確認しましょう。

証券会社のウェブサイトやアプリでは、成長投資枠の対象商品を絞り込んで検索できる機能があります。この機能を活用すれば、対象外商品を誤って選ぶリスクを減らせます。

年間投資枠は翌年に繰り越せない

成長投資枠の年間投資枠は240万円ですが、使い切れなかった分は翌年に繰り越せません。例えば、今年100万円しか投資しなかった場合、翌年の投資枠が340万円になるわけではありません。

翌年の投資枠は、再び240万円にリセットされます。そのため、年間投資枠を最大限活用したい場合は、計画的に投資する必要があります。

ただし、無理に年間投資枠を使い切る必要はありません。自分の収入や貯蓄額に合わせて、無理のない範囲で投資することが大切です。

また、生涯投資枠(1,800万円)は長期的に使える枠なので、焦らず計画的に活用しましょう。年間240万円ずつ投資した場合、約7.5年で生涯投資枠の上限に達する計算になります。

よくある質問|成長投資枠のQ&A

よくある質問
つみたて投資枠と成長投資枠、どちらを優先すべき?

投資初心者の方や、リスクを抑えたい方は、まずつみたて投資枠から始めることをおすすめします。つみたて投資枠は、金融庁の基準を満たした投資信託に限定されており、長期・積立・分散投資に適した商品が揃っています。

つみたて投資枠で投資の基本を学びながら、余裕があれば成長投資枠で個別株やETFに挑戦するとよいでしょう。両方を併用することで、安定的な資産形成と積極的な運用を両立できます。

成長投資枠だけの利用でもいい?

はい、成長投資枠だけを利用することも可能です。つみたて投資枠を使わず、成長投資枠のみで年間240万円まで投資できます。

個別株投資に興味がある方や、すでに投資信託を課税口座で保有している方は、成長投資枠だけを利用するのも一つの選択肢です。ただし、初心者の方は、つみたて投資枠も併用することで、リスクを分散できます。

年間240万円も投資できない場合は?

年間240万円という枠は上限であり、必ずしも使い切る必要はありません。月1万円、月3万円といった少額から始めても問題ありません。

大切なのは、自分の収入や貯蓄額に合わせて、無理のない範囲で投資を続けることです。少額でも長期的に積み立てることで、複利効果により資産を増やすことができます。

旧一般NISA口座の資産はどうなる?

旧一般NISA口座で保有している資産は、新NISA制度に移行しても、そのまま非課税で保有できます。旧制度の非課税期間(5年間)が終了するまで、非課税のメリットを受けられます。

非課税期間が終了した後は、課税口座に移管されるか、売却するかを選ぶことになります。新NISA口座への移管(ロールオーバー)はできません。

確定申告は必要?

NISA口座で得た利益は非課税なので、確定申告は不要です。売却益や配当金に税金がかからないため、手続きの手間もありません。

ただし、NISA口座以外(課税口座)で取引している場合は、確定申告が必要になることがあります。特定口座(源泉徴収あり)を利用していれば、証券会社が自動的に税金を計算・納付してくれるため、確定申告は不要です。

まとめ

成長投資枠は、年間240万円まで非課税で投資できる制度で、株式や投資信託、ETF、REITなど幅広い商品に投資できます。つみたて投資枠と併用すれば、年間360万円まで非課税投資が可能です。

旧一般NISA制度から大きく改善され、非課税期間が無期限になり、売却後の枠を再利用できるようになりました。長期的な資産形成に適した制度と言えます。

投資初心者の方は、つみたて投資枠と併用して分散投資から始めるのがおすすめです。中級者以上の方は、個別株やETFで積極的な運用を目指したり、枠の再利用を活用したリバランスを行ったりすることができます。

成長投資枠を始めるには、証券会社を選び、NISA口座を開設し、投資する商品を決めて、投資金額と方法を設定します。定期的に運用状況を確認しながら、長期的な視点で資産形成を続けましょう。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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